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午前11時。
家を出たところだ。これからお義父さんの家にお邪魔する。すでに月島さん達が到着しており、ユーリーとくつろいでいるところだ。南波さんはあと30分後ぐらいに来るそうだ。キャンプの予定の場所は決めていて、日陰になっている場所だ。そこは冬もキャンプを張った場所であり、南波さんのお気に入りの場所だ。近くにはユーリーがいつもぶら下がっている木があるし、ベンチもある。
俺と黒崎はそこのそばを通りかかり、この間のユーリーのことを話した。彼が木にぶら下がって運動し、なぜか腰を痛めていたことを。
「どうしてだろうね。腕を怪我したなら分かるんだけど」
「腰をひねる運動をしていたそうだ。ぶら下がりながらだ」
「なるほどねえ。今朝は痛そうにしていなかったよ。あんまり続くようなら病院に行かないといけないね」
「行きたがらないだろう。病院嫌いだ」
「レントゲンを撮って貰った方が良いように思うけどねえ」
「アン、アンドリュー。お前達のことじゃないぞ」
「そっか。病院って言ったから、聞こえたんだね」
俺達の一歩先を歩いているアンが俺達に振り返った。そして、俺の腕に抱かれているアンドリューが鳴いた。彼らは病院が苦手であり、言葉だけで反応する。病院に連れて行ったときには、出入り口のところで逃げだそうとしてしまう。それを毎回なだめて病院の中に入り、診察を受けさせているわけだ。黒崎は無理に入らせたくないというが、そういうわけにはいかない。俺がしっかりと抱いて連れて入り、中に入ったときには諦めている。
「2人とも。大丈夫だよ。病院はしばらく無いよ」
「定期検診の日は来月じゃ無かったか?」
「再来月だよ。2匹同時だから、あんたも一緒に来てね」
「ああ、行く。ん?やっぱり病院だと思っているようだ」
「話しているからだね。大丈夫だよ~。もう話さないよ~」
俺が2匹に向かってそう声を掛けると、彼らが挙動不審になった。連れて行かれたくないのだろう。大人しくなってちょうどいいと思った。彼らは一緒に遊ぶようになり、家の中で走り回ることがよくある。しかし、遊ぶおもちゃが違うし遊び方が違うから、わりとすぐに一人遊びになる。
今日はお客さんが来るから、アンが喜ぶと思う。遊んでくれる人たちだからだ。アンドリューだって猫じゃらしをパタパタされたら、人見知りが飛んでいってしまう。もうすっかりうちの家にもお義父さんの家にも慣れて、グーグーと寝るようになった。子猫の時は怖がりで、箱の中にしかいなかったのに、今ではどこでも行けるようにもなった。
すると、池のそばにある噴水の近くまで来たことに気がついた。話しているとあっという間だ。近くにはお義父さんの家があり、ここからリビングの中がテラス窓越しに見えた。ユーリーがいる。月島さんたちもいる。みんなでお茶を飲んでいるのだろう。
さっそく俺はテラス窓越しに手を振った。すると、月島さんが一番先に気がついて、手を振り返してくれた。ユーリーは俺達に背を向けているから気がつかないようだ。立っており、腰をひねる動作をしている。痛いのだと話しているのだろうか。
「ユーリー。痛いならやめておいた方が良いのに……」
「入ろう。ここは暑い」
「そうだね。ん?アンドリュー、どうしたんだよ?俺の腕に齧り付くようにして……。猫が居るの?」
「居ないようだ。霊でも見えているんじゃないのか」
「ブルブル。やめろよ~。あんたの隣に丑の刻参りの霊がいたことを思い出すじゃん」
もしかして、アンドリューは何か見えているのだろうか。そういえば、ルークの姿を見たのかも知れないと思った。しかし、ヨーク達がそばに居ても怖がらないから、平気なのだとは思う。アンドリューが怖がるのは猫だ。外にいる猫を怖がる。うちの庭にパンダ柄の猫が訪れるが、その子を見ると、慌てて家の中に入ってくる。
「アンドリュー。怖いのかよ?俺も怖いよ。オバケは嫌だよ」
「アンが先に行っているぞ」
「暑いからだね。アンも分かっているんだよ。家の中が涼しいって……」
アンが俺達より先に玄関の方に行ってしまった。そして、俺達の方を振り返り、尻尾をパタパタと振った。早く入ろうと言っているのか、ドアを開けてくれと言っているのか。アンの顔が心なしか笑顔に見えて、お客さんが来ているのだと分かったと思った。
