青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
832 / 938

23-39

しおりを挟む
 リビングの中はクーラーが効いていて、寒いぐらいだった。黒崎がここに居たのだと分かる。体温が高いから暑がりであり、1人でいるときは設定温度が低い。しかし、俺と居るときは適温にしてくれる。俺が寒がりだからだ。昔とは違って、今は和らいではいる。

「黒崎さん。キンキンに冷えているね。アンもアンドリューも、これぐらいがいいのかな?伸び伸びしているよ」
「そうでもないぞ。26度設定だ」
「あ、ほんとだ。外が暑かったからかな。車の中もクーラーが効いていて涼しかったんだけど……」
「お前に言われるから、冷たくしていない」
「そんなことはないけど……」

 ふと、俺達の間に無言の時間が訪れた。さっき謝ったからもういいだろう。重ねて謝ることは無いと思う。風林さんの事情も聞いたことだし、解決になった。俺の前で楽しそうにするなと思った気持も消えた。大変なことになっていることも分かった。

「夏樹。どうしたんだ。黙っているのはお前らしくない」
「だって、俺達、さっきまで喧嘩中だったじゃん。俺が一人で怒っていたんだけど……。あんたが楽しそうに階段を上っていく姿にモヤモヤしたんだ。俺が支度をするときだよ」
「すまなかった。久しぶりにもめ事を聞いて気持が弾んだ」
「なんだよ、それ。風林さんにとっては辛いことだろ~。えい!」

 そう言って、黒崎の足を軽く蹴ってやった。これで俺達の日常が帰ってきたと思った。言われてみれば黒崎らしいことではある。もめ事を解決するのは得意な方だ。今回のことに適任だと思う。そして、それを面白がることもいつもどうりだ。

「それで、解決しそうなの?」
「今のままなら、相手が風林に飽きたら解決する。そうじゃなかったらいつまで経っても同じだ。警察沙汰にならないとも限らない」
「それ、危ないじゃん。刃物がでるかもしれないってこと?」
「いや、そういう類いじゃ無い。家まで押しかけていきそうだという意味だ。引っ越しのアザレアに仕事を依頼してくるそうだ。風林を指名して。それは断っているが、しつこくなってきたから、社長に相談するように勧めた。俺が言った方法を三通りさせてみたが、効果が無かった」
「そんなにしつこい相手なのかよ。前の会社って、岡田商事だったっけ。そこで社長にセクハラされて、断ったら左遷されたんだろ。最悪な人だよね」
「ああ。家から会社まで付けていったんだろう。今の会社を知っているんだからな。風林には引っ越せと言ってある」
「でも、引っ越し先まで付けてこられたら意味が無いよ」
「そのために、アザレアの社長に相談させる。敏腕社長だ。何かいい手があるだろう。それでダメなら俺が出て行く。黒崎製菓にも引き抜く」
「今の会社の社長を試すんだね」
「ああ。そうさせてもらう。くだらないとか言い出したら、会社を移るきっかけになる。こういう問題は消えて無くならない。どこにでもある問題だといえる。しかし、相談をしても、自分で解決しろと言われたり、関わり合いになりたくないという態度を取られたりする。黒崎製菓ではそういうことはしない」
「あんた、俺につきまとっていたじゃん。だから、贖罪でやっているの?」

 黒崎のことを頼りになると思ったものの、つい、嫌みが口から出てしまった。そこで、思った通りに頰をつねられてしまった。これが結構痛い。黒崎は笑っていなかった。だから、言い過ぎだと反省した。

「ごめんね。言い過ぎたよ。冗談が言える話じゃ無かったね」
「いや、構わない。俺も楽しんでいる。今回のことは岡田商事の社長にとっては痛手だ。弱みを見つけられて武器になった。普通はやらないことなんだがな。何を利用されるか分かったものじゃない」
「あんたを敵に回したような物だね」

 黒崎を敵に回すのは結構怖いことだと思う。黒崎ホールディングス時代はワンマン社長だと言われて、周囲から恐れられていた面もあったみたいだ。今は柔和になって、優しい人になっているが、以前の黒崎が消えたわけでは無いだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

処理中です...