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講堂の中に入ると、まるでコンサートホールのような会場だと思った。大人や学生達が入場口の列に並び、ざわざわと話している。俺達も並ぼうとすると、上楽先生から腕を引かれた。教員席だから、列に並ばなくても良いそうだ。
「そっか。色々とお世話になります」
「いいんだよ。学長からの招待なんだから、気楽にしてよ。ユリウス君、どこに行くのかな?」
「ほんとだ。ユーリー。どこに行くんだよ~」
俺達のそばからユーリーが離れた。彼が行きたいのは記念講演のパネルの前のようだ。その前で写真を撮っている人がいて、彼も撮りたいようだ。言ってくれれば撮ってあげるのに。そう思ってそばに行くと、ユーリーが自撮りを済ませていた。俺に気を遣ったらしい。
「気を遣うって?」
「さっきから、バンドの名前が聞こえている。ナツキがいると聞こえても来た」
「ん?」
「ナツキーーーーー!」
たしかに言うとおり、俺の名前を呼ぶ人達がいた。大人達だ。それに対して、ペコッと頭を下げると、キャーーッと悲鳴が起きた。これはありがたいことだ。サインをして写真を撮りたいが、事務所から禁止されている。そこで、軽く手を振った。
「こんにちは!」
「こんにちはーー!キャーーー!」
「ありがとうございます!」
「こちらこそーーーー」
悲鳴を上げたのは女性達だった。彼女達にバイバイと手を振り、自分たちの席に向かおうと、パネルの前から立ち去ろうとした。すると、そのパネルの写真がとても個性的で、二度見してしまった。
パネルにあるのは手島先生の写真だ。スーツを着て微笑んでいる。しかし、手に持っているのはカメラであり、隣のパネルにはこちらにカメラに向けている写真があった。占い師・ツナトとしても活躍中とある。
「どうしてカメラなのかな?それと、占い師さんだったんだねえ」
「手島先生はそうなんだよ。カメラが好きだから、こうしてパンフレットに顔を出すときも、カメラを持っているんだ。先生のこだわりと言える」
「なるほど。今日の講演タイトルも個性的だもんね。“君は競争するのか。気楽にかまえよう。経済評論家が説く人生の仕組み”。“コンビニのツナマヨおにぎりの価格上昇から見える経済界の動き”。ツナトさんだから、ツナマヨなのかな?」
「きっとそうだと思うよ。僕は前に一度講演を見たことがあるんだけど、とても聞きやすくて面白かったよ。寝ている人がいなかったぐらいに笑い声も聞こえてきたんだ。あれ?ユリウス君がいない……」
「ほんとだ。またいない。あ、ここにいた!」
ユーリーの姿が無かった。そこで、キョロキョロと見回して探すと、男性二人連れの写真を撮ってあげていた。手島先生のパネルと写真を撮るとお金が貯まるというジンクスがあるらしく、パネルの前に人が並んでいる。
「夏樹君。手島先生はテレビにも出ているんだよ。理事長がファンなんだ。そこで、経済学部の創立88周年記念講演に呼んだんだ。ここの大学の講師でも来てくれているんだよ」
「縁が深い先生なんだね。上楽先生は話したことはあるの?」
「あるよ。いい人なんだ。僕が前にいた講師の先生から身体を触られて逃げていたとき、助けてくれたんだ」
「えーー、セクハラかよ。この先生はもういないなら良かったね」
「うん。柱に隠れたところに連れて行かれたときに手島先生が追いかけてきてくれて、さっと手を振り払ってくれたんだ。恩人だよ。その後で、相手は大学にいられなくなったんだ。手島先生のおかげもあったし、理事長のおかげもあるよ」
「頼もしいね。先生って可愛いから、狙われるんだね。ん?」
「ユリウス君……」
上楽先生が微笑んだ。ユーリーがパネルの前で人気者になっているからだ。次から次へと写真を撮る人のカメラ担当になっている。ありがとうございます。そういうお礼を言われながら写真を撮ってあげている姿は人懐っこくて、とても高圧的な部分がある性格をしているようには見えない。
この間、ノアがうちに遊びに来ていた。そこで、ユーリーが成績をチェックしていた。そして、少々怒っていた。思ったよりも伸びていないからだ。それを勉強の時間が足りなさすぎだとノアを叱り、ノアから考え方を緩めてよと頼まれていた。ユーリーは気楽な性格をしているところがあるが、全てそうとは言えず、細かいところを知っているノアは学校のことを話したがらない。
「ユーリー。そろそろ時間だよ」
「そうだな。これで最後だ」
「今日の人、良かったなあ」
