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このように、親がかりの就職はやめさせたいと思っている。しかし、本人に入社の意志があり、優秀な人材ならば取る。しかし、そこに親の意向が絡んでいないとは言えない。100%否定できない。面接試験の点数を甘くして、入社させたケースには勘づいている。
そこで、風林のことを思い起こした。彼にはツテがなかったのだろうか。話してみないと何も分からない。彼なら良い仕事をしてくれるだろう。ここで出会ったのは縁があるということだ。採用面接の流れを変えようと思っている俺は、どうしても彼の話が聞きたかった。
そして、南波の方こそ、親のツテは何もない。しかし、入社した。とにかく菓子が好きで、菓子ばかり食べては親に叱られていたという微笑ましいエピソードの作文の内容、面接での話題、大学の授業を真面目に聞いていたようで、とても成績が優秀であることから採用された。声が美しいという特徴もあった。感じが良くて、笑顔が良くて、数人の男で取り合いになるのはおかしくない。そんな南波だからこそ、選ばれた。父親は洗剤のメーカーで働いている。母親は看護師としてクリニックで勤務している。祖父母は農業だ。黒崎製菓グループとは接点がない。たとえ病気をしたとしても、ツテがないから、こうして祖父が連絡してくることはない。何かを取り計らって貰いたくてもできない。
しかし、そのツテを頼ることは否定しない。夏樹のことでは随分と強引に開発部に入れたからだ。須賀部長という俺のツテを頼って、面倒を見てくれとまで言っておいた。だから、批難も出来ない。
父は北添のことでは何を言われたのだろうか。南波とのことで、副社長の対応が悪かったとなじられたのだろうか。精神的な病だなんて、完治するまで長く掛かる。繰り返すこともある。一生終わりだという家族もいるだろう。決してそうではない。必ず治る。そう信じて休息させて、周囲の理解が必要だ。
「親父。北添は自分で連絡してくるのか?おじいさんからの休職届を待てば良いのか?」
「月曜日の朝、出勤と同じ時間に出社して、本人が届けを出すそうだ。副社長室で話を聞いてやってくれと頼まれている。出来るか?」
「出来る。午前中は会議がない。良かった。午後まで待たすところだった」
「優しい子だな。午後まで待たせておけばいい。その間、課長が仕事の話を聞くだろう」
「親父こそ、優しくないんだな。あんたらしくない。おばあちゃんが気鬱だったんだろう。寝たり起きたりだった。だから、病気のことには理解があるんだろう」
「もう忘れた。病気の原因は仕事へのプレッシャーだ。南波君のことを取り合った山下君が出した商品のアイデアで先を越されたことに意気消沈して、自分はダメだと思い込んだらしい」
「あの商品か……。夏に発売予定だ。そうか、商品PRのことでも山下がチームに入っている。幹部候補だと噂されている」
そういうことかと納得した。北添との争いの直前に、山下はある商品のアイデアを出していた。それは社内のコンテストに応募したものだった。それが今年2月に商品化に選ばれて、開発部で試作品が作られている。順調にいけば、夏に期間限定の菓子として発売する。夏のアイスクリームの商品だ。
そのことがあって以来、山下の評判が良くなった。本人も周囲と打ち解けて、人が集まっている。顔色も良く、勤務態度も真面目だ。営業企画部に戻しても良いと思っている。今はデザート事業部にいる。そこでも悪くないが、幹部候補になるなら、営業企画部がいいだろう。それとも、レストラン事業部が良いだろうか。彼は今、昇進の機会を迎えている。
その一方で北添は病になった。明暗が分かれたといえる。山下が原因ではないだろうか。あの争いの後、陰険なことが社内で起こっていなかったか。いや、山下を原因にするのは良くない。とにかく、北添には話を聞かなければならない。
「親父。明日でも良いと伝えてくれ。電話が出来る」
「そうか。本当に優しい子になったな。南波君に知らせてやってくれ。北添君の唯一仲の良い社員は彼だそうだ」
「分かった。伝えておく」
父との電話を終えた。南波はまだユーリーと電話中だ。賑やかな話らしい。彼が笑っている。病院へ行った後から二人はよく連絡を取り合うようになった。一時期は友達の距離を保つということで、連絡すら控えていたというのに。
「段ボールの荷物の運び入れを始めます!」
「お願いします」
