青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 午前9時。

 晴海さんのマンションの前に来た。ここから引っ越すのかと、豪華なエントランスを眺めた。まるでお城のような感じがした。ここの20階に晴海さんの部屋がある。1階はロビーになっていて、受付がある。ロビーにはソファーが並び、談笑している人達がいた。観葉植物が綺麗に整えられていて、清潔感がある。人が多いわりには静かだから、ここから引っ越さなくても良いだろうと思えた。しかし、黒崎家から遠く離れており、行き来するには不便だということだった。近所に来てくれるのは嬉しい。

 今日のお手伝いメンバーは、俺と黒崎と一貴さんとユーリーだ。お義父さんと二葉は留守番だ。アンとアンドリューはお義父さんの家に居る。俺は一貴さんと並んで歩き、エレベーターのボタンを押した。黒崎とユーリーは新居で待っている。俺も本当は新居で待つつもりだったが、晴海さんがここのマンションを見ておいてくれというから、こっちに来た。荷物が出された後、晴海さんの車に乗って、新居に移動する。

「カズ兄さん。20階で下りないといけないよ。止まったからといって、下りたらいけないよ」
「分かっている。どうして僕はこんなにそそっかしいんだろう」
「いつものことだよ。あれ?ここのマンションって、直通なんだね。20階までノンストップだよ」

 俺は感激して声を上げた。エレベーターと言えば、各階停車だ。高い階層になると、目的地の到着までが長い。ところが、ここのマンションはそうではないようだ。そこで気がついた。20階から上の階しかエレベーターのボタンがないことに。階層で分かれているのだと分かった。

「もう少しで他のエレベーターに乗るところだったよ。初めて来るから勝手が分からなかったよ」
「晴海君は奥のエレベーターが速いと言っていた。僕はきちんと覚えていた。だから、君をこのエレベーターに乗せた」
「はいはい。良いことをしたね。褒めてあげるよ。ヨークは居ないの?」
「彼らは別の場所で待機していると言っていた。どこなのかは教えてくれなかった。ああ、今、連絡が入った。君のナレーションの仕事で使うスタジオを探検しているそうだ」
「へえーー。言ってなかったのに知っているんだね」
「そこしか無いだろうと言っている。心霊番組が撮られるスタジオと同じ場所だろうって」
「そうなんだよ~。そこ、オバケが出るって有名なスタジオなんだ。ヨーク達が行ったら、機械類が止まったりして……」
「あり得るそうだ。そうだな。彼らの姿を見た人は幽霊だと思うかも知れない。……なるほど。掃き掃除をしてくるそうだ。想念が浮かんでいる場所だ。悲しみも多い。そこで、想念が浮かんでは消えて、床に静められているから、掃除機で吸い取るそうだ。そこで、クリアになって、君が収録に行くときには綺麗になっている。我ら家族がお世話になる場所だから、何か良いことをしたかったそうだ」
「ふむふむ……」

 なんとも難しい話だ。人の思いを掃除機で取れるだなんて知らなかった。しかも、今、ウーリがホウキでも掃くのだと言ったそうだ。スタジオは広い。それをヨーク達で回れるのだろうか。その疑問に対して、一貴さんがヨークに聞いてくれた。

「安心してくれ。最新型の掃除機を使うから、一気に吸い上げられるそうだ。しかしながら、手仕事も加えたいから、隅っこをホウキで掃くそうだ」
「ふむふむ……」
「今日は良い天気だから、埃が立っているそうだ。室内でもそうなんだそうだ。カラッと乾いているからだ。ブオーーーンと音を立てるそうだが、彼らにしか聞こえない音だそうだ」
「へえーー。見てみたいよ。晴海お兄ちゃんの部屋も想念を掃除してくれるとのに。贅沢なことかな」
「いや、もうやって済んでいるそうだ。今日、もしかしたら、来るかも知れないと言っている。君に宇宙船を見せてくれるそうだ」
「すごいなあ。でも、アニメーションの宇宙船なんだろ?それもすごく小さいやつ……」

 この間、目の錯覚のようなことが起きた。ヨークが俺に宇宙船を見せてくれるというから空を見上げたら、アニメーションの宇宙船が浮かんでいた。とても小さな物だった。どこかで見たことのある船だった。きっと、有名なやつなのだろう。このように、からかわれて遊ばれている。

「ヨーク達は君のことが好きなんだ」
「はいはい。どうせ遊ばれているよ~。はいはい。もう20階に着いているよ。行こうよ」
「そうだった。晴海君が待っているところだ」

 すでに俺達は20階に到着して済んでいた。部屋はどこかとキョロキョロすると、引っ越し準備といった感じのシートが貼られた空間があり、部屋のドアが開いていた。晴海さんの部屋だ。そう思って近くまで行くと、その彼が玄関に出てくれていた。奥には神仙教授がいて、お久しぶりですと挨拶した。
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