青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
694 / 938

20-15(黒崎視点)

しおりを挟む
 16時。

 収録は順調に進んでいる。夏樹と聡太郎が真剣な顔つきでナレーションを読み上げ、板東さんからの指示に頷きながら、やり直す箇所もあった。ずっと立ったままで大丈夫だろうかと思ったが、椅子が用意されており、時々休憩を挟みながら作業が進められている。

「長谷部さん。今回の放送ではナレーションが夏樹達だと分かるでしょうか。広報はSNSを1本のみでしたが……」
「今回はそうしました。テレビ局の意向では何度も宣伝をして欲しいとのことでしたが、音楽の方を中心にしたかったので、あえて少なくしました。声の方は、ファンの方だったら分かると思います。でも、聡太郎君の方は初めて聞く声だから分からないかも」
「久弥さんとは違う声だ。もっと大きく宣伝しても良かったのでは」
「そうですけど、会社の意向なんです。もちろん、この仕事を頂いて感謝しているんですが、宣伝を少なくしてどれだけ話題が出るかどうかを試したいんです。テレビ局の方でも宣伝して頂いていますし……。あら、圭一さん。電話ですよ」
「ああ。掛かってきている。失礼します」

 父からまた着信が入った。今も収録に付き添っていると知っているはずだ。何か起きたに違いない。嫌な予感がした。何のことだろうか。この妙な胸騒ぎは何だろうか。そう思いながら隣の部屋に移動した。そこは昼食を食べた部屋だ。和やかな空気の中で過ごせた。しかし今、そうではない予感をしている。そして、俺は電話に出た。
 
「もしもし。親父。どうしたんだ?」
「我々に殺害予告がされた」
「なんだって?」
「犯行予告は明後日の金曜日。午前10時8分だ。黒崎製菓と家の両方に襲いに来るそうだ」
「なんだと……」
「さっき深川君から連絡が入った。家からもだ。警察がうちに訪ねてきた。しかし、私とユーリーと留守にしていたから、対応できなかった。さっき、警察から電話が掛かってきた。私達は今、家にいる」

 父の声は真剣なものだった。黒崎製菓にメールで殺害予告がされて、うちの管轄の警察署にもメールがされたそうだ。内容としては、殺害方法の詳細と、父と俺の名前が挙げられていたそうだ。冬に二葉の同級生から爆破予告がされたことで父は何度も警察署に訪ねていき、連絡先を伝えてあった。まず先に電話が掛かるのではないだろうか。それを聞くと、30分前にあった着信に出られなかったという。そこで、警察の方から家に訪ねてきたのだそうだ。

 今回の殺害予告の内容を聞いた。黒崎製菓の社員は対象に入っていないということだった。傭兵を雇い、俺達の殺害には散弾銃を使うということだ。犯行予告者の名前は高木啓介たかぎけいすけと名乗っていているという。今回は男性だ。いや、女性かも知れない。また二葉の同級生ではないだろうか。

 同級生達は逮捕された後、和解が成立しなかった。そして、裁判で有罪判決を受けて、懲役1年、執行猶予4年をくらっている。今は大人しくしているなどとは思っていない。こちらのことを恨みに思っているだろう。アイドルグループの事務所にも殺害予告がされているかも知れない。

「あの子達じゃないのか?執行猶予付き判決を受けて、世に名前が報道されて、人生がめちゃくちゃだ。破れかぶれになっているもかも知れない。倉林ななせさんは離婚はしていないが、別居しているそうじゃないか」
「夫の父親の逮捕があるからだ。お互いに姻族関係を持っているメリットはないと、夫婦が考えているそうだ。私のところの調査会社からの報告によると、そうだった。ななせさん以外は転職をしている。今橋爽未さんもだ」
「お医者さんか……」
「お医者さんになった子だった人だ。医師免許を剥奪されている。その今橋さんを名乗る人から2時間前に二葉にラインが入った。ごめんなさいを60回も繰り返した内容だった」
「今回の殺害予告と関係があるだろう。タイミングが良すぎる」
「いや、それはないと思っている。警察によると、今橋さんは入院していて、面会できない状況だ。外部との連絡も取ることが出来ない。スマホを看護師に預けていたそうだ。2時間前にスマホを手に取って、久しぶりにネット検索していたそうだ。一部始終を看護師が見ている。しかし、60回のごめんなさいは、送った後で看護師が気づいたそうだ。その頃に殺害予告メールが届いている」
「なら、友達の中の誰かじゃないのか」
「警察もそう見ている。しかし、模倣犯も居る。被害届けを出さなければならない。悪いが、今日は早めに帰って来てくれ」
「分かった」

 殺害予告ということで、警察からは、犯行予告時刻には会社と家から避難してくれと言われたそうだ。知人の家に行くのが良いという。誰か知り合いがそばに居る方が良いということだろう。これで用事ができた。黒崎製菓には警備スタッフを配置し、家には誰もいないように手配する必要がある。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

処理中です...