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ここからは効果音と合わせて撮る必要がある。俺はセットしているヘッドフォンからは、使用予定の効果音が流れる仕組みだ。そのタイミングに合わせてナレーションをする。効果音はあらかじめ作られており、女性の悲鳴も撮り終えられての完成形だ。俺達のナレーションが一番遅い撮影だということだった。ドラマはもう撮り終えていて、俺は壁にあるモニター画面で音のないドラマを見た。ナレーションを合わせるタイミングを計るためだ。
「夏樹君。では、お願いします」
「……ガーーーン!ババン!……立ちくらみを起こしそうになった私は保管部の前でしゃがみ込みました。私はあの日、間違いなく階段を駆け上がりました。男性も見ました。彼には足がありました。幽霊は足がないだなんて聞いたことがありますが、そうでないなら何だったのでしょうか。そして、階段を駆け上がったはずの私が普通のスピードで登っていったという映像を見てみたいと思いました」
「はい。オッケーです。では、聡太郎君とのハーモニーでお願いします」
板東さんの指示により、俺と聡太郎は顔を見合せて、同じタイミングでナレーションを始めた。いつも聞いている話し声と何も変わらない聡太郎の声なのに、自分の声を重ねることにより、いつもと違うと思って、一瞬だけ緊張した。声が震えそうだ。
「……あの男性は何だったのでしょうか。私は幽界の入り口に立ち、あの人に会ったのでしょうか。ゆがんだ次元空間の狭間に立ち、過去と未来が交差する瞬間に立っていたなど、SFの世界にあるようなことが起きたのでしょうか。ホラーでもあります。露出狂の幽霊など、聞いたことがありません。以上、雨が降ると思い出す、雨宿りの思い出でございました」
「はい、オッケーです!第一話目、完成です!」
パチパチパチ!
板東さんとスタッフ達から拍手が起こった。俺達はスピーカー越しにその音を聞いた。壁の時計を見ると、50分掛かっていた。俺はそんなに時間が掛かっている感じが無くて驚いた。しかし、緊張して経っていたから、膝と膝から下が痛くなっていた。聡太郎も同じだという。
「聡太郎君、大丈夫?」
「俺は大丈夫だよ。それより、君の方だよ。まるで生まれたて子鹿のようになっているよ。座った方が良い」
「足がガクガクしているよ~」
聡太郎の支えにより、俺は壁に沿って置かれた椅子に座った。クッションのないシンプルな椅子だ。しかし、パイプ椅子ではない。こういう収録スタジオ専用の椅子だ。全く音がしない仕様になっている。こういう現場では必要な物であり、椅子に座った俺に、板東さんから冗談を言おうかと声が掛けられた。
「夏樹君。その椅子、いくらだと思う?」
「3万円ぐらいですか?専用の椅子だから……」
「ははは。40万円だよ」
「わああ~~~~!」
板東さんが言った金額に驚き、椅子から飛び上がって立ちあがった。その様子を入ってきたカメラマンが撮っており、かっこ悪いところを撮られたと思って恥ずかしくなった。聡太郎は笑っている。事前に聞いていたのだろうか。
「ははは。夏樹君がガクブルです」
「そうだろう。40万円の椅子が5脚置いてある。壊れないし、丈夫だし、押しても引いても音がしない。こういうスタジオには必要なんだ」
「ヒャーーーー!200万円!車が買える!」
俺のリアクションが止まらない。まるで悠人のようになってしまった。聡太郎が笑っている。そして、俺にお疲れ様と言ってくれた。それが懐かしい光景と重なり、なんだか泣きそうになってしまった。俺が中学のときに街で喧嘩をして帰って来て、いつも聡太郎が玄関先で待っていてくれて、一緒に家に入ってくれていた。その時のホッとしたような笑顔が思い出されたからだ。
そして、感動している俺のことを、ガラス壁越しに黒崎が守ってくれていた。俺はみんなに手を振り返して、これから休憩に入るということで、ヘッドフォンを外した。
「聡太郎君。お昼ご飯を食べようだってさ」
「そうだね。もうそんな時間だ。みんなで同じ物を食べるのは重要なことなんだよ。結束力というものが高まるんだ」
「へえーーー。同じ釜の飯を食うっていうやつかな?」
外したヘッドフォンを専用のフックに掛けた。これもめちゃくちゃ高いかも知れないと思って、こわごわ触れた。そんな俺にカメラマンが寄ってきて、ずっと撮っているから、また恥ずかしくなったのだった。
「夏樹君。では、お願いします」
「……ガーーーン!ババン!……立ちくらみを起こしそうになった私は保管部の前でしゃがみ込みました。私はあの日、間違いなく階段を駆け上がりました。男性も見ました。彼には足がありました。幽霊は足がないだなんて聞いたことがありますが、そうでないなら何だったのでしょうか。そして、階段を駆け上がったはずの私が普通のスピードで登っていったという映像を見てみたいと思いました」
「はい。オッケーです。では、聡太郎君とのハーモニーでお願いします」
板東さんの指示により、俺と聡太郎は顔を見合せて、同じタイミングでナレーションを始めた。いつも聞いている話し声と何も変わらない聡太郎の声なのに、自分の声を重ねることにより、いつもと違うと思って、一瞬だけ緊張した。声が震えそうだ。
「……あの男性は何だったのでしょうか。私は幽界の入り口に立ち、あの人に会ったのでしょうか。ゆがんだ次元空間の狭間に立ち、過去と未来が交差する瞬間に立っていたなど、SFの世界にあるようなことが起きたのでしょうか。ホラーでもあります。露出狂の幽霊など、聞いたことがありません。以上、雨が降ると思い出す、雨宿りの思い出でございました」
「はい、オッケーです!第一話目、完成です!」
パチパチパチ!
板東さんとスタッフ達から拍手が起こった。俺達はスピーカー越しにその音を聞いた。壁の時計を見ると、50分掛かっていた。俺はそんなに時間が掛かっている感じが無くて驚いた。しかし、緊張して経っていたから、膝と膝から下が痛くなっていた。聡太郎も同じだという。
「聡太郎君、大丈夫?」
「俺は大丈夫だよ。それより、君の方だよ。まるで生まれたて子鹿のようになっているよ。座った方が良い」
「足がガクガクしているよ~」
聡太郎の支えにより、俺は壁に沿って置かれた椅子に座った。クッションのないシンプルな椅子だ。しかし、パイプ椅子ではない。こういう収録スタジオ専用の椅子だ。全く音がしない仕様になっている。こういう現場では必要な物であり、椅子に座った俺に、板東さんから冗談を言おうかと声が掛けられた。
「夏樹君。その椅子、いくらだと思う?」
「3万円ぐらいですか?専用の椅子だから……」
「ははは。40万円だよ」
「わああ~~~~!」
板東さんが言った金額に驚き、椅子から飛び上がって立ちあがった。その様子を入ってきたカメラマンが撮っており、かっこ悪いところを撮られたと思って恥ずかしくなった。聡太郎は笑っている。事前に聞いていたのだろうか。
「ははは。夏樹君がガクブルです」
「そうだろう。40万円の椅子が5脚置いてある。壊れないし、丈夫だし、押しても引いても音がしない。こういうスタジオには必要なんだ」
「ヒャーーーー!200万円!車が買える!」
俺のリアクションが止まらない。まるで悠人のようになってしまった。聡太郎が笑っている。そして、俺にお疲れ様と言ってくれた。それが懐かしい光景と重なり、なんだか泣きそうになってしまった。俺が中学のときに街で喧嘩をして帰って来て、いつも聡太郎が玄関先で待っていてくれて、一緒に家に入ってくれていた。その時のホッとしたような笑顔が思い出されたからだ。
そして、感動している俺のことを、ガラス壁越しに黒崎が守ってくれていた。俺はみんなに手を振り返して、これから休憩に入るということで、ヘッドフォンを外した。
「聡太郎君。お昼ご飯を食べようだってさ」
「そうだね。もうそんな時間だ。みんなで同じ物を食べるのは重要なことなんだよ。結束力というものが高まるんだ」
「へえーーー。同じ釜の飯を食うっていうやつかな?」
外したヘッドフォンを専用のフックに掛けた。これもめちゃくちゃ高いかも知れないと思って、こわごわ触れた。そんな俺にカメラマンが寄ってきて、ずっと撮っているから、また恥ずかしくなったのだった。
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