872 / 938
24-29(夏樹視点)
しおりを挟む
午前0時。
ほんの一時間前に寝たのに、もう目が覚めてしまった。今、お義父さんの家の客間で寝ている。すっかり俺が泊まる専用の部屋になっていて、何冊かの絵本が本棚に置いてある。そのうちの一冊がウサギが主人公の絵本だ。倉庫に入っていたウサギのヌイグルミが神様の手によって本物のウサギに変わって、野原を駆け回る話だ。今、その夢を見ていた。以前はよく見ていた夢だ。
「どうして今日見たのかな。俺、ストレスが溜まっているのかな。そんなことはないんだけど……」
野原を駆け回るのは、俺流にいえば、そうなっていない現実を夢で果たしているということだ。以前は心臓の具合が良くなくて、庭も歩き回っていなかったが、今はそんなことは無い。検診の結果も良くて、この調子でいれば大丈夫だという安心感がある。
ベッドから起き上がって、窓から外を見た。セキュリティーライトの灯りで庭木が照らされている。その中に南波さんのテントがそばにある庭木がある。ユズの木だ。今夜はわりと風があるようで、木の葉が揺れている。ユーリーは一緒にテントの中で寝ると言っていたが、南波さんに気を遣って家に戻ってきている。まさか手を出されないだろうかと警戒されていたからだ。それには俺は笑ってしまった。ユーリーがぎくっという顔をしたからだ。それもあって、彼は家に戻ってきて、今、自分の部屋で寝ている。
「油断も隙もない感じだなあ。すごく南波さんのことが好きなのは伝わってきたけど。黒崎さん、気を付けておけって言っていたなあ……」
夜の黒崎からの電話の中で、ユーリーに釘を刺しておけというものがあった。何か起きたら南波さんに嫌われるぞというものだ。もちろん、俺はそう伝えておいた。他に黒崎と話した中で、向こうの様子の話があった。無事に志乃さんの実家に到着後、俺の父と志乃さんのお父さん、おばあさんとで話をしたそうだ。
警察には捕まらずに済んだ志乃さんだったが、お母さんが騒ぎ立てたら、事情を聞かれるために警察署に連れて行かれるかも知れないという可能性があったそうだ。そうなると、予定通りにスイスに戻れなくなる。そこで、俺の父が同席の上で志乃さんがお母さんと話すことになった。お母さんが頷けばの話だ。それは明日の法事が終わった後であり、黒崎達も夕方まで向こうに居るから、何かあったら協力できる。もちろん、話し合いには志乃さんのお父さんも同席するそうだ。もしかしたら、お母さんは精神的に不安定なのかも知れないということも想定済みだ。
ところで、志乃さんのお兄さんと奥さんはどうなっただろうかと思った。お母さんから助けを呼ばれたのは奥さんだった。そこで、志乃さんがお兄さんに電話を掛けるとうるさいと言われて、奥さんは出たそうだが、なんのこと?とか、ちょっと話しずらいとか言って、志乃さんと話そうとしなくて、話が出来なかったそうだ。そこで、2人は自分の味方をしてくれないと、志乃さんは思ったそうだ。そして、2人とも、お父さんはどうしている?と言い、お父さんのことだけは気にしていたそうだ。
「はあーーー。兄弟仲が悪いのは珍しいことじゃないって言うけど、あからさまだなあ。志乃さんのことはどうでもよくて、お父さんのことは気にするなんて、財産目当てだって言われてもおかしくないよ……」
お義父さんがそう言っていた。財産を譲る意志を示すのは志乃さんのお父さんであり、発言力が強いから、お兄さんも奥さんも従っているのだろうという見解だった。お母さんの生活費のこともある。お母さんは専業主婦をしており、夫婦で貯めた貯金の中から、今の生活費を捻出している。お父さんと離婚した後のことで頼られたくないという考えもあるのかも知れないという話だった。そして、財産分与があるだろうから、お母さんにお金が入ったら、それを目当てにしているのかも知れないとも言っていた。