家を出たところだ。これからお義父さんの家にお邪魔する。すでに月島さん達が到着しており、ユーリーとくつろいでいるところだ。南波さんはあと30分後ぐらいに来るそうだ。キャンプの予定の場所は決めていて、日陰になっている場所だ。そこは冬もキャンプを張った場所であり、南波さんのお気に入りの場所だ。近くにはユーリーがいつもぶら下がっている木があるし、ベンチもある。
俺と黒崎はそこのそばを通りかかり、この間のユーリーのことを話した。彼が木にぶら下がって運動し、なぜか腰を痛めていたことを。
「どうしてだろうね。腕を怪我したなら分かるんだけど」
「腰をひねる運動をしていたそうだ。ぶら下がりながらだ」
「なるほどねえ。今朝は痛そうにしていなかったよ。あんまり続くようなら病院に行かないといけないね」
「行きたがらないだろう。病院嫌いだ」
「レントゲンを撮って貰った方が良いように思うけどねえ」
「アン、アンドリュー。お前達のことじゃないぞ」
「そっか。病院って言ったから、聞こえたんだね」
俺達の一歩先を歩いているアンが俺達に振り返った。そして、俺の腕に抱かれているアンドリューが鳴いた。彼らは病院が苦手であり、言葉だけで反応する。病院に連れて行ったときには、出入り口のところで逃げだそうとしてしまう。それを毎回なだめて病院の中に入り、診察を受けさせているわけだ。黒崎は無理に入らせたくないというが、そういうわけにはいかない。俺がしっかりと抱いて連れて入り、中に入ったときには諦めている。
「2人とも。大丈夫だよ。病院はしばらく無いよ」
「定期検診の日は来月じゃ無かったか?」
「再来月だよ。2匹同時だから、あんたも一緒に来てね」
「ああ、行く。ん?やっぱり病院だと思っているようだ」
「話しているからだね。大丈夫だよ~。もう話さないよ~」
俺が2匹に向かってそう声を掛けると、彼らが挙動不審になった。連れて行かれたくないのだろう。大人しくなってちょうどいいと思った。彼らは一緒に遊ぶようになり、家の中で走り回ることがよくある。しかし、遊ぶおもちゃが違うし遊び方が違うから、わりとすぐに一人遊びになる。
今日はお客さんが来るから、アンが喜ぶと思う。遊んでくれる人たちだからだ。アンドリューだって猫じゃらしをパタパタされたら、人見知りが飛んでいってしまう。もうすっかりうちの家にもお義父さんの家にも慣れて、グーグーと寝るようになった。子猫の時は怖がりで、箱の中にしかいなかったのに、今ではどこでも行けるようにもなった。
すると、池のそばにある噴水の近くまで来たことに気がついた。話しているとあっという間だ。近くにはお義父さんの家があり、ここからリビングの中がテラス窓越しに見えた。ユーリーがいる。月島さんたちもいる。みんなでお茶を飲んでいるのだろう。
さっそく俺はテラス窓越しに手を振った。すると、月島さんが一番先に気がついて、手を振り返してくれた。ユーリーは俺達に背を向けているから気がつかないようだ。立っており、腰をひねる動作をしている。痛いのだと話しているのだろうか。
「ユーリー。痛いならやめておいた方が良いのに……」
「入ろう。ここは暑い」
「そうだね。ん?アンドリュー、どうしたんだよ?俺の腕に齧り付くようにして……。猫が居るの?」
「居ないようだ。霊でも見えているんじゃないのか」
「ブルブル。やめろよ~。あんたの隣に丑の刻参りの霊がいたことを思い出すじゃん」
もしかして、アンドリューは何か見えているのだろうか。そういえば、ルークの姿を見たのかも知れないと思った。しかし、ヨーク達がそばに居ても怖がらないから、平気なのだとは思う。アンドリューが怖がるのは猫だ。外にいる猫を怖がる。うちの庭にパンダ柄の猫が訪れるが、その子を見ると、慌てて家の中に入ってくる。
「アンドリュー。怖いのかよ?俺も怖いよ。オバケは嫌だよ」
「アンが先に行っているぞ」
「暑いからだね。アンも分かっているんだよ。家の中が涼しいって……」
アンが俺達より先に玄関の方に行ってしまった。そして、俺達の方を振り返り、尻尾をパタパタと振った。早く入ろうと言っているのか、ドアを開けてくれと言っているのか。アンの顔が心なしか笑顔に見えて、お客さんが来ているのだと分かったと思った。
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