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番組が始まって20分が経った。胃が膨れた感じがなくなり、また食べられそうになった。食事の席を中座して、エミリアさんに悪いと思った。そこで、起き上がり、大広間に行こうとした。そしたら、アレクシスさんがリビングに入ってきた。しーっと、指先を口元に当てている。
「どうしたの?」
「アンが寝ている。お前が起き上がったら彼女が起きる。ここから見て気持ちよさそうだ」
「なるほど。アンドリューも寝てるだろ?」
「ああ、よく寝ている」
アレクシスさんが俺の隣のソファーに座った。アンが起き上がらない。アンドリューもだ。安心して寝ているのだろう。テレビでは出演者の俳優さんが幽霊に追いかけられているシーンをやっていて、とても寝られる状況ではない。一人で見ていたら怖かったと思うから、アレクシスさんが来てくれて良かったと思った。
「このシーン、撮るのが怖かったんだよ~」
「向こうで見ていた。橋の上で幽霊に遭って、次の日、また同じ霊を見かけたっていう話だな」
「そうなんだよ。ここのナレーションは俺が担当したよ。聡太郎君は次の話で出てくるよ」
「うまいもんだな。ナレーションは初めてなんだろう?」
「うん。そうだよ。台本を用意されていて、細かく打ち合わせして、どんな感じで読むか決めてあったんだ。俺はその通りにしたんだよ」
「それができるのがすごい。何でも出来るじゃ無いか」
「ありがとう」
アレクシスさんから褒められて嬉しくなった。なんだか照れくさい。ここからでも匂うタバコの匂いを嗅いで懐かしいと感じた。この間、日本に来て、ドイツに帰っていった。あの後は寂しいと思っていた。それなのに、こんなに早く再会できて嬉しい。この家では誰もタバコを吸わないから、すれ違った人からその匂いがすると、アレクシスさんを思い出していた。
「アレクシスさん。タバコの匂いがしたら、いつもあんたのことを思い出していたんだ」
「なんだか口説き文句のようだな」
「そうかな?」
「ああ。お前みたいな魅力的な子から言われると、ずっとここにいたくなる」
「まずいよ。黒崎さんが聞いたら飛んでくるよ」
「そうだな。圭一を敵に回したくない。あいつは恐ろしい男だ」
アレクシスさんが笑った。なんだか不思議だと思った。俺は人見知りがあるから初対面の人とすぐに打ち解けられないのが悩みだった。それなのに、アレクシスさんには初対面から話ができた。ユーリーのお兄さんであるということと、電話で話をしていたからかも知れない。いや、電話の時から緊張せずに済んでいた。アレクシスさんの魔法だと思う。彼は相手の緊張を解く人だと思った。
「アレクシスさんって、不思議だね。俺、初対面から全然緊張しなかったんだ」
「それはお前が人に慣れてきたからじゃないか?歌う仕事しているんだ」
「そうでもないんだ。現場に着くと緊張しているよ。スタッフさんは固定されていて、もう知らない人はいなくなっているけど、テレビの仕事の時は初対面の人が多いから、ビビっているよ」
「飛ぶ鳥を落とす勢いのバンドのボーカルがか?」
「そんなことはないよ。罰が当たるよ」
アレクシスさんの冗談が心地良い。まさか、俺に気を遣って食事の席を抜け出してきてくれたのだろうか。それなら悪いから、戻ろうと思った。
「俺に付き合ってくれているんだろ。戻るよ」
「いや、構わない。こうやって話がしたかった。養子になって、この家のことはどうだ?」
「みんな優しくしてくれるよ。法事の時はビクビクだったけどね。一番最初の年だけだけど」
「隆さんに息子が増えたことで、色々言う奴がいただろう。俺の家まで聞こえてきたんだぞ。すごい話だった。愛人にする気だと言われていた」
「なんだよ、それ」
「本当のことだ。圭一の恋人だと聞いているのに、いつのまにかその話になっていた。俺は向こうでその話を聞いて、さすがはこの家だと思った。悪口が多すぎる。でも、隆さんが違うと否定したから、みんな黙ったけどな」
「初耳だよ~。そんなことを言う人がいたのかよ~」
想定済みの話に驚きはしなかった。そういうことを言う人がいてもおかしくないと思っていたからだ。この家の養子になることが決まった後、我が家には色んな人が訪ねてきていた。ほとんどが黒崎家の親戚の人達だ。しかし、俺は一切会わないようにと、黒崎からもお義父さんからも言いつけられていた。会う日はセッティングされるということだった。それは法事の席になるということも説明を受けていた。
「どうしたの?」
「アンが寝ている。お前が起き上がったら彼女が起きる。ここから見て気持ちよさそうだ」
「なるほど。アンドリューも寝てるだろ?」
「ああ、よく寝ている」
アレクシスさんが俺の隣のソファーに座った。アンが起き上がらない。アンドリューもだ。安心して寝ているのだろう。テレビでは出演者の俳優さんが幽霊に追いかけられているシーンをやっていて、とても寝られる状況ではない。一人で見ていたら怖かったと思うから、アレクシスさんが来てくれて良かったと思った。
「このシーン、撮るのが怖かったんだよ~」
「向こうで見ていた。橋の上で幽霊に遭って、次の日、また同じ霊を見かけたっていう話だな」
「そうなんだよ。ここのナレーションは俺が担当したよ。聡太郎君は次の話で出てくるよ」
「うまいもんだな。ナレーションは初めてなんだろう?」
「うん。そうだよ。台本を用意されていて、細かく打ち合わせして、どんな感じで読むか決めてあったんだ。俺はその通りにしたんだよ」
「それができるのがすごい。何でも出来るじゃ無いか」
「ありがとう」
アレクシスさんから褒められて嬉しくなった。なんだか照れくさい。ここからでも匂うタバコの匂いを嗅いで懐かしいと感じた。この間、日本に来て、ドイツに帰っていった。あの後は寂しいと思っていた。それなのに、こんなに早く再会できて嬉しい。この家では誰もタバコを吸わないから、すれ違った人からその匂いがすると、アレクシスさんを思い出していた。
「アレクシスさん。タバコの匂いがしたら、いつもあんたのことを思い出していたんだ」
「なんだか口説き文句のようだな」
「そうかな?」
「ああ。お前みたいな魅力的な子から言われると、ずっとここにいたくなる」
「まずいよ。黒崎さんが聞いたら飛んでくるよ」
「そうだな。圭一を敵に回したくない。あいつは恐ろしい男だ」
アレクシスさんが笑った。なんだか不思議だと思った。俺は人見知りがあるから初対面の人とすぐに打ち解けられないのが悩みだった。それなのに、アレクシスさんには初対面から話ができた。ユーリーのお兄さんであるということと、電話で話をしていたからかも知れない。いや、電話の時から緊張せずに済んでいた。アレクシスさんの魔法だと思う。彼は相手の緊張を解く人だと思った。
「アレクシスさんって、不思議だね。俺、初対面から全然緊張しなかったんだ」
「それはお前が人に慣れてきたからじゃないか?歌う仕事しているんだ」
「そうでもないんだ。現場に着くと緊張しているよ。スタッフさんは固定されていて、もう知らない人はいなくなっているけど、テレビの仕事の時は初対面の人が多いから、ビビっているよ」
「飛ぶ鳥を落とす勢いのバンドのボーカルがか?」
「そんなことはないよ。罰が当たるよ」
アレクシスさんの冗談が心地良い。まさか、俺に気を遣って食事の席を抜け出してきてくれたのだろうか。それなら悪いから、戻ろうと思った。
「俺に付き合ってくれているんだろ。戻るよ」
「いや、構わない。こうやって話がしたかった。養子になって、この家のことはどうだ?」
「みんな優しくしてくれるよ。法事の時はビクビクだったけどね。一番最初の年だけだけど」
「隆さんに息子が増えたことで、色々言う奴がいただろう。俺の家まで聞こえてきたんだぞ。すごい話だった。愛人にする気だと言われていた」
「なんだよ、それ」
「本当のことだ。圭一の恋人だと聞いているのに、いつのまにかその話になっていた。俺は向こうでその話を聞いて、さすがはこの家だと思った。悪口が多すぎる。でも、隆さんが違うと否定したから、みんな黙ったけどな」
「初耳だよ~。そんなことを言う人がいたのかよ~」
想定済みの話に驚きはしなかった。そういうことを言う人がいてもおかしくないと思っていたからだ。この家の養子になることが決まった後、我が家には色んな人が訪ねてきていた。ほとんどが黒崎家の親戚の人達だ。しかし、俺は一切会わないようにと、黒崎からもお義父さんからも言いつけられていた。会う日はセッティングされるということだった。それは法事の席になるということも説明を受けていた。
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