青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 月島さんがテントを持ち上げた後、南波さんが反対方向を支えた。そして、丸い屋根のテントが出来上がり、リビングになる部分も出来上がった。後は椅子を置くだけだ。月島さんがさっと動いて椅子を立てて、簡易テーブルも立てた。その手際の良さに、南波さんが声を上げた。

「すごいなあ!まるでいつもやっているみたいです!」
「ははは。その子に必死で食らいついていたから、少しでも良いところを見せたくて頑張って覚えたんだ。懐かしい思い出だよ」
「こうやって、サッと出来るところがすごいです」
「ありがとう。僕ばかり画面に映って良いのかな?」
「いいんですよ。みんな、月島さんのことを覚えているみたいです。みんな、覚えているよね?キシヤマ味噌の月島社長だよーーー。あ、反応があった。霊能者の社長だって……」
「ほんとだ。霊能者って連呼されてる……」

 番組のコメントを読むと、月島さんのことを覚えている人がたくさんコメントを書き込んでくれた。去年の冬にこうしてキャンプをしたときに、月島さんがやって来た。そこで、簡易的ではあるがと前置きした上で、月島さんによる心霊相談が受付された。そこで、相談のコメントを読んだ月島さんが霊視して答えるということが始まり、一時期は視聴者数が15000人を越えた。あれ以来、キシヤマ味噌の本社のメールアドレスに心霊相談のメールが入るようになったそうだ。そこで、マジでヤバイという相談は答えようと思っていたら、今のところは心配ないものばかりで、動いていないそうだ。

 そして、今日は久弥はいないの?と書かれた。それに対して南波さんが答えてくれた。今日は居ないのだと。そして、近日中に動画チャンネルが始まるからねとアナウンスしてくれた。久弥が自分のチャンネルを作った。月に1度、動画が更新される。すっかり声の調子が良くなり、以前とは少し違った感じの声で落ち着いた。喉の違和感は無くて、日常生活に支障が無いまでになっている。ファンとしてはまたステージに立って欲しいという声があったが、久弥としてはもう引退した身であり、バンドの後方支援をしていくとコメントしている。

 すると、南波さんがあるコメントを読み上げた。カップルですか?という質問だ。月島さんとのことを言っているのだろう。それには笑顔を浮かべた。

「付き合って30分だよ。今日からなんだ」
「ははは。嬉しいよ。ユリウス君。ごめんね」

 南波さんの発言と月島さんの切り返しにより、ユーリーの表情が曇った。二人の息の合い方に嫉妬しているのだろう。彼は思っていることを顔に出すから分かりやすい。もちろん、ポーカーフェイスもできる。しかし、普段は何でも正直で居ることをモットーにしているから、俺達にイジられてしまう。今もそうだ。黒崎からイジられて、拗ねている。

「ユーリー。元気を出せよ。何でも出来るあんたなのに、キャンプのことは知らないんだから仕方ないだろ。インドア派なんだから。部屋で本を読んでいるタイプだろ」
「僕もキャンプのことを覚えたい」
「嘘つくなよ。興味ないくせに」
「あはは。そうだよね。ユリウスさんって、興味ないもんね」

 こんなに南波さんのことが好きなユーリーだが、キャンプのことを覚えようとしない。付いていこうともしない。興味が無いからだ。つまらない顔をしてそばにいてもいけないだろうと言っていた。そういうところも正直だ。それに、南波さんの一人時間を邪魔してはいけないと思ったそうだ。時々、小瀬さんが遊びに行っているが、基本は一人だ。

「ユリウス君。そこに座ってみてくれ。一番見晴らしが良い場所に椅子を置いた」
「そうなのか……」
「ふうん。気遣いの達人ってやつだねえ」

 月島さんが置いた椅子は考え尽くされた位置にあるそうだ。そこにユーリーが座るように勧められて、悪い気はしないといった感じの顔を見せた。それには月島さんが怪しげな微笑みを見せて、南波さんがクスクスと笑った。すっかり蚊帳の外になっていた人が呼ばれて満足しているからだ。それには俺達も良かったねと言い、彼の機嫌を取るのも大変だと思った。
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