青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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24-29(夏樹視点)

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 午前0時。

 ほんの一時間前に寝たのに、もう目が覚めてしまった。今、お義父さんの家の客間で寝ている。すっかり俺が泊まる専用の部屋になっていて、何冊かの絵本が本棚に置いてある。そのうちの一冊がウサギが主人公の絵本だ。倉庫に入っていたウサギのヌイグルミが神様の手によって本物のウサギに変わって、野原を駆け回る話だ。今、その夢を見ていた。以前はよく見ていた夢だ。

「どうして今日見たのかな。俺、ストレスが溜まっているのかな。そんなことはないんだけど……」

 野原を駆け回るのは、俺流にいえば、そうなっていない現実を夢で果たしているということだ。以前は心臓の具合が良くなくて、庭も歩き回っていなかったが、今はそんなことは無い。検診の結果も良くて、この調子でいれば大丈夫だという安心感がある。

 ベッドから起き上がって、窓から外を見た。セキュリティーライトの灯りで庭木が照らされている。その中に南波さんのテントがそばにある庭木がある。ユズの木だ。今夜はわりと風があるようで、木の葉が揺れている。ユーリーは一緒にテントの中で寝ると言っていたが、南波さんに気を遣って家に戻ってきている。まさか手を出されないだろうかと警戒されていたからだ。それには俺は笑ってしまった。ユーリーがぎくっという顔をしたからだ。それもあって、彼は家に戻ってきて、今、自分の部屋で寝ている。

「油断も隙もない感じだなあ。すごく南波さんのことが好きなのは伝わってきたけど。黒崎さん、気を付けておけって言っていたなあ……」

 夜の黒崎からの電話の中で、ユーリーに釘を刺しておけというものがあった。何か起きたら南波さんに嫌われるぞというものだ。もちろん、俺はそう伝えておいた。他に黒崎と話した中で、向こうの様子の話があった。無事に志乃さんの実家に到着後、俺の父と志乃さんのお父さん、おばあさんとで話をしたそうだ。

 警察には捕まらずに済んだ志乃さんだったが、お母さんが騒ぎ立てたら、事情を聞かれるために警察署に連れて行かれるかも知れないという可能性があったそうだ。そうなると、予定通りにスイスに戻れなくなる。そこで、俺の父が同席の上で志乃さんがお母さんと話すことになった。お母さんが頷けばの話だ。それは明日の法事が終わった後であり、黒崎達も夕方まで向こうに居るから、何かあったら協力できる。もちろん、話し合いには志乃さんのお父さんも同席するそうだ。もしかしたら、お母さんは精神的に不安定なのかも知れないということも想定済みだ。

 ところで、志乃さんのお兄さんと奥さんはどうなっただろうかと思った。お母さんから助けを呼ばれたのは奥さんだった。そこで、志乃さんがお兄さんに電話を掛けるとうるさいと言われて、奥さんは出たそうだが、なんのこと?とか、ちょっと話しずらいとか言って、志乃さんと話そうとしなくて、話が出来なかったそうだ。そこで、2人は自分の味方をしてくれないと、志乃さんは思ったそうだ。そして、2人とも、お父さんはどうしている?と言い、お父さんのことだけは気にしていたそうだ。

「はあーーー。兄弟仲が悪いのは珍しいことじゃないって言うけど、あからさまだなあ。志乃さんのことはどうでもよくて、お父さんのことは気にするなんて、財産目当てだって言われてもおかしくないよ……」

 お義父さんがそう言っていた。財産を譲る意志を示すのは志乃さんのお父さんであり、発言力が強いから、お兄さんも奥さんも従っているのだろうという見解だった。お母さんの生活費のこともある。お母さんは専業主婦をしており、夫婦で貯めた貯金の中から、今の生活費を捻出している。お父さんと離婚した後のことで頼られたくないという考えもあるのかも知れないという話だった。そして、財産分与があるだろうから、お母さんにお金が入ったら、それを目当てにしているのかも知れないとも言っていた。
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