引っ越しスタッフから声を掛けられて、頷いた。社内に新しい風を吹かせた方が良さそうだと感じた。黒崎製菓では転職者が少なく、閉鎖的にも見える。それを変えていきたい。そこで風林のことを見つめていると、さっと目をそらされた気がした。それに笑い声を立て、ユーリーの元に向かった。
そこで、風林のことを思い起こした。彼にはツテがなかったのだろうか。話してみないと何も分からない。彼なら良い仕事をしてくれるだろう。ここで出会ったのは縁があるということだ。採用面接の流れを変えようと思っている俺は、どうしても彼の話が聞きたかった。
そして、南波の方こそ、親のツテは何もない。しかし、入社した。とにかく菓子が好きで、菓子ばかり食べては親に叱られていたという微笑ましいエピソードの作文の内容、面接での話題、大学の授業を真面目に聞いていたようで、とても成績が優秀であることから採用された。声が美しいという特徴もあった。感じが良くて、笑顔が良くて、数人の男で取り合いになるのはおかしくない。そんな南波だからこそ、選ばれた。父親は洗剤のメーカーで働いている。母親は看護師としてクリニックで勤務している。祖父母は農業だ。黒崎製菓グループとは接点がない。たとえ病気をしたとしても、ツテがないから、こうして祖父が連絡してくることはない。何かを取り計らって貰いたくてもできない。
しかし、そのツテを頼ることは否定しない。夏樹のことでは随分と強引に開発部に入れたからだ。須賀部長という俺のツテを頼って、面倒を見てくれとまで言っておいた。だから、批難も出来ない。
父は北添のことでは何を言われたのだろうか。南波とのことで、副社長の対応が悪かったとなじられたのだろうか。精神的な病だなんて、完治するまで長く掛かる。繰り返すこともある。一生終わりだという家族もいるだろう。決してそうではない。必ず治る。そう信じて休息させて、周囲の理解が必要だ。
「親父。北添は自分で連絡してくるのか?おじいさんからの休職届を待てば良いのか?」
「月曜日の朝、出勤と同じ時間に出社して、本人が届けを出すそうだ。副社長室で話を聞いてやってくれと頼まれている。出来るか?」
「出来る。午前中は会議がない。良かった。午後まで待たすところだった」
「優しい子だな。午後まで待たせておけばいい。その間、課長が仕事の話を聞くだろう」
「親父こそ、優しくないんだな。あんたらしくない。おばあちゃんが気鬱だったんだろう。寝たり起きたりだった。だから、病気のことには理解があるんだろう」
「もう忘れた。病気の原因は仕事へのプレッシャーだ。南波君のことを取り合った山下君が出した商品のアイデアで先を越されたことに意気消沈して、自分はダメだと思い込んだらしい」
「あの商品か……。夏に発売予定だ。そうか、商品PRのことでも山下がチームに入っている。幹部候補だと噂されている」
そういうことかと納得した。北添との争いの直前に、山下はある商品のアイデアを出していた。それは社内のコンテストに応募したものだった。それが今年2月に商品化に選ばれて、開発部で試作品が作られている。順調にいけば、夏に期間限定の菓子として発売する。夏のアイスクリームの商品だ。
そのことがあって以来、山下の評判が良くなった。本人も周囲と打ち解けて、人が集まっている。顔色も良く、勤務態度も真面目だ。営業企画部に戻しても良いと思っている。今はデザート事業部にいる。そこでも悪くないが、幹部候補になるなら、営業企画部がいいだろう。それとも、レストラン事業部が良いだろうか。彼は今、昇進の機会を迎えている。
その一方で北添は病になった。明暗が分かれたといえる。山下が原因ではないだろうか。あの争いの後、陰険なことが社内で起こっていなかったか。いや、山下を原因にするのは良くない。とにかく、北添には話を聞かなければならない。
「親父。明日でも良いと伝えてくれ。電話が出来る」
「そうか。本当に優しい子になったな。南波君に知らせてやってくれ。北添君の唯一仲の良い社員は彼だそうだ」
「分かった。伝えておく」
父との電話を終えた。南波はまだユーリーと電話中だ。賑やかな話らしい。彼が笑っている。病院へ行った後から二人はよく連絡を取り合うようになった。一時期は友達の距離を保つということで、連絡すら控えていたというのに。
「段ボールの荷物の運び入れを始めます!」
「お願いします」
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