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すると、テレビではある有名人が母校に行き、講演を行うために帰省したという番組が流れ始めた。朝陽は明日は中学と高校時代の同級生達に会う。気が紛れるだろう。今も連絡をマメにしている子達だ。今回の帰省では心配を掛けているようだと言っていた。それはそうだろう。親が違うかも知れないという状況に立たされて、今まで親子だと思っていた関係が崩れるかも知れないからだ。
俺としては、朝陽の親が倉口でなくて良かったという気持ちがあった。あったというのは、今日の倉口の涙を見たこと、話を聞いたこと、朝陽の食べ物の好き嫌いがないことを振り返り、育ててもらった恩があると思ったからだ。朝陽も同じ事を考えただろうか。それとも、家族の団らんを見て、自分にはない物だと思ったのか。その可能性はある。しかし、ここに俺がいる。団らんとまではいかなくても、少々は温かい気持ちにさせられるだろう。そこで、俺は朝陽の肩を抱いた。
「朝陽。テレビを見ろ。面白そうな番組をやっているぞ。それと、伊吹君が会社で起きた出来事を話してくれるそうだ。黒い虫が出て失神したように倒れた社員の話だ。そこで、伊吹君が医者を呼んでこようと思って、ビルの下の階にあるクリニックに呼びに行ったそうだ。昼休み中だったが、いることは分かっていたそうだ。そしたら、新人の医者がいて、来てくれたそうだ。医者は優しいな?」
「うん……。患者さんのことを思っているんだと思うよ……」
「そうだな。お前はこうやって泣いているから、俺のように冷たいことは言わないだろう。……それで、どうしたんだ?どうして泣いているんだ?」
「俺、自分の父親は、倉口のお父さんだと思っているんだ。誰が父親でも。育ててくれたのは、お父さんなんだ。お父さんが肉じゃがを作ってくれていたんだ。でも、酔うと乱暴で、どうしようもない父親だって思っているよ。それでも、今日泣いているところを見たら、俺、俺……」
「そうか。誰が父親でも、か……」
「うん……。お父さんは黒崎のおじさんからお母さんのことを奪った人だって分かっているよ。お兄ちゃんだって泣いたんだ。でも、俺にとってはお父さんなんだ……」
「分かった。明日も会いに行くか?結果が分かって、親子じゃないということになっても、今までの思い出がある。それが消えて無くなるわけじゃない」
「うん……。あんな人だけど、俺、俺……」
朝陽が嗚咽を漏らした。そして、ここにいるメンバーがそれぞれ箸を進めて、なるべく明るく振る舞ってくれているように感じた。聡太郎がそばにあるマグロを食べ始めると、伊吹が醤油が垂れていると言って、テーブルの上を拭いた。そして、俺達に微笑みかけてきた。ティッシュならいくらでもありますと言った。そして、立ち上がった。
「濡れたタオルも必要ですね。冷たいタオルと温かいタオル、どっちがいいですか?んーーー、そうか、すごく泣いているから、両方必要ですね。すぐに用意します」
「すまない。お義母さん、俺がします」
「いいのよ。圭一君はそこにいて」
朝陽のためにタオルの追加が用意されようとしている。湯で湿らせたタオルと、冷水で湿らせたタオルだ。伊吹が洗面所からタオルを持ってきて、それを氷水で湿らせ始めた。義母は湯で湿らせ始めた。朝陽はまだ泣き止まない。感情が爆発したということだろう。そして、タオルが渡された。俺はまず、温かい方のタオルを朝陽に渡した。
「朝陽。顔を拭け」
「うん。お兄ちゃん。みなさん、ごめんなさい」
「いいんだよ」
義父が微笑んだ。そして、万理がそばにいるレモンを朝陽のそばに来させた。この子の顔を見てやってと言いながら。今日は美味しい物がたくさんあるから機嫌が良いのと言った。この家ではレモンに食べさせる食事は緩やかだと聞いている。そして、レモンが朝陽の身体の匂いを嗅ぎ始めた。すると、前足で朝陽の身体に触れて、じっと見つめ始めた。
「朝陽。レモンが見ているぞ。おやつを渡してやってくれ。これだ……」
「これ?カステラじゃないの?砂糖はダメなんじゃ……」
「犬用のおやつだ。……ああ、よく食べている。家族以外からは食べ物をもらわないのにな。お前のことを信頼しているんだろう」
「そっか。君、そうなんだね……。もう一つあるよ……」
