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19-27(黒崎視点)
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15時。
副社長室にて業務中だ。そばには須賀部長がいる。俺が広げた人事ファイルを見て、記憶を辿ってもらっているところだ。広げているのは風林伸也の入社エントリーシートだ。O大学理工学部卒とある。俺の後輩に当たる人物だと分かった。しかし、学科は異なることから、各部ごとの卒業生と在校生の交流会では会っていない。
「須賀さん。覚えているか?」
「ああ、覚えている。入社エントリーシートを見て通した」
「そうだろうな。写真の感じは良いし、字も美しい。エントリーシートの記載内容にも問題ない」
「感じの良い学生だと思った。でも、僕は二次面接から後は関わっていない」
「そうだったな。今年から今井を外してやろうか」
「それはいけない。彼は重要人物だ」
「そうだな。どこのお坊ちゃまだったか……」
俺は頭を抱えたい気分になった。人事部の今井課長は財界とのコネのある親の息子だ。黒崎製菓では重要人物とされている。年は46歳だ。部長まで上がってくる年齢であること、役員まで務めていてもおかしくない経歴であるが、なにしろ本人がそれを望んでおらず、お坊ちゃまであるから、競争意識がない。しかし、能力は高く、課長に昇進してある。しかし、それには親の沽券というものがあり、無理に人事を動かして今のポストに就かせている感はある。親は部長職を望んでいるが、本人は今のままが良いと言っている。
そんな今井課長だが、人を見る目には一目を置いている。少なくても、風林のことがあるまではだ。彼が読み解くエントリーシートからは学生達の性格傾向が分かり、選考の参考にさせてもらっている。また、4次面接という最終結果が出る最後の試験まで担当する中で、実に良い選択をして来た。そういうわけで、入社選考に関わっている。しかし、最近はコネやツテを気にしての選考が多いように思っていた。
「須賀さん。あんたが南波のことを通したんだろう。書類選考で落としそうになったが、あんたが声を上げて通したと聞いている。深川社長からだ」
「そうだった。苦手なことは人前に出ること、苦手な人に会ったときの対応は目をそらして逃げることと書いてあった。これでは落ちる。しかし、正直で良いと思ったし、人前に出たい社員が多いよりも、たまには奥ゆかしいタイプがいても良いと思った。でも、実際には人前に出ている」
「そうだな。リーダー格だ。しかも、動画配信もしているうちで働いている間に変わったのなら光栄だが、元から元気の良いタイプだったんだろう。それにしても正直に書きすぎだ。面接担当からはツッコミの嵐だっただろう。それに耐えて、よく頑張ってくれた」
南波のことでは須賀さんの力が働いた。では、風林はどうだったのか。そこで、俺はパソコンに人事ファイルを表示させた。俺でもすぐにアクセスできないように、深川社長の許可が必要な仕組みになっている。その深川社長には許可を貰い、今、ファイルが開けた。そして、当時の選考内容が記載されたファイルが出てきた。今井課長の字で書かれたものだ。
「あった。風林伸也だ。なんだって?反抗的であるだと?」
「そうなのか。圧迫面接をしたんじゃないのか?」
「あり得る話だ。この年に採用面接した学生の名簿を出してくれ。4次面接の分だ」
「ああ。これだ」
これはペーパーになる。須賀さんが手元のファイルから取り出して、俺に渡してくれた。俺はそれを数回めくって確認し、どこかで聞いたことのある名字や大学名を見て、確信を得た。
「どれもこれも、お坊ちゃまとお嬢様じゃないか。風林にはツテがなかったんだろう」
「投げ出すな」
名簿を投げ出すように机に置いた俺に、須賀さんが苦笑いをした。そして、その中から採用になったのはごく一部であり、全てがコネ採用ではないと言った。
「圭一君。うちは少ない方だ。R&W社のライバル会社の広告会社だと、お坊ちゃまとお嬢様の腰掛け採用があるぐらいだ。数年働いた後に、親の会社を継ぐんだ。うちのグループは長く働いてくれる人を募集している。他のところのお坊ちゃまは楽な部署に配属されて、一日2時間勤務だという話も聞いている。ところが、うちは分け隔て無い。だから、御曹司がこない企業になっている」
「今井課長を呼ぶ」
俺は内線電話を手に取り、今井課長のデスクに電話を掛けた。すると、本人が在席中であり、すぐに来ると返事があった。そこで、風林伸也のことを覚えているかと聞くと、覚えていると言った。そして、その理由に驚き、言葉を飲んだ。セクハラ行為を受けたからだった。
