784 / 938
22-51
しおりを挟む
午前1時。
目が覚めると、まだ夜中だった。ほんの2時間前に寝付いたのに、もう目が覚めてしまった。ここは俺達の家だ。寝室のベッドの上で寝ていた。晩ご飯をお義父さんの家で食べた後、帰ってきた。最近はお義父さんの家で泊まることが増えたから、一瞬、ここがどっちの家だったかと考えることがある。
隣を見ると、黒崎がいなかった。書斎にいるのだろう。アンとアンドリューがそれぞれのベッドで寝て、寝息を立てている。
「二人とも、よく寝ているなあ……」
2匹の寝顔を見て、ホッとした心持ちになった。動物を見ると癒やしになる。それは黒崎も言っていた。帰ってきたときにアンが迎えに出てきてくれて、アンドリューが部屋の中で起き上がってこっちを見ているのを見ると、帰ってきた甲斐があるというものだと言っていた。
「アン、アンドリュー。いけない。名前を言わない方が良いな……」
彼らは耳が良いから、自分の名前をつぶやかれたと気がついて目を覚ましてしまう。そこで、寝返りを打って、寝転がり直した。しかし、目が冴えていて寝付けそうも無い。そこで、お茶でも飲んでくることにした。黒崎にも煎れてあげようと思った。
ギシ。そっとベッドから抜けた出した。そして、アン達に気づかれないように寝室のドアを開けて廊下に出た。すると、昼間よりもずっと気温は低いが、熱気が襲ってきた。
「暑いなあ。冷たい紅茶を入れてこようっと。黒崎さん、何を飲むかな?」
「夏樹か?」
「そうだよ。俺だよ」
書斎に近づいたときに、中から声を掛けられた。もちろん、黒崎の声だ。廊下にいるのは俺で間違いない。そこで、部屋のドアを開けて中を覗いた。すると、黒崎が片手で頭を掻いていた。寝ていたのだろうか。
「黒崎さん。寝ていたの?」
「ああ。少しだ。いつの間にか寝ていたようだ」
「この間の夕食会で飲みすぎていただろ。疲れが出てきたんじゃ無いの?」
「いや、楽しかったから、そんなことはない」
「そんなことはあるよ。エミリアさんが気にしていたよ。アレクシスさんもだよ。自分達に気を遣って、たくさんお酒を飲んだんじゃないかって言っていたんだ。そうなの?」
「楽しかったからだ。たしかに、飲み過ぎかもしれないな」
「あ、認めたね~。良い子、良い子……」
部屋の中に入っていって、黒崎の頭を撫でてやった。そして、冷たい紅茶を入れてくるが、飲むかと聞いた。その答えは飲みたいだった。机の上を見ると、水の入ったタンブラーが置かれていた。冷えた水が入っているのだろう。
「冷えているやつだよね?温かい物を入れてあげようか?」
「冷たい物でいい。ペットボトルから出すだけだ。手間が無い」
「あんたの味覚が普通になって良かったよ。夜中にアイスティーを入れる身になってくれて嬉しいよ」
「お前に影響された。楽なのはいい。しかし、レストランではきちんと入れた物を出したい」
「そうだね」
黒崎は今年に入るまで、ペットボトルの紅茶を飲まなかった。とても美味しいと思うのにだ。拓海さんとの紅茶の思い出があるそうで、懐かしいし忘れたくないから、紅茶を飲むときは茶葉から入れた物を飲みたがっていた。しかし、俺が便利だというから、俺に付き合ってくれるようになった。
「行ってくるよ」
「待て。聞いておきたいことがある」
「どうしたの?」
「正木さんのことだ。黙っていてすまなかった」
「いいよ。和久さんが内緒にしてくれって言っていたんだって知っているからさ。それにしても、世間は狭いね」
「晴海兄さんから聞いた。苦情を言われたそうだな。もちろん、お前に対してじゃないが。親父とこの家への恨み言だ」
「うん。はっきり言っていたよ。でも、仕方の無いことだと思うんだ。彼女が何人もいるなんて、どこかで恨んでいる人がいてもおかしくないよ」
「親父のことを嫌わないでやってくれ……。許してやってくれ……」
「黒崎さん……。分かっているよ。当時のお義父さんは今とは違う価値観だったんだ。今なって蒔いた種を刈り取っているんだ」
黒崎が優しいことを言ったから嬉しくなったし、胸も痛くなった。黒崎こそ、お義父さんに恋人が何人もいる状況を嫌っていたはずだ。それなのに、許してやってくれなんて言えるなんて、すごい進歩だと思った。
