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午前10時。
朝のロビーには、冷房の風と一緒に、ほんのりとコーヒーの香りが漂っていた。エントランスの向こうには、真夏の日差しが待っているのだろう。9月になったのに、まだ蝉の鳴き声が街中を包んでいて、とても暑いのだと思う。
俺達はこれから二手に分かれて行動する。黒崎と朝陽は倉口さんのところに行く。俺と伊吹と聡太郎は田中先生に会いに行く。帰りの飛行機は今日の15時であり、そんなにゆっくりする時間はない。14時には空港に着いていないといけないから、お昼過ぎまでしか先生と話が出来ない。
飛行機の時間をもっと遅くにしたかったが、その便が満員であり、取ることが出来なかった。キャンセル待ちを狙っていっても良かったが、そんなに出るわけもなく、諦めて、午後の早い便を取った。それに、黒崎も俺も警察に会わないといけないから、早く帰っておいた方が良いと思っている。この間の泥棒かも知れない人が捕まっていて、それは別件での逮捕であり、まだ自供をしてないが、警察が俺達の家に訪ねてきて、もう一度話を聞きたいということだった。
「黒崎さん。朝陽。今日も晴れだから良かったね。雨より良いよ」
「そうだな。雨の方が涼しいとは言えるが……」
黒崎が電話を終えて、俺の方を見た。お義父さんと話していたようだ。そこで、向こうに何も無いかどうか聞くと、いつも通りだという答えが返ってきた。アンもアンドリューも元気にしているそうだ。しかし、俺がいないことで、二匹が少し落ち着かないようだとも言っていたという。黒崎は帰りが遅くなることも出張もあるから家を留守にするのは珍しいことではない。しかし、俺の場合は家にいるから、いないことが珍しい。そして、二匹がそわそわしているし、寝付きが悪いようだという話も聞き、愛おしさが込み上がってきた。
「黒崎さん。早く帰らないといけないね。あ、お兄ちゃん。聡太郎君も……」
すると、伊吹達がロビーに姿を見せた。さっき朝食会場のレストランで会ったばかりだが、なんだか長い間会っていないような気がして、懐かしいと思ってしまった。こんなことを思うのは、これから朝陽達が倉口さんに会いに行くから、心配になっているからだと思う。せっかく朝陽が倉口さんのことをお父さんだと言っているのに、その倉口さんが朝陽のことを傷つけないかと心配だ。お酒に酔っていたら乱暴になるから、何か起きやしないかとヒヤヒヤしている。俺も一緒に居たいぐらいだが、黒崎に任せた。
伊吹達が俺達のそばに来た。みんなラフな格好をしている。いつもスーツ姿の黒崎もTシャツ姿だ。こっちでの仕事の繋がりの人に会うと言っていたが、その人達はかしこまった人ではなく、遠慮がないそうだ。伊吹達は頻繁にこっちに戻ってきているから、田中先生以外に会う人が居なくて、俺に付いてきてくれる。
すると、黒崎が俺の頭を撫でた。行って来ると良いながら。そして、俺のことを伊吹達の方に促した。伊吹は任せて下さいと言いながら、微笑んだ。
「じゃあ、行ってくるね」
朝陽が俺の方を向いた。その笑顔は、どこか少し無理をしているようにも見えた。そこで、昨日の夜、廊下の自販機前で見せたあの揺れる瞳が頭をよぎった。
「うん。気をつけて。倉口さん、ちゃんと話してくれるといいね」
「うん……。お兄ちゃんが一緒だから大丈夫だよ」
そう言いながらも、握りしめた手がほんの少しだけ震えていた。俺はそれに気づいたが、何も言わなかった。
「……夏樹」
「ん?」
「昨日、話してくれてありがとう。ああいうの、なんか久しぶりだった」
「俺も。……行ってらっしゃい」
「うん」
朝陽が小さく頷いて、黒崎と一緒にエントランスに向かった。すると、スタッフ達が2人のことをタクシーに案内し、タクシーに乗り込んだ。そして、発進した。その時、朝陽が俺達に向かって軽く手を振っていた。それに対して俺も手を振り、見えなくなるまで見送った。
朝のロビーには、冷房の風と一緒に、ほんのりとコーヒーの香りが漂っていた。エントランスの向こうには、真夏の日差しが待っているのだろう。9月になったのに、まだ蝉の鳴き声が街中を包んでいて、とても暑いのだと思う。
俺達はこれから二手に分かれて行動する。黒崎と朝陽は倉口さんのところに行く。俺と伊吹と聡太郎は田中先生に会いに行く。帰りの飛行機は今日の15時であり、そんなにゆっくりする時間はない。14時には空港に着いていないといけないから、お昼過ぎまでしか先生と話が出来ない。
飛行機の時間をもっと遅くにしたかったが、その便が満員であり、取ることが出来なかった。キャンセル待ちを狙っていっても良かったが、そんなに出るわけもなく、諦めて、午後の早い便を取った。それに、黒崎も俺も警察に会わないといけないから、早く帰っておいた方が良いと思っている。この間の泥棒かも知れない人が捕まっていて、それは別件での逮捕であり、まだ自供をしてないが、警察が俺達の家に訪ねてきて、もう一度話を聞きたいということだった。
「黒崎さん。朝陽。今日も晴れだから良かったね。雨より良いよ」
「そうだな。雨の方が涼しいとは言えるが……」
黒崎が電話を終えて、俺の方を見た。お義父さんと話していたようだ。そこで、向こうに何も無いかどうか聞くと、いつも通りだという答えが返ってきた。アンもアンドリューも元気にしているそうだ。しかし、俺がいないことで、二匹が少し落ち着かないようだとも言っていたという。黒崎は帰りが遅くなることも出張もあるから家を留守にするのは珍しいことではない。しかし、俺の場合は家にいるから、いないことが珍しい。そして、二匹がそわそわしているし、寝付きが悪いようだという話も聞き、愛おしさが込み上がってきた。
「黒崎さん。早く帰らないといけないね。あ、お兄ちゃん。聡太郎君も……」
すると、伊吹達がロビーに姿を見せた。さっき朝食会場のレストランで会ったばかりだが、なんだか長い間会っていないような気がして、懐かしいと思ってしまった。こんなことを思うのは、これから朝陽達が倉口さんに会いに行くから、心配になっているからだと思う。せっかく朝陽が倉口さんのことをお父さんだと言っているのに、その倉口さんが朝陽のことを傷つけないかと心配だ。お酒に酔っていたら乱暴になるから、何か起きやしないかとヒヤヒヤしている。俺も一緒に居たいぐらいだが、黒崎に任せた。
伊吹達が俺達のそばに来た。みんなラフな格好をしている。いつもスーツ姿の黒崎もTシャツ姿だ。こっちでの仕事の繋がりの人に会うと言っていたが、その人達はかしこまった人ではなく、遠慮がないそうだ。伊吹達は頻繁にこっちに戻ってきているから、田中先生以外に会う人が居なくて、俺に付いてきてくれる。
すると、黒崎が俺の頭を撫でた。行って来ると良いながら。そして、俺のことを伊吹達の方に促した