副社長室にて業務中だ。そばには須賀部長がいる。俺が広げた人事ファイルを見て、記憶を辿ってもらっているところだ。広げているのは風林伸也の入社エントリーシートだ。O大学理工学部卒とある。俺の後輩に当たる人物だと分かった。しかし、学科は異なることから、各部ごとの卒業生と在校生の交流会では会っていない。
「須賀さん。覚えているか?」
「ああ、覚えている。入社エントリーシートを見て通した」
「そうだろうな。写真の感じは良いし、字も美しい。エントリーシートの記載内容にも問題ない」
「感じの良い学生だと思った。でも、僕は二次面接から後は関わっていない」
「そうだったな。今年から今井を外してやろうか」
「それはいけない。彼は重要人物だ」
「そうだな。どこのお坊ちゃまだったか……」
俺は頭を抱えたい気分になった。人事部の今井課長は財界とのコネのある親の息子だ。黒崎製菓では重要人物とされている。年は46歳だ。部長まで上がってくる年齢であること、役員まで務めていてもおかしくない経歴であるが、なにしろ本人がそれを望んでおらず、お坊ちゃまであるから、競争意識がない。しかし、能力は高く、課長に昇進してある。しかし、それには親の沽券というものがあり、無理に人事を動かして今のポストに就かせている感はある。親は部長職を望んでいるが、本人は今のままが良いと言っている。
そんな今井課長だが、人を見る目には一目を置いている。少なくても、風林のことがあるまではだ。彼が読み解くエントリーシートからは学生達の性格傾向が分かり、選考の参考にさせてもらっている。また、4次面接という最終結果が出る最後の試験まで担当する中で、実に良い選択をして来た。そういうわけで、入社選考に関わっている。しかし、最近はコネやツテを気にしての選考が多いように思っていた。
「須賀さん。あんたが南波のことを通したんだろう。書類選考で落としそうになったが、あんたが声を上げて通したと聞いている。深川社長からだ」
「そうだった。苦手なことは人前に出ること、苦手な人に会ったときの対応は目をそらして逃げることと書いてあった。これでは落ちる。しかし、正直で良いと思ったし、人前に出たい社員が多いよりも、たまには奥ゆかしいタイプがいても良いと思った。でも、実際には人前に出ている」
「そうだな。リーダー格だ。しかも、動画配信もしているうちで働いている間に変わったのなら光栄だが、元から元気の良いタイプだったんだろう。それにしても正直に書きすぎだ。面接担当からはツッコミの嵐だっただろう。それに耐えて、よく頑張ってくれた」
南波のことでは須賀さんの力が働いた。では、風林はどうだったのか。そこで、俺はパソコンに人事ファイルを表示させた。俺でもすぐにアクセスできないように、深川社長の許可が必要な仕組みになっている。その深川社長には許可を貰い、今、ファイルが開けた。そして、当時の選考内容が記載されたファイルが出てきた。今井課長の字で書かれたものだ。
「あった。風林伸也だ。なんだって?反抗的であるだと?」
「そうなのか。圧迫面接をしたんじゃないのか?」
「あり得る話だ。この年に採用面接した学生の名簿を出してくれ。4次面接の分だ」
「ああ。これだ」
これはペーパーになる。須賀さんが手元のファイルから取り出して、俺に渡してくれた。俺はそれを数回めくって確認し、どこかで聞いたことのある名字や大学名を見て、確信を得た。
「どれもこれも、お坊ちゃまとお嬢様じゃないか。風林にはツテがなかったんだろう」
「投げ出すな」
名簿を投げ出すように机に置いた俺に、須賀さんが苦笑いをした。そして、その中から採用になったのはごく一部であり、全てがコネ採用ではないと言った。
「圭一君。うちは少ない方だ。R&W社のライバル会社の広告会社だと、お坊ちゃまとお嬢様の腰掛け採用があるぐらいだ。数年働いた後に、親の会社を継ぐんだ。うちのグループは長く働いてくれる人を募集している。他のところのお坊ちゃまは楽な部署に配属されて、一日2時間勤務だという話も聞いている。ところが、うちは分け隔て無い。だから、御曹司がこない企業になっている」
「今井課長を呼ぶ」
俺は内線電話を手に取り、今井課長のデスクに電話を掛けた。すると、本人が在席中であり、すぐに来ると返事があった。そこで、風林伸也のことを覚えているかと聞くと、覚えていると言った。そして、その理由に驚き、言葉を飲んだ。セクハラ行為を受けたからだった。
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