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午前10時半。
スタジオに到着した。すでに長谷部さんと聡太郎が来ていて、今日のスタッフと話をしていた。監督は板東さんといい、俺達のバンドのステージ監督を務めてくれる人でもある。音声担当は藤下音響から来ている人になる。テレビ局の仕事も多く受け付けしており、少人数の会社だというが、業務は多岐にわたっている。今日はナレーションの収録だから、いつもの人ではない人が来てくれていた。なんと、栗下さんだった。栗下さんは縁起のいい人で、彼がいる場所では音声がクリアに撮れて、雑音が入らないと言われている。心霊番組のナレーションにはもってこいの人だろう。
「夏樹君!こっちよ!」
今、長谷部さんが俺達に手を振った。隣には聡太郎がいる。遠目からも分かるぐらいのオーラを出しているから、すぐに分かった。優しい人なのに迫力があるのは黒崎と似ている。真っ黒な髪の毛に白い肌をしている。そして、赤身のある唇で口角を上げて、ニコッと笑った。この笑みを悪魔の笑みと言っている伊吹だ。その伊吹は今日は来ていないようだ。てっきり、くっついてくるかと思ったのに。
「長谷部さん!聡太郎君!おはようございます!」
「良い声ね。今朝は調子が良さそうね」
「うん。聡太郎君、今日はよろしくね」
「こちらこそ。副社長。おはようござます」
「おはよう。夏樹が世話になる」
黒崎が聡太郎の前に立った。そして、一緒に居て話をしていたスタッフに声を掛けて、お菓子を渡した。さっき買ってきたクッキーだ。長谷部さんからもすでに渡しており、打ち合わせをするための部屋にはお菓子の箱が開けられて、いつでもどうぞという感じで、お茶も置かれていた。今日はお昼ご飯がテレビ局から出ることになっている。壁の方のテーブルの上にはお弁当が積み上げられていた。
「今日のお弁当ってどこのかな?」
「水仙よ。あなたが好きなお店」
「わあーー。嬉しいなあ。遠竹さんに教えて貰った後、俺達、常連になっていたんだ。でも、しばらく食べていなくてさ。一ヶ月ぶりだよ」
「あんまり日が開いていないじゃない。しばらくでもないわよ」
「そうなんだけどね。美味しいから恋しかったんだ。最近はお義父さんの家で食べることが増えて、お弁当の機会が減ってさ~。黒崎さん。あんたも好きだよね。ここのお弁当。今日はチキン南蛮だってさ」
お弁当の上に置かれた紙には、今日のメニューが載っていた。和風キチン南蛮と書いてある。俺も黒崎も好きな物だ。長谷部さんも同じだそうで、暑くなったからさっぱりしていいわねと言った。しかし、聡太郎だけは無言だ。
「聡太郎君。どうしたの?苦手だった?」
「ううん。そんなことはないよ。チキン南蛮は大好きだ。あのね。感慨にふけっていたんだ。副社長がそばにいるのに、ここが黒崎製菓じゃなくて、俺はギタリストになっていて、今日はナレーションの収録だなんて、会社員をしていたときは思わなかったんだ」
「そっか。ちょうど一年前に、こっちに戻ってくるって決めたんじゃ無かったっけ?退職したのが去年の8月だったよね」
「そうだよ。その後は手首の療養とリハビリと、ギターの練習に明け暮れていた。山岸先生のサポートで随分と弾けるようになった」
「聖河さんは腕の良いお医者さんだもん。ステージに来るときは外来をしないから、患者さんが困っているんだそうだよ。聖河さんのマッサージを受けたいし、診察も受けたいのにって……」
そう考えると、俺はそういう先生を独り占めしている。ローザーさんへの束縛がなかったら完璧なぐらいの人なのに、あのことがあったことで椅子から転び落ちそうだった。ローザーさんが聖河さんの元を逃げ出して友達の距離を保っている中、聖河さんがしつこくローザーさんの予定を聞き続けて、ストーカーだと、ローザーさんが騒いでしまった。しかし、聖河さんはケロッとしていた。