レモンが朝陽の手からカステラのようなものを食べた。先ほど言ったとおり、レモンは警戒心がある犬だが、俺達にはそうでもないらしい。そして、レモンが朝陽の手を舐めて、義父が洗面所に行っておいでと勧めて、朝陽が立ち上がった。その顔は少々はスッキリした顔に見えたのだった。
俺としては、朝陽の親が倉口でなくて良かったという気持ちがあった。あったというのは、今日の倉口の涙を見たこと、話を聞いたこと、朝陽の食べ物の好き嫌いがないことを振り返り、育ててもらった恩があると思ったからだ。朝陽も同じ事を考えただろうか。それとも、家族の団らんを見て、自分にはない物だと思ったのか。その可能性はある。しかし、ここに俺がいる。団らんとまではいかなくても、少々は温かい気持ちにさせられるだろう。そこで、俺は朝陽の肩を抱いた。
「朝陽。テレビを見ろ。面白そうな番組をやっているぞ。それと、伊吹君が会社で起きた出来事を話してくれるそうだ。黒い虫が出て失神したように倒れた社員の話だ。そこで、伊吹君が医者を呼んでこようと思って、ビルの下の階にあるクリニックに呼びに行ったそうだ。昼休み中だったが、いることは分かっていたそうだ。そしたら、新人の医者がいて、来てくれたそうだ。医者は優しいな?」
「うん……。患者さんのことを思っているんだと思うよ……」
「そうだな。お前はこうやって泣いているから、俺のように冷たいことは言わないだろう。……それで、どうしたんだ?どうして泣いているんだ?」
「俺、自分の父親は、倉口のお父さんだと思っているんだ。誰が父親でも。育ててくれたのは、お父さんなんだ。お父さんが肉じゃがを作ってくれていたんだ。でも、酔うと乱暴で、どうしようもない父親だって思っているよ。それでも、今日泣いているところを見たら、俺、俺……」
「そうか。誰が父親でも、か……」
「うん……。お父さんは黒崎のおじさんからお母さんのことを奪った人だって分かっているよ。お兄ちゃんだって泣いたんだ。でも、俺にとってはお父さんなんだ……」
「分かった。明日も会いに行くか?結果が分かって、親子じゃないということになっても、今までの思い出がある。それが消えて無くなるわけじゃない」
「うん……。あんな人だけど、俺、俺……」
朝陽が嗚咽を漏らした。そして、ここにいるメンバーがそれぞれ箸を進めて、なるべく明るく振る舞ってくれているように感じた。聡太郎がそばにあるマグロを食べ始めると、伊吹が醤油が垂れていると言って、テーブルの上を拭いた。そして、俺達に微笑みかけてきた。ティッシュならいくらでもありますと言った。そして、立ち上がった。
「濡れたタオルも必要ですね。冷たいタオルと温かいタオル、どっちがいいですか?んーーー、そうか、すごく泣いているから、両方必要ですね。すぐに用意します」
「すまない。お義母さん、俺がします」
「いいのよ。圭一君はそこにいて」
朝陽のためにタオルの追加が用意されようとしている。湯で湿らせたタオルと、冷水で湿らせたタオルだ。伊吹が洗面所からタオルを持ってきて、それを氷水で湿らせ始めた。義母は湯で湿らせ始めた。朝陽はまだ泣き止まない。感情が爆発したということだろう。そして、タオルが渡された。俺はまず、温かい方のタオルを朝陽に渡した。
「朝陽。顔を拭け」
「うん。お兄ちゃん。みなさん、ごめんなさい」
「いいんだよ」
義父が微笑んだ。そして、万理がそばにいるレモンを朝陽のそばに来させた。この子の顔を見てやってと言いながら。今日は美味しい物がたくさんあるから機嫌が良いのと言った。この家ではレモンに食べさせる食事は緩やかだと聞いている。そして、レモンが朝陽の身体の匂いを嗅ぎ始めた。すると、前足で朝陽の身体に触れて、じっと見つめ始めた。
「朝陽。レモンが見ているぞ。おやつを渡してやってくれ。これだ……」
「これ?カステラじゃないの?砂糖はダメなんじゃ……」
「犬用のおやつだ。……ああ、よく食べている。家族以外からは食べ物をもらわないのにな。お前のことを信頼しているんだろう」
「そっか。君、そうなんだね……。もう一つあるよ……」
レモンが朝陽の手からカステラのようなものを食べた。先ほど言ったとおり、レモンは警戒心がある犬だが、俺達にはそうでもないらしい。そして、レモンが朝陽の手を舐めて、義父が洗面所に行っておいでと勧めて、朝陽が立ち上がった。その顔は少々はスッキリした顔に見えたのだった。
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