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上楽先生がユーリーのことを見た。笑っているから頰が上気していて、なんだか色気がある。ユーリーの方はというと、お気に入りの学生に向けて手を振り続けている。とても嬉しそうだ。そんな彼を見て、先生達が笑った。学生が喜んでいるぞと言いながら。
「ユリウス君。そろそろやめておいてね。本気になるから」
「そうですよ。バーテルスさん」
「今村先生。僕が手を振っても何も言わないのに。僕のことが怖いんですか?」
「いえ、そんなことは……」
今村先生が首を横に振った。それを見て、学生達がはやし立てる様子があった。上楽先生がこの大学の名物のようになっているのは、何となく分かった。お坊ちゃまという感じはとてもある。優しくて、誰とでもすぐに打ち解けて、笑顔がある。しかし、先生が人気者なのは、いい人だからだと思った。それを口にしたら、黒崎はどう言うだろうか。すぐに人を信用しすぎだと叱ってくるだろうか。
しかし、俺は上楽先生のことが好きになった。なんだか儚い感じもあり、放っておけない。俺よりも年上だし先生なのに、貧血で倒れたところを見ているから、心配になる。それは今村先生も同じなのか、なんだか心配そうな目で先生のことを見ている。
「上楽先生。身体は大丈夫なの?」
「僕は大丈夫だよ。あの日は朝から調子が悪かったんだ。前の日にあまり食べていなくて、失敗したと思ったよ」
「そっか。薬は飲んでいるの?」
「ううん。僕は食事療法のみだよ。20歳で貧血になってね。子供の頃は丈夫だったんだけどね。母に似たのかも知れないなあ」
「お母さんは元気なの?」
「とても元気だよ。この間、還暦を迎えたんだ。そこで、勤務していた銀行も定年退職になって、嘱託で働いているよ。父も元気だ」
「先生は一人暮らしだから、寂しがっていないかな?」
「妹が一緒に居るから平気だと思う。オタクなんだよ。うちの妹……。学生時代は勉強もしないで、推し活ばかりだったよ。妹は33歳なんだ。市役所で働いているんだ。……東京の……市だ。そこまで電車で通っているんだ。彼女も貧血があって、電車内で倒れそうになって、危ないときがあったんだ」
「そうなんだね。大変だったね」
「うん。僕はお坊ちゃまだけど、うちって普通って感じがするだろう。祖父の影響があってね。みんな定職について、真面目にやっているんだ。祖父は放蕩息子って感じの人で、まだ元気なんだけど、上楽家の財産を使いまくって、海外で豪遊していたんだ」
「それも大変だねえ。お父さんって何の仕事をしているの?あ……」
いけないと思って、口を閉じた。踏み込みすぎの質問だったからだ。相手から言わない限り、聞いてはいけない質問だ。黒崎からそう習ってある。しかし、先生はユーリーが親しい人になっていて、俺にとっても同じだ。だから、つい、油断してしまった。しかし、先生は笑っていた。俺が口を閉じたことに対してだ。
「黒崎家の子だなあ。必要以上に踏み込まないっていうルールだろう。僕の父のことで聞いても良いんだよ。ここの大学の経営陣の一人だよ。普段は理学部のあるキャンパスで、教務課の窓口のおじさんをやっている。教授じゃないからかっこ悪いかな?」
「そんなことはないよ!」
俺が慌てて首を横に振った。だから踏み込んだ質問はいけないことになっていると痛感した。大きな一族の場合は、息子が教授だったり、研究者だったりと、肩書きがある場合が多い。しかし、先生のお父さんの場合はそうではなくて、へえ、あ、そうという反応をされがちな話なのかもしれない。しかし、俺はそうは思わない。先生を見ていると、良いお父さんだと思う。ここは重要だ。
「先生。いじめないでよ。経営陣だなんて、すごいだろ。それに、経営陣なのに、窓口のおじさんをやっているなんて、腰の低い人だと思うから、それもすごいことだと思うよ。経営陣なんて、そんなことやらないだろ」
「そうなんだよね。僕の父はそういう感じなんだ。君の家と似ている部分がある。君の家も家業を継いできた家だろう。決して他の家の人に経営を任せない」
「うん。そういう感じはあるよ」
なんと答えて良いのか分からなくて、曖昧な返事を返した。黒崎家の場合は実子にこだわらずにいるが、跡取りになった人が偶然にも実子が続いているだけで、実は養子が経営を横から支えている代が多かったようだ。そして、愛人だらけなんて言うと恥ずかしいから、もっと何も言えなくなった。