スタジオに到着した。すでに長谷部さんと聡太郎が来ていて、今日のスタッフと話をしていた。監督は板東さんといい、俺達のバンドのステージ監督を務めてくれる人でもある。音声担当は藤下音響から来ている人になる。テレビ局の仕事も多く受け付けしており、少人数の会社だというが、業務は多岐にわたっている。今日はナレーションの収録だから、いつもの人ではない人が来てくれていた。なんと、栗下さんだった。栗下さんは縁起のいい人で、彼がいる場所では音声がクリアに撮れて、雑音が入らないと言われている。心霊番組のナレーションにはもってこいの人だろう。
「夏樹君!こっちよ!」
今、長谷部さんが俺達に手を振った。隣には聡太郎がいる。遠目からも分かるぐらいのオーラを出しているから、すぐに分かった。優しい人なのに迫力があるのは黒崎と似ている。真っ黒な髪の毛に白い肌をしている。そして、赤身のある唇で口角を上げて、ニコッと笑った。この笑みを悪魔の笑みと言っている伊吹だ。その伊吹は今日は来ていないようだ。てっきり、くっついてくるかと思ったのに。
「長谷部さん!聡太郎君!おはようございます!」
「良い声ね。今朝は調子が良さそうね」
「うん。聡太郎君、今日はよろしくね」
「こちらこそ。副社長。おはようござます」
「おはよう。夏樹が世話になる」
黒崎が聡太郎の前に立った。そして、一緒に居て話をしていたスタッフに声を掛けて、お菓子を渡した。さっき買ってきたクッキーだ。長谷部さんからもすでに渡しており、打ち合わせをするための部屋にはお菓子の箱が開けられて、いつでもどうぞという感じで、お茶も置かれていた。今日はお昼ご飯がテレビ局から出ることになっている。壁の方のテーブルの上にはお弁当が積み上げられていた。
「今日のお弁当ってどこのかな?」
「水仙よ。あなたが好きなお店」
「わあーー。嬉しいなあ。遠竹さんに教えて貰った後、俺達、常連になっていたんだ。でも、しばらく食べていなくてさ。一ヶ月ぶりだよ」
「あんまり日が開いていないじゃない。しばらくでもないわよ」
「そうなんだけどね。美味しいから恋しかったんだ。最近はお義父さんの家で食べることが増えて、お弁当の機会が減ってさ~。黒崎さん。あんたも好きだよね。ここのお弁当。今日はチキン南蛮だってさ」
お弁当の上に置かれた紙には、今日のメニューが載っていた。和風キチン南蛮と書いてある。俺も黒崎も好きな物だ。長谷部さんも同じだそうで、暑くなったからさっぱりしていいわねと言った。しかし、聡太郎だけは無言だ。
「聡太郎君。どうしたの?苦手だった?」
「ううん。そんなことはないよ。チキン南蛮は大好きだ。あのね。感慨にふけっていたんだ。副社長がそばにいるのに、ここが黒崎製菓じゃなくて、俺はギタリストになっていて、今日はナレーションの収録だなんて、会社員をしていたときは思わなかったんだ」
「そっか。ちょうど一年前に、こっちに戻ってくるって決めたんじゃ無かったっけ?退職したのが去年の8月だったよね」
「そうだよ。その後は手首の療養とリハビリと、ギターの練習に明け暮れていた。山岸先生のサポートで随分と弾けるようになった」
「聖河さんは腕の良いお医者さんだもん。ステージに来るときは外来をしないから、患者さんが困っているんだそうだよ。聖河さんのマッサージを受けたいし、診察も受けたいのにって……」
そう考えると、俺はそういう先生を独り占めしている。ローザーさんへの束縛がなかったら完璧なぐらいの人なのに、あのことがあったことで椅子から転び落ちそうだった。ローザーさんが聖河さんの元を逃げ出して友達の距離を保っている中、聖河さんがしつこくローザーさんの予定を聞き続けて、ストーカーだと、ローザーさんが騒いでしまった。しかし、聖河さんはケロッとしていた。
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