青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 さて、俺達の間には沈黙が流れている。今村先生の顔が赤すぎるからだ。これで先生の気持ちに気がついていないなら、上楽先生は人が悪いと思う。大好きです。そう言っているようなものだ。そこで、俺は何か出来ることがないかと思った。今村先生の赤い顔を元に戻すことだ。しかし、何も思いつかない。

「今村先生。えーーっと。上楽先生が言うとおり、食事に行かれたらどうですか?」
「いやーーー、それが……」
「どうしたんですか?」
「二人きりというのが緊張します」
「なるほど。今みたいな感じだったらいいですか?」
「はい。4人いれば……」
「そうですかーー……」

 それはよっぽどの緊張感だと思った。生徒達の前に立って授業をしているから人前に立つことには慣れているだろう先生なのに、上楽先生の前ではカチコチになるなんて、今、告白しているような物だ。そして、それが分かっているはずの上楽先生の方はというと、さっき俺にしたみたいに、指先で先生の肩を突いている。

「先生。やめなよ~。からかうのはさ~」
「こうでもしないと、今村先生が僕に構ってくれないんだ」
「やめろってば~」
「ツンツン、ツンツン……」

 上楽先生が突くから、今村先生が顔をまた赤くした。そして、俺はユーリーに助けを求めた。彼なら何か良いアイデアがあるかも知れない。そこで、かいつまんで事情を話すと、近くにいる生徒と話すのに夢中になっていて、ちっとも俺の話を聞いている感じが無い。

「ユーリー!助けてよ!」
「待っていろ。今、この子から、この大学のオバケスポットを聞いたところだ。後で行こう」
「え?オバケスポット?」
「あるんだよ、それが……」

 上楽先生が真顔になった。ということは、噂だけでは無く、本当に目撃した人がいるということだ。そんな場所になんて行きたくない。俺が震えていると、気を取り直したような顔になった今村先生から、ご案内ができますと言われてしまった。もう顔色は元に戻っている。

「今村先生。ぶるぶる。もう顔が赤くないね」
「心霊スポットのことですからね。随分前から噂のある教室なんです。一階にありましてね。外から中を覗くと、ひんやりした空気が流れているということで、そういう話が出ました。今は使っていない教室ですから、人の気配がしないのが原因でしょう。いや、僕は信じているわけでは無くて、そんな、オバケなんていませんから……」
「今村先生……」

 今、先生はそう言った。それなのに、今度は顔が青白くなっている。とうことは、本当に何かがあるのだろう。俺は行きたくないから、ユーリーだけが案内されると良いと思った。

「今村先生。ユーリーだけを案内して下さい。俺はここで待っています」
「夏樹。そういうわけにはいかない。君を一人に出来ない。上楽先生も一緒に来てもらいたい」

 ユーリーが首を横に振った。上楽先生の方はというと、行ってもいいよと言って、ニコッと笑った。それなら俺はここで1人になる。だから、俺も行かないといけなくなる。

「上楽先生。ここで待っていようよ」
「ははは。僕も久しぶりに行ってみたい」
「なんだよ~」

 上楽先生が俺の肩を持ってくれなかった。そこで拗ねたようにしてみると、デザートに白玉あんみつをおごってくれると言ってくれた。そこで、俺は気を取り直した。周りの学生達もあんみつを食べている。こんなに多く出ているのなら、味に期待できそうだ。

「みんな食べているんだね!」
「ははは。1個100円のあんみつだ。でも、けっこう量が入っているんだよ。昔は80円で売っていたんだけど、物価高騰の影響を受けて、今の値段なんだ」
「そうだよねえ。何もかも値上がりしてさ~。落ち着くと良いよね。でもさ、ここの学食って安いよね。ランチなんて大盛りなのに、これでこの価格って……」
「うちの大学って、こまめにアイデアを出して、生徒数を維持しているんだ。学食の盛りの良さも人気の理由になる。卒業した生徒も食べに来ることがあるんだよ」
「懐かしいもんね。そうだよねえ。俺、行っていないなあ」

 俺は自分が卒業した大学に思いを馳せた。先生達は元気だろうかと。学食の味の薄さに感激していた俺だったが、だんだんと濃い味も平気になり、薄味が好きというわけでは無くなっている。仕事のときにお弁当が出るから、それを食べているうちに、濃い味に慣れてきたからだ。
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