「ユリウス君。そろそろやめておいてね。本気になるから」
「そうですよ。バーテルスさん」
「今村先生。僕が手を振っても何も言わないのに。僕のことが怖いんですか?」
「いえ、そんなことは……」
今村先生が首を横に振った。それを見て、学生達がはやし立てる様子があった。上楽先生がこの大学の名物のようになっているのは、何となく分かった。お坊ちゃまという感じはとてもある。優しくて、誰とでもすぐに打ち解けて、笑顔がある。しかし、先生が人気者なのは、いい人だからだと思った。それを口にしたら、黒崎はどう言うだろうか。すぐに人を信用しすぎだと叱ってくるだろうか。
しかし、俺は上楽先生のことが好きになった。なんだか儚い感じもあり、放っておけない。俺よりも年上だし先生なのに、貧血で倒れたところを見ているから、心配になる。それは今村先生も同じなのか、なんだか心配そうな目で先生のことを見ている。
「上楽先生。身体は大丈夫なの?」
「僕は大丈夫だよ。あの日は朝から調子が悪かったんだ。前の日にあまり食べていなくて、失敗したと思ったよ」
「そっか。薬は飲んでいるの?」
「ううん。僕は食事療法のみだよ。20歳で貧血になってね。子供の頃は丈夫だったんだけどね。母に似たのかも知れないなあ」
「お母さんは元気なの?」
「とても元気だよ。この間、還暦を迎えたんだ。そこで、勤務していた銀行も定年退職になって、嘱託で働いているよ。父も元気だ」
「先生は一人暮らしだから、寂しがっていないかな?」
「妹が一緒に居るから平気だと思う。オタクなんだよ。うちの妹……。学生時代は勉強もしないで、推し活ばかりだったよ。妹は33歳なんだ。市役所で働いているんだ。……東京の……市だ。そこまで電車で通っているんだ。彼女も貧血があって、電車内で倒れそうになって、危ないときがあったんだ」
「そうなんだね。大変だったね」
「うん。僕はお坊ちゃまだけど、うちって普通って感じがするだろう。祖父の影響があってね。みんな定職について、真面目にやっているんだ。祖父は放蕩息子って感じの人で、まだ元気なんだけど、上楽家の財産を使いまくって、海外で豪遊していたんだ」
「それも大変だねえ。お父さんって何の仕事をしているの?あ……」
いけないと思って、口を閉じた。踏み込みすぎの質問だったからだ。相手から言わない限り、聞いてはいけない質問だ。黒崎からそう習ってある。しかし、先生はユーリーが親しい人になっていて、俺にとっても同じだ。だから、つい、油断してしまった。しかし、先生は笑っていた。俺が口を閉じたことに対してだ。
「黒崎家の子だなあ。必要以上に踏み込まないっていうルールだろう。僕の父のことで聞いても良いんだよ。ここの大学の経営陣の一人だよ。普段は理学部のあるキャンパスで、教務課の窓口のおじさんをやっている。教授じゃないからかっこ悪いかな?」
「そんなことはないよ!」
俺が慌てて首を横に振った。だから踏み込んだ質問はいけないことになっていると痛感した。大きな一族の場合は、息子が教授だったり、研究者だったりと、肩書きがある場合が多い。しかし、先生のお父さんの場合はそうではなくて、へえ、あ、そうという反応をされがちな話なのかもしれない。しかし、俺はそうは思わない。先生を見ていると、良いお父さんだと思う。ここは重要だ。
「先生。いじめないでよ。経営陣だなんて、すごいだろ。それに、経営陣なのに、窓口のおじさんをやっているなんて、腰の低い人だと思うから、それもすごいことだと思うよ。経営陣なんて、そんなことやらないだろ」
「そうなんだよね。僕の父はそういう感じなんだ。君の家と似ている部分がある。君の家も家業を継いできた家だろう。決して他の家の人に経営を任せない」
「うん。そういう感じはあるよ」
なんと答えて良いのか分からなくて、曖昧な返事を返した。黒崎家の場合は実子にこだわらずにいるが、跡取りになった人が偶然にも実子が続いているだけで、実は養子が経営を横から支えている代が多かったようだ。そして、愛人だらけなんて言うと恥ずかしいから、もっと何も言えなくなった。
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