上楽先生がまた微笑んだ。ちょうどカメラの列が途切れたところで終わりにして、教員席に向かうことにした。そして、学生達から上楽先生の名前が呼びかけられて、とても人気のある先生なのだと分かった。
「そっか。色々とお世話になります」
「いいんだよ。学長からの招待なんだから、気楽にしてよ。ユリウス君、どこに行くのかな?」
「ほんとだ。ユーリー。どこに行くんだよ~」
俺達のそばからユーリーが離れた。彼が行きたいのは記念講演のパネルの前のようだ。その前で写真を撮っている人がいて、彼も撮りたいようだ。言ってくれれば撮ってあげるのに。そう思ってそばに行くと、ユーリーが自撮りを済ませていた。俺に気を遣ったらしい。
「気を遣うって?」
「さっきから、バンドの名前が聞こえている。ナツキがいると聞こえても来た」
「ん?」
「ナツキーーーーー!」
たしかに言うとおり、俺の名前を呼ぶ人達がいた。大人達だ。それに対して、ペコッと頭を下げると、キャーーッと悲鳴が起きた。これはありがたいことだ。サインをして写真を撮りたいが、事務所から禁止されている。そこで、軽く手を振った。
「こんにちは!」
「こんにちはーー!キャーーー!」
「ありがとうございます!」
「こちらこそーーーー」
悲鳴を上げたのは女性達だった。彼女達にバイバイと手を振り、自分たちの席に向かおうと、パネルの前から立ち去ろうとした。すると、そのパネルの写真がとても個性的で、二度見してしまった。
パネルにあるのは手島先生の写真だ。スーツを着て微笑んでいる。しかし、手に持っているのはカメラであり、隣のパネルにはこちらにカメラに向けている写真があった。占い師・ツナトとしても活躍中とある。
「どうしてカメラなのかな?それと、占い師さんだったんだねえ」
「手島先生はそうなんだよ。カメラが好きだから、こうしてパンフレットに顔を出すときも、カメラを持っているんだ。先生のこだわりと言える」
「なるほど。今日の講演タイトルも個性的だもんね。“君は競争するのか。気楽にかまえよう。経済評論家が説く人生の仕組み”。“コンビニのツナマヨおにぎりの価格上昇から見える経済界の動き”。ツナトさんだから、ツナマヨなのかな?」
「きっとそうだと思うよ。僕は前に一度講演を見たことがあるんだけど、とても聞きやすくて面白かったよ。寝ている人がいなかったぐらいに笑い声も聞こえてきたんだ。あれ?ユリウス君がいない……」
「ほんとだ。またいない。あ、ここにいた!」
ユーリーの姿が無かった。そこで、キョロキョロと見回して探すと、男性二人連れの写真を撮ってあげていた。手島先生のパネルと写真を撮るとお金が貯まるというジンクスがあるらしく、パネルの前に人が並んでいる。
「夏樹君。手島先生はテレビにも出ているんだよ。理事長がファンなんだ。そこで、経済学部の創立88周年記念講演に呼んだんだ。ここの大学の講師でも来てくれているんだよ」
「縁が深い先生なんだね。上楽先生は話したことはあるの?」
「あるよ。いい人なんだ。僕が前にいた講師の先生から身体を触られて逃げていたとき、助けてくれたんだ」
「えーー、セクハラかよ。この先生はもういないなら良かったね」
「うん。柱に隠れたところに連れて行かれたときに手島先生が追いかけてきてくれて、さっと手を振り払ってくれたんだ。恩人だよ。その後で、相手は大学にいられなくなったんだ。手島先生のおかげもあったし、理事長のおかげもあるよ」
「頼もしいね。先生って可愛いから、狙われるんだね。ん?」
「ユリウス君……」
上楽先生が微笑んだ。ユーリーがパネルの前で人気者になっているからだ。次から次へと写真を撮る人のカメラ担当になっている。ありがとうございます。そういうお礼を言われながら写真を撮ってあげている姿は人懐っこくて、とても高圧的な部分がある性格をしているようには見えない。
この間、ノアがうちに遊びに来ていた。そこで、ユーリーが成績をチェックしていた。そして、少々怒っていた。思ったよりも伸びていないからだ。それを勉強の時間が足りなさすぎだとノアを叱り、ノアから考え方を緩めてよと頼まれていた。ユーリーは気楽な性格をしているところがあるが、全てそうとは言えず、細かいところを知っているノアは学校のことを話したがらない。
「ユーリー。そろそろ時間だよ」
「そうだな。これで最後だ」
「今日の人、良かったなあ」
上楽先生がまた微笑んだ。ちょうどカメラの列が途切れたところで終わりにして、教員席に向かうことにした。そして、学生達から上楽先生の名前が呼びかけられて、とても人気のある先生なのだと分かった。
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