目が覚めると、まだ夜中だった。ほんの2時間前に寝付いたのに、もう目が覚めてしまった。ここは俺達の家だ。寝室のベッドの上で寝ていた。晩ご飯をお義父さんの家で食べた後、帰ってきた。最近はお義父さんの家で泊まることが増えたから、一瞬、ここがどっちの家だったかと考えることがある。
隣を見ると、黒崎がいなかった。書斎にいるのだろう。アンとアンドリューがそれぞれのベッドで寝て、寝息を立てている。
「二人とも、よく寝ているなあ……」
2匹の寝顔を見て、ホッとした心持ちになった。動物を見ると癒やしになる。それは黒崎も言っていた。帰ってきたときにアンが迎えに出てきてくれて、アンドリューが部屋の中で起き上がってこっちを見ているのを見ると、帰ってきた甲斐があるというものだと言っていた。
「アン、アンドリュー。いけない。名前を言わない方が良いな……」
彼らは耳が良いから、自分の名前をつぶやかれたと気がついて目を覚ましてしまう。そこで、寝返りを打って、寝転がり直した。しかし、目が冴えていて寝付けそうも無い。そこで、お茶でも飲んでくることにした。黒崎にも煎れてあげようと思った。
ギシ。そっとベッドから抜けた出した。そして、アン達に気づかれないように寝室のドアを開けて廊下に出た。すると、昼間よりもずっと気温は低いが、熱気が襲ってきた。
「暑いなあ。冷たい紅茶を入れてこようっと。黒崎さん、何を飲むかな?」
「夏樹か?」
「そうだよ。俺だよ」
書斎に近づいたときに、中から声を掛けられた。もちろん、黒崎の声だ。廊下にいるのは俺で間違いない。そこで、部屋のドアを開けて中を覗いた。すると、黒崎が片手で頭を掻いていた。寝ていたのだろうか。
「黒崎さん。寝ていたの?」
「ああ。少しだ。いつの間にか寝ていたようだ」
「この間の夕食会で飲みすぎていただろ。疲れが出てきたんじゃ無いの?」
「いや、楽しかったから、そんなことはない」
「そんなことはあるよ。エミリアさんが気にしていたよ。アレクシスさんもだよ。自分達に気を遣って、たくさんお酒を飲んだんじゃないかって言っていたんだ。そうなの?」
「楽しかったからだ。たしかに、飲み過ぎかもしれないな」
「あ、認めたね~。良い子、良い子……」
部屋の中に入っていって、黒崎の頭を撫でてやった。そして、冷たい紅茶を入れてくるが、飲むかと聞いた。その答えは飲みたいだった。机の上を見ると、水の入ったタンブラーが置かれていた。冷えた水が入っているのだろう。
「冷えているやつだよね?温かい物を入れてあげようか?」
「冷たい物でいい。ペットボトルから出すだけだ。手間が無い」
「あんたの味覚が普通になって良かったよ。夜中にアイスティーを入れる身になってくれて嬉しいよ」
「お前に影響された。楽なのはいい。しかし、レストランではきちんと入れた物を出したい」
「そうだね」
黒崎は今年に入るまで、ペットボトルの紅茶を飲まなかった。とても美味しいと思うのにだ。拓海さんとの紅茶の思い出があるそうで、懐かしいし忘れたくないから、紅茶を飲むときは茶葉から入れた物を飲みたがっていた。しかし、俺が便利だというから、俺に付き合ってくれるようになった。
「行ってくるよ」
「待て。聞いておきたいことがある」
「どうしたの?」
「正木さんのことだ。黙っていてすまなかった」
「いいよ。和久さんが内緒にしてくれって言っていたんだって知っているからさ。それにしても、世間は狭いね」
「晴海兄さんから聞いた。苦情を言われたそうだな。もちろん、お前に対してじゃないが。親父とこの家への恨み言だ」
「うん。はっきり言っていたよ。でも、仕方の無いことだと思うんだ。彼女が何人もいるなんて、どこかで恨んでいる人がいてもおかしくないよ」
「親父のことを嫌わないでやってくれ……。許してやってくれ……」
「黒崎さん……。分かっているよ。当時のお義父さんは今とは違う価値観だったんだ。今なって蒔いた種を刈り取っているんだ」
黒崎が優しいことを言ったから嬉しくなったし、胸も痛くなった。黒崎こそ、お義父さんに恋人が何人もいる状況を嫌っていたはずだ。それなのに、許してやってくれなんて言えるなんて、すごい進歩だと思った。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる