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夏樹に電話を掛けると、ちょうど弁当を食べているところだった。レコーディングの部屋とは別の部屋で食べているかと思えば、同じ部屋で食べているのだという。それなら電話はいけないだろう。久弥達が作業をしているはずだ。
「すまない。先に飯を食え。後で連絡する」
「いいんだよ。久弥も休憩するっていうからさ~。蔵ノ介さんと喧嘩中なんだって。うひゃひゃひゃ」
「気の毒に。笑うことじゃないだろう」
「ラインが入ったんだって。今から電話を掛けるそうだよ」
「後で久弥さんに伝えておいてくれ。母と菅野さんの件で話したと。ラインも入れておくが……」
「どうしてママと?」
「菅野さんが真琴企画に移籍するかも知れない。飯野さんに連絡を取ったら、その情報が入ってきた。そこで、久弥さんからの話を母にしておいた。菅野さんはテレビの仕事があるそうだ。まだ話が入っている段階だが、親子だと公表する流れがあるのかも知れない」
「今、伝えておくよ。……久弥!」
夏樹が久弥のことを呼んだ。別の部屋に行こうとしていたのだろう。引き留めた形だ。そして、夏樹の口から今回のことが伝えられた。すると、夏樹が久弥に電話を替わると言い出した。後で良いと思ったが、俺は久弥の心の澱を取り払いたくて、早く話しておいた方が良いと思った。
「もしもし。黒崎さん。佐伯です」
「収録中にすみません。菅野さんが母の事務所に移籍する予定があるということで、飯野さんから情報が入りました。多々良君が掴んだ情報でした。すぐに母に確認を取って、真実だと分かりました。まだ移籍前です。テレビの仕事が予定されているということで移籍希望なのだという話だったそうです。美野音大の講師の話は継続中です。そこで、親子だと公表するのはストップをかけてあると伝えました。母は了承しました」
「ありがとうございました。俺の方からも言っておきます」
「菅野さんと連絡を取るんですか?」
「ええ。仕方の無いことです」
「貴方と話がしたくて駄々をこねているのでは無いですか?」
俺にはそういう気がした。事務所の移籍なら黙ってすれば良いことだ。ただ一つ。久弥達と親子だと公言しないことだ。その約束さえ守ってもらえれば良い。新しい事務所にもだ。いや、それは可能では無いのか。マネジメントをする側としては聞いておかないといけない情報だったか。いずれにせよ、公表だけはしない約束だ。それを破ろうとするのは、菅野さんが久弥と連絡を取りたいだけだと思った。
俺はそう口にすると、久弥が少し笑った。苦笑いといった感じだ。もう気がついているということか。久弥には雅美さんという母が居る。彼女のことを必ず守ると誓っているからには、菅野さんのことで巻き込まないと決めているだろう。
「黒崎さん。俺もそう思っています。菅野さんが何か話したいことがあるのだと思っています。今更ながら親子として過ごしたいなんて言い出すような人では無いと思いますが、あの人の場合は思考が読めません」
「そうですか。会うことは考えていますか?」
「いえ、電話だけですませます。飯野さんが代わりに合うかも知れません。弁護士を連れて行きます」
「そうですか……」
そこで俺は母に聞いてみようかと思った。菅野さんの考えをだ。人の気持ちを読み取るだなんて信じられない話だと思っていた俺だが、案外本当のことだと思っている。月島さんにしろ母にしろ、そういう人がいてもおかしくないと思っている。
世の中にはよく分からないことが起こるものだ。家に帰れば一貴の元にはヨークが居るからだ。もしかすると、今日は夏樹のそばに居るかも知れない。想念を機械で吸い取るのだと言っていたからだ。そういう人が居る環境の中だからこそ、不思議なことを信じてしまう。人の話を信じない俺だったのに、おかしなことだ。
「すまない。先に飯を食え。後で連絡する」
「いいんだよ。久弥も休憩するっていうからさ~。蔵ノ介さんと喧嘩中なんだって。うひゃひゃひゃ」
「気の毒に。笑うことじゃないだろう」
「ラインが入ったんだって。今から電話を掛けるそうだよ」
「後で久弥さんに伝えておいてくれ。母と菅野さんの件で話したと。ラインも入れておくが……」
「どうしてママと?」
「菅野さんが真琴企画に移籍するかも知れない。飯野さんに連絡を取ったら、その情報が入ってきた。そこで、久弥さんからの話を母にしておいた。菅野さんはテレビの仕事があるそうだ。まだ話が入っている段階だが、親子だと公表する流れがあるのかも知れない」
「今、伝えておくよ。……久弥!」
夏樹が久弥のことを呼んだ。別の部屋に行こうとしていたのだろう。引き留めた形だ。そして、夏樹の口から今回のことが伝えられた。すると、夏樹が久弥に電話を替わると言い出した。後で良いと思ったが、俺は久弥の心の澱を取り払いたくて、早く話しておいた方が良いと思った。
「もしもし。黒崎さん。佐伯です」
「収録中にすみません。菅野さんが母の事務所に移籍する予定があるということで、飯野さんから情報が入りました。多々良君が掴んだ情報でした。すぐに母に確認を取って、真実だと分かりました。まだ移籍前です。テレビの仕事が予定されているということで移籍希望なのだという話だったそうです。美野音大の講師の話は継続中です。そこで、親子だと公表するのはストップをかけてあると伝えました。母は了承しました」
「ありがとうございました。俺の方からも言っておきます」
「菅野さんと連絡を取るんですか?」
「ええ。仕方の無いことです」
「貴方と話がしたくて駄々をこねているのでは無いですか?」
俺にはそういう気がした。事務所の移籍なら黙ってすれば良いことだ。ただ一つ。久弥達と親子だと公言しないことだ。その約束さえ守ってもらえれば良い。新しい事務所にもだ。いや、それは可能では無いのか。マネジメントをする側としては聞いておかないといけない情報だったか。いずれにせよ、公表だけはしない約束だ。それを破ろうとするのは、菅野さんが久弥と連絡を取りたいだけだと思った。
俺はそう口にすると、久弥が少し笑った。苦笑いといった感じだ。もう気がついているということか。久弥には雅美さんという母が居る。彼女のことを必ず守ると誓っているからには、菅野さんのことで巻き込まないと決めているだろう。
「黒崎さん。俺もそう思っています。菅野さんが何か話したいことがあるのだと思っています。今更ながら親子として過ごしたいなんて言い出すような人では無いと思いますが、あの人の場合は思考が読めません」
「そうですか。会うことは考えていますか?」
「いえ、電話だけですませます。飯野さんが代わりに合うかも知れません。弁護士を連れて行きます」
「そうですか……」
そこで俺は母に聞いてみようかと思った。菅野さんの考えをだ。人の気持ちを読み取るだなんて信じられない話だと思っていた俺だが、案外本当のことだと思っている。月島さんにしろ母にしろ、そういう人がいてもおかしくないと思っている。
世の中にはよく分からないことが起こるものだ。家に帰れば一貴の元にはヨークが居るからだ。もしかすると、今日は夏樹のそばに居るかも知れない。想念を機械で吸い取るのだと言っていたからだ。そういう人が居る環境の中だからこそ、不思議なことを信じてしまう。人の話を信じない俺だったのに、おかしなことだ。
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