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21時。
庭に出てきた。エミリアさんが日本でやりたかったことをしようと思っている。それは、七夕飾りだ。もうとっくに過ぎたし、この間もやったが、要は気持ちだ。池の噴水のそばには笹を挿す仕掛けを作っており、いつでも挿せるようになっている。
黒崎が家の中から笹を持ってきた。エミリアさんがそれを見て喜んでいる。ユーリーもだ。七夕当日にも短冊を書いたが、またやりたかったそうだ。そして、黒崎が笹を装置に挿した。これで良しと言っている。
「さあ、エミリア。願い事を書いてくれ」
「嬉しいわ。日本語で書きましょう……」
一貴さんが持って来た折りたたみテーブルの上には色とりどりの短冊が置いてある。ペンもある。みんなでそれぞれ書いて飾ろうというわけだ。そして、短冊は一貴さんが京都にある神社に奉納してくると言ってくれた。この間書いた短冊は翌日、都内にある神社に持って行った。今回もそうすると思ったのに、一体どうしたのだろう。
「カズ兄さん。どうしたの?誰かから聞いたの?」
「社員から聞いたんだ。占いの店・マーリンでも七夕祭りをやっていたそうだ。そこで、お客さんが書いた短冊をその神社に奉納するっていうキャンペーンをやっていたそうだ。だから、僕もやってみたいと思った」
「遠いだろ。いいの?」
「いい。出張で京都に行くから、六槍君と寄ってくる」
「六槍さん、元気?」
「ああ、元気だ。朝陽君を追いかけ回して大変だ。さあ、僕達もまた願い事を書こうじゃないか」
さらさらと音がした。それは笹の葉の音だった。そして、そばではサインペンの音がしている。今、エミリアさんが願い事を書き終えた。それはとても綺麗な字であり、下手くそな俺としては恥ずかしくなった。エミリアさんの願い事は、家族が健康でくらせますようにというものだ。俺は何にしよう。
「何にしようかな?楽曲のヒット祈願はこの間書いたもんな~」
「僕は何て書こうか。社員が安全にプラセルで仕事ができますように。社員が健康で暮らせますように。オンライズのヒット祈願もある」
「オンライズはどうなんだよ?」
「売れ行きは好調だ。朝陽君には秋冬もモデルをやってもらいたかったけど、断られた。まあ、良いモデルが見つかって良かったけど……」
「そっか。オンライズの前に行くと、朝陽の顔がババンとあるもんね。目立つよねえ」
そうやって話ながら、何を書こうか悩んだ。この間とは違う願い事の方が良いからだ。そこで、一貴さんのおっちょこちょいが静まりますようにと書こうと思った。それから、黒崎のえらそうさが収まりますようにという願い事だ。
「俺、思いついたよ。カズ兄さんのおっちょこちょいが静まりますように。黒崎さんのえらそうさが収まりますように。どう?」
「僕のことを書いたのか!恥ずかしいじゃ無いか!」
「いいじゃん。カズ兄さん。あんたは藤沢とのことを書くと良いんだよ。恋愛成就しますようにって。うひゃひゃひゃ」
「書かない。恥ずかしい」
なんて慎み深い人なのだろう。彼の書いた短冊は社員のことを願っている物ばかりだ。業界で嫌われていた人のように思えない。元から社員からは好かれていたから、優しいところが伝わっていたのだろう。
俺はユーリーの短冊が気になって見に行った。すると、恋愛成就しますようにと書いてあったから吹き出して笑った。一貴さんと大違いだからだ。欲があって良いと思う。
「ユーリー。誰との恋愛成就を願っているんだよ?」
「もちろん、南波君だ」
「アメリカにいる彼が恋人と別れたらいいって書いたくせに」
「それはそれ。これはこれだ」
「南波さんも願われているなんて思っていないだろうなあ。七夕当日は思ったかも知れないけど、またなんて思わないと思うんだ。うひゃひゃひゃ」
ユーリーが書いた短冊はどれも丁寧な字だ。性格が出ていると思う。それに引き換え、俺はと思って、また恥ずかしくなった。高校生の時は担任の田中先生しか俺の字を判読できなかった。しかし、大学ではどの先生も俺の字を理解してくれた。そこで、田中先生に大学の先生はさすがだと連絡を入れると、少し怒っていた。笑ってもいた。そこで、不味いことを言ってしまったと分かった。
そんな風にして、俺は失言をすることがある。だから、バンドのSNSがやれない。いつも事務所が用意してくれて、写真がアップされている。そんなことを思い出して、俺はこう書くことにした。
「人から誤解されませんように。失言をしませんように……」
「なんだ、それは」
「あ、黒崎さん。捨てないでよ。大事な願い事だよ~」
「こういう願い事は本人の努力が必要だ。願うな」
「願いたいんだよ~」
黒崎が俺の短冊をポケットにしまおうとしたから、慌てて取り返した。そして、さっさとそれを笹に飾り付けた。願い事は4つある。どれも大事な物だ。
すると、エミリアさんが二葉の願い事を見て微笑んでいた。引っ込み思案が直りますようにという願い事だった。俺はそれを見て、胸が痛くなった。その気持ちがとても分かるからだ。そして、アレクシスさんの願い事を見て吹き出した。
「ユリウスの禁酒が続きますようにって書いたの?」
「ああ。隆さんも同じ願い事だ」
「あ、ほんとだ~。ユーリー、禁酒しないといけないよ~」
「そろそろ飲みたい」
「だめだよ~」
さっそく俺はその二つの願い事を笹に飾った。空を見上げると、織り姫星のベガと彦星のアルタイルが輝いていた。その星の下で、楽しい時間を過ごしたのだった。
庭に出てきた。エミリアさんが日本でやりたかったことをしようと思っている。それは、七夕飾りだ。もうとっくに過ぎたし、この間もやったが、要は気持ちだ。池の噴水のそばには笹を挿す仕掛けを作っており、いつでも挿せるようになっている。
黒崎が家の中から笹を持ってきた。エミリアさんがそれを見て喜んでいる。ユーリーもだ。七夕当日にも短冊を書いたが、またやりたかったそうだ。そして、黒崎が笹を装置に挿した。これで良しと言っている。
「さあ、エミリア。願い事を書いてくれ」
「嬉しいわ。日本語で書きましょう……」
一貴さんが持って来た折りたたみテーブルの上には色とりどりの短冊が置いてある。ペンもある。みんなでそれぞれ書いて飾ろうというわけだ。そして、短冊は一貴さんが京都にある神社に奉納してくると言ってくれた。この間書いた短冊は翌日、都内にある神社に持って行った。今回もそうすると思ったのに、一体どうしたのだろう。
「カズ兄さん。どうしたの?誰かから聞いたの?」
「社員から聞いたんだ。占いの店・マーリンでも七夕祭りをやっていたそうだ。そこで、お客さんが書いた短冊をその神社に奉納するっていうキャンペーンをやっていたそうだ。だから、僕もやってみたいと思った」
「遠いだろ。いいの?」
「いい。出張で京都に行くから、六槍君と寄ってくる」
「六槍さん、元気?」
「ああ、元気だ。朝陽君を追いかけ回して大変だ。さあ、僕達もまた願い事を書こうじゃないか」
さらさらと音がした。それは笹の葉の音だった。そして、そばではサインペンの音がしている。今、エミリアさんが願い事を書き終えた。それはとても綺麗な字であり、下手くそな俺としては恥ずかしくなった。エミリアさんの願い事は、家族が健康でくらせますようにというものだ。俺は何にしよう。
「何にしようかな?楽曲のヒット祈願はこの間書いたもんな~」
「僕は何て書こうか。社員が安全にプラセルで仕事ができますように。社員が健康で暮らせますように。オンライズのヒット祈願もある」
「オンライズはどうなんだよ?」
「売れ行きは好調だ。朝陽君には秋冬もモデルをやってもらいたかったけど、断られた。まあ、良いモデルが見つかって良かったけど……」
「そっか。オンライズの前に行くと、朝陽の顔がババンとあるもんね。目立つよねえ」
そうやって話ながら、何を書こうか悩んだ。この間とは違う願い事の方が良いからだ。そこで、一貴さんのおっちょこちょいが静まりますようにと書こうと思った。それから、黒崎のえらそうさが収まりますようにという願い事だ。
「俺、思いついたよ。カズ兄さんのおっちょこちょいが静まりますように。黒崎さんのえらそうさが収まりますように。どう?」
「僕のことを書いたのか!恥ずかしいじゃ無いか!」
「いいじゃん。カズ兄さん。あんたは藤沢とのことを書くと良いんだよ。恋愛成就しますようにって。うひゃひゃひゃ」
「書かない。恥ずかしい」
なんて慎み深い人なのだろう。彼の書いた短冊は社員のことを願っている物ばかりだ。業界で嫌われていた人のように思えない。元から社員からは好かれていたから、優しいところが伝わっていたのだろう。
俺はユーリーの短冊が気になって見に行った。すると、恋愛成就しますようにと書いてあったから吹き出して笑った。一貴さんと大違いだからだ。欲があって良いと思う。
「ユーリー。誰との恋愛成就を願っているんだよ?」
「もちろん、南波君だ」
「アメリカにいる彼が恋人と別れたらいいって書いたくせに」
「それはそれ。これはこれだ」
「南波さんも願われているなんて思っていないだろうなあ。七夕当日は思ったかも知れないけど、またなんて思わないと思うんだ。うひゃひゃひゃ」
ユーリーが書いた短冊はどれも丁寧な字だ。性格が出ていると思う。それに引き換え、俺はと思って、また恥ずかしくなった。高校生の時は担任の田中先生しか俺の字を判読できなかった。しかし、大学ではどの先生も俺の字を理解してくれた。そこで、田中先生に大学の先生はさすがだと連絡を入れると、少し怒っていた。笑ってもいた。そこで、不味いことを言ってしまったと分かった。
そんな風にして、俺は失言をすることがある。だから、バンドのSNSがやれない。いつも事務所が用意してくれて、写真がアップされている。そんなことを思い出して、俺はこう書くことにした。
「人から誤解されませんように。失言をしませんように……」
「なんだ、それは」
「あ、黒崎さん。捨てないでよ。大事な願い事だよ~」
「こういう願い事は本人の努力が必要だ。願うな」
「願いたいんだよ~」
黒崎が俺の短冊をポケットにしまおうとしたから、慌てて取り返した。そして、さっさとそれを笹に飾り付けた。願い事は4つある。どれも大事な物だ。
すると、エミリアさんが二葉の願い事を見て微笑んでいた。引っ込み思案が直りますようにという願い事だった。俺はそれを見て、胸が痛くなった。その気持ちがとても分かるからだ。そして、アレクシスさんの願い事を見て吹き出した。
「ユリウスの禁酒が続きますようにって書いたの?」
「ああ。隆さんも同じ願い事だ」
「あ、ほんとだ~。ユーリー、禁酒しないといけないよ~」
「そろそろ飲みたい」
「だめだよ~」
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