青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 先生達が俺を見てニコニコと笑っている。うちの家のことは知られているようだ。お義父さんがここに訪ねてくると決めた時に、もうみんな知っていたのだろう。お義父さんだって、それを知っている。それに気づかないのは俺だけだ。

 これでは黒崎家の一員としての社交が完成しないと思った。もっとスマートに、黒崎のように微笑みながら相手の質問に対して簡単に答えを返して、みんな笑顔になっていたい。それなのに、上楽先生からはニマニマといった感じの笑いを向けられている。助けになっているのは今村先生だ。ニコッと微笑みかけられた。

「今村先生~。上楽先生が俺のことをいじめるよ~」
「はい。分かりました。上楽先生、やめておいて下さいね。実は先生は人が悪いんです」
「そうなんだよ。僕って人が悪いんだ。黒崎家のトップがうちに訪ねてくると聞いて、ビックリしたよ。あ、そうだ。トップはお兄さんに変わったんだったね。晴海さんだね。朝陽君の入試があると聞いた時もビックリしたよ。黒崎家の縁続きの子だっていうから、落としたら何を言われるか分からなくて、ビビったんだ。でも、優秀な成績で合格してくれて良かった。うちに来ないで欲しいなんて思っていないんだよ。選んでくれたときは嬉しかったよ。これでうちの医学部にも幸運が訪れたなんて、学長が言っていたんだ。それで、彼の初めての授業を担当するように仰せつかって、僕は一族の代表になった。粗相があったらやっぱり何を言われるか分からないから、1週間前から体調には特に注意して、貧血を起こさないようにしたんだよ。それと、三橋君が彼の案内役に選ばれて、僕達は打ち合わせをした。朝陽君がうちの大学に馴染めるようにって。それもこれも黒崎家のせいだ」
「うっうっ。すみません。俺もそんな家だと思わなくて、養子に来たんだ。うちのお義父さんって、極端で偉そうな一面があるんだ。普段は優しいんだけど、家のことになると厳しくて偉そうで、そんな人の息子が俺のパートナーなんだ。うっうっ」
「いいんだよ。黒崎家の人と付き合ってみたかったんだ。シャルロットキッチンにも行ったことがある。朝陽君が入試を受けると聞いた後だったけどね。それまでの間にも行ってみたかっただけど、タイミングが合わなかったんだ。それで、僕が学長から仰せつかって、僕が食べに行った。食べたのは、夏樹君が考案したミニ・カレーチキン南蛮だった。そこで、朝陽君の合格を願って、とんかつを選ばなかったことに気がついて、とんかつを単品で頼んで食べて、お腹がいっぱいになって動けなくなった。良い思い出だよ」
「うっうっ。重ね重ね、すみません~。ところで、学長から仰せつかってとは、どうしてなの?ぶっちゃけて聞くけど、力関係では、お坊ちゃまの方が強いんじゃないかな?」

 俺は聞きたいことを聞くことにした。先生の方こそぶっちゃけたことを話してくれたからだ。ここは人間同士の付き合いということで、正直になろうとした。そこで、ユーリーの方を見ると、俺達の話を聞いているようでそうでは無い感じだった。近くにいる学生達と話し始めて、上楽先生の話題が出ている。そして、そんな上楽先生から俺の質問の答えが聞けることになった。そして、聞いてみて、腰の低さに涙が出そうになった。

「うっうっ。経営を維持してくれている人の命令だから言うことを聞いたなんて、泣けるよ~」
「そうだろう。一族だけでは成り立たない。みんなのおかげで存続していられる。こちらの今村先生が次の学長候補だと聞いているだろう。だから僕は好きというわけじゃないんだ。とてもいい人だからなんだよ。大学を盛り立ててくれて、生徒にセクハラ行為をせずに、研究者としても尊敬できて、教員や生徒からの人気も高い。親しくなりたいけど、この通り、先生からはバリケードを張られている」
「そんなことはありませんよ」

 上楽先生からの指摘に、今村先生が顔を赤くした。好意があるのは目に見えて分かる。上楽先生こそ気がついているだろう。それでこんな風にイジるから、今村先生の顔がもっと赤くなった。そこで、とても真面目で正直な人だと思った。
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