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アンが美容院に出発した後、俺はリビングに戻って歌詞を書き始めた。マザーの次に出す楽曲の予定だ。その予定はまだ先のことで、来年になる。マザーでは母への思いを書いた詩になるが、次の楽曲では亡くなった息子を思う両親のことを書いた詩にすることになった。物語性を高めるバンドにするためだ。
「うーーん。これはお義父さんに聞かないと分からない話だなあ」
この歌詞の主人公を、この家の人にしたいと思った。親より早く亡くなるケースはたくさんあったと聞いている。先祖のうちの誰かとか、お義父さんが知っている人だとかをモデルにしたい。
すると、拓海さんの祭壇が視界に入った。そうだった。ここに拓海さんが居る。親より早く亡くなった人だ。そこで、とてもお義父さんには聞けないと思った。当時の悲しみを思い出させてしまう。俺はなんて軽率だったのだろう。
「俺、どうしたのかな。歌詞を書こうとすると気持ちが止まらないんだ。ううん。言い訳はダメだ」
歌詞を書こうとすると気持ちが走りすぎてしまう。寝食を忘れて書いてしまい、朝から書いて気がついたら夕方になっていることがある。俺達の家にいるときは家事があるから手を止める機会があるが、この家にいると何もしなくて良いから、つい、時間を忘れてしまう。
こうして没頭できる環境はありがたいことだ。しかし、周りから心配されている。きちんと食べて、適度に動き、毎日を送る。それが俺にとって大事なことだからだ。食べないとフラフラして倒れてしまう。小食でもそうなる。心臓にだって悪いと思う。
「えーーっと、“母が泣いて”……、“父が探しに行く”……。探しに行くのはお母さんの方にしようかな?」
歌詞の物語としては、大昔の話だ。10歳の子が村に戻らなくなり、死んでしまったのだと言って、村人達が泣いてしまう。その子の両親は夜になると彼のことを探しに行こうとする。その彼へのレクイエムだ。
つけっぱなしにしているテレビではテレビショッピングの番組が流れている。そこで、情報番組にチャンネルを変えた。俺はなぜかこのチャンネルを付けているときに歌詞を思いつくからだ。すると、天気予報をやっていた。
「……都内では35.6度を記録しました」
今日の気温を聞いて驚いた。暑いはずだ。庭の大学生達はどうなっているだろうか。もう片付けをしていると聞いている。一貴さんはずっと外に出ている。黒崎はお義父さんとエミリアさんとで話をしていて、アレクシスさんは少し寝ている。ユーリーは仕事だ。2時間やると言っていた。会議があるのだという。
「夏樹。進まないのかい?」
「あ、お義父さん……」
すると、お義父さんがリビングに入ってきた。黒崎達はいなかった。まだ書斎で話をしているそうだ。込み入ったことを話しているのだろう。だから、何を話しているのかは聞いてはいけないと思った。
「夏樹。心配しなくても、明るい話題を話している。バーテルスビスケット会社との合併の話だが、よりよい物になるだろう。合併しないかもしれない。今ある商品を発売中止にすること無く、道を探っている」
「そうなんだね。エミリアさん、大丈夫になった?」
「彼女なら大丈夫だ。仕事の話になると気を取り直した。何を書いているんだ?」
「これなんだけど……」
黒崎にもそうだが、お父さんにも正直に話すことにしている。今書いているのは亡くなった子供のためのレクイエムだと説明した。しかし、身近にそういうことになった人が居なくて、本で読んだ知識だけで歌詞を書いてしまうことになりそうだと話した。
「拓海のことを話してあげようか?」
「悪いよ。だから、お義父さんには聞けないって思ったんだ」
「それなら、先祖の話をしてあげよう。この間、話題に出た人達だ。秀悟さんとアンリ君の話だ。忠明から聞いてある。当時は子供の頃に亡くなる家族が多くて、アンリ君が悲しみに暮れて、詩を書いていたそうだ」
「そうなんだね!それは保管してあるの?」
「ある。取ってこよう。書斎に移動させてある」
そう言って、お義父さんが立ち上がったから、俺も行くことにした。しかし、お義父さんは俺にはここにいて良いというから、素直にそうした。そして、お義父さんがリビングを出て行く後ろ姿を眺めた。
「うーーん。これはお義父さんに聞かないと分からない話だなあ」
この歌詞の主人公を、この家の人にしたいと思った。親より早く亡くなるケースはたくさんあったと聞いている。先祖のうちの誰かとか、お義父さんが知っている人だとかをモデルにしたい。
すると、拓海さんの祭壇が視界に入った。そうだった。ここに拓海さんが居る。親より早く亡くなった人だ。そこで、とてもお義父さんには聞けないと思った。当時の悲しみを思い出させてしまう。俺はなんて軽率だったのだろう。
「俺、どうしたのかな。歌詞を書こうとすると気持ちが止まらないんだ。ううん。言い訳はダメだ」
歌詞を書こうとすると気持ちが走りすぎてしまう。寝食を忘れて書いてしまい、朝から書いて気がついたら夕方になっていることがある。俺達の家にいるときは家事があるから手を止める機会があるが、この家にいると何もしなくて良いから、つい、時間を忘れてしまう。
こうして没頭できる環境はありがたいことだ。しかし、周りから心配されている。きちんと食べて、適度に動き、毎日を送る。それが俺にとって大事なことだからだ。食べないとフラフラして倒れてしまう。小食でもそうなる。心臓にだって悪いと思う。
「えーーっと、“母が泣いて”……、“父が探しに行く”……。探しに行くのはお母さんの方にしようかな?」
歌詞の物語としては、大昔の話だ。10歳の子が村に戻らなくなり、死んでしまったのだと言って、村人達が泣いてしまう。その子の両親は夜になると彼のことを探しに行こうとする。その彼へのレクイエムだ。
つけっぱなしにしているテレビではテレビショッピングの番組が流れている。そこで、情報番組にチャンネルを変えた。俺はなぜかこのチャンネルを付けているときに歌詞を思いつくからだ。すると、天気予報をやっていた。
「……都内では35.6度を記録しました」
今日の気温を聞いて驚いた。暑いはずだ。庭の大学生達はどうなっているだろうか。もう片付けをしていると聞いている。一貴さんはずっと外に出ている。黒崎はお義父さんとエミリアさんとで話をしていて、アレクシスさんは少し寝ている。ユーリーは仕事だ。2時間やると言っていた。会議があるのだという。
「夏樹。進まないのかい?」
「あ、お義父さん……」
すると、お義父さんがリビングに入ってきた。黒崎達はいなかった。まだ書斎で話をしているそうだ。込み入ったことを話しているのだろう。だから、何を話しているのかは聞いてはいけないと思った。
「夏樹。心配しなくても、明るい話題を話している。バーテルスビスケット会社との合併の話だが、よりよい物になるだろう。合併しないかもしれない。今ある商品を発売中止にすること無く、道を探っている」
「そうなんだね。エミリアさん、大丈夫になった?」
「彼女なら大丈夫だ。仕事の話になると気を取り直した。何を書いているんだ?」
「これなんだけど……」
黒崎にもそうだが、お父さんにも正直に話すことにしている。今書いているのは亡くなった子供のためのレクイエムだと説明した。しかし、身近にそういうことになった人が居なくて、本で読んだ知識だけで歌詞を書いてしまうことになりそうだと話した。
「拓海のことを話してあげようか?」
「悪いよ。だから、お義父さんには聞けないって思ったんだ」
「それなら、先祖の話をしてあげよう。この間、話題に出た人達だ。秀悟さんとアンリ君の話だ。忠明から聞いてある。当時は子供の頃に亡くなる家族が多くて、アンリ君が悲しみに暮れて、詩を書いていたそうだ」
「そうなんだね!それは保管してあるの?」
「ある。取ってこよう。書斎に移動させてある」
そう言って、お義父さんが立ち上がったから、俺も行くことにした。しかし、お義父さんは俺にはここにいて良いというから、素直にそうした。そして、お義父さんがリビングを出て行く後ろ姿を眺めた。
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