ほんの一時間前に寝たのに、もう目が覚めてしまった。今、お義父さんの家の客間で寝ている。すっかり俺が泊まる専用の部屋になっていて、何冊かの絵本が本棚に置いてある。そのうちの一冊がウサギが主人公の絵本だ。倉庫に入っていたウサギのヌイグルミが神様の手によって本物のウサギに変わって、野原を駆け回る話だ。今、その夢を見ていた。以前はよく見ていた夢だ。
「どうして今日見たのかな。俺、ストレスが溜まっているのかな。そんなことはないんだけど……」
野原を駆け回るのは、俺流にいえば、そうなっていない現実を夢で果たしているということだ。以前は心臓の具合が良くなくて、庭も歩き回っていなかったが、今はそんなことは無い。検診の結果も良くて、この調子でいれば大丈夫だという安心感がある。
ベッドから起き上がって、窓から外を見た。セキュリティーライトの灯りで庭木が照らされている。その中に南波さんのテントがそばにある庭木がある。ユズの木だ。今夜はわりと風があるようで、木の葉が揺れている。ユーリーは一緒にテントの中で寝ると言っていたが、南波さんに気を遣って家に戻ってきている。まさか手を出されないだろうかと警戒されていたからだ。それには俺は笑ってしまった。ユーリーがぎくっという顔をしたからだ。それもあって、彼は家に戻ってきて、今、自分の部屋で寝ている。
「油断も隙もない感じだなあ。すごく南波さんのことが好きなのは伝わってきたけど。黒崎さん、気を付けておけって言っていたなあ……」
夜の黒崎からの電話の中で、ユーリーに釘を刺しておけというものがあった。何か起きたら南波さんに嫌われるぞというものだ。もちろん、俺はそう伝えておいた。他に黒崎と話した中で、向こうの様子の話があった。無事に志乃さんの実家に到着後、俺の父と志乃さんのお父さん、おばあさんとで話をしたそうだ。
警察には捕まらずに済んだ志乃さんだったが、お母さんが騒ぎ立てたら、事情を聞かれるために警察署に連れて行かれるかも知れないという可能性があったそうだ。そうなると、予定通りにスイスに戻れなくなる。そこで、俺の父が同席の上で志乃さんがお母さんと話すことになった。お母さんが頷けばの話だ。それは明日の法事が終わった後であり、黒崎達も夕方まで向こうに居るから、何かあったら協力できる。もちろん、話し合いには志乃さんのお父さんも同席するそうだ。もしかしたら、お母さんは精神的に不安定なのかも知れないということも想定済みだ。
ところで、志乃さんのお兄さんと奥さんはどうなっただろうかと思った。お母さんから助けを呼ばれたのは奥さんだった。そこで、志乃さんがお兄さんに電話を掛けるとうるさいと言われて、奥さんは出たそうだが、なんのこと?とか、ちょっと話しずらいとか言って、志乃さんと話そうとしなくて、話が出来なかったそうだ。そこで、2人は自分の味方をしてくれないと、志乃さんは思ったそうだ。そして、2人とも、お父さんはどうしている?と言い、お父さんのことだけは気にしていたそうだ。
「はあーーー。兄弟仲が悪いのは珍しいことじゃないって言うけど、あからさまだなあ。志乃さんのことはどうでもよくて、お父さんのことは気にするなんて、財産目当てだって言われてもおかしくないよ……」
お義父さんがそう言っていた。財産を譲る意志を示すのは志乃さんのお父さんであり、発言力が強いから、お兄さんも奥さんも従っているのだろうという見解だった。お母さんの生活費のこともある。お母さんは専業主婦をしており、夫婦で貯めた貯金の中から、今の生活費を捻出している。お父さんと離婚した後のことで頼られたくないという考えもあるのかも知れないという話だった。そして、財産分与があるだろうから、お母さんにお金が入ったら、それを目当てにしているのかも知れないとも言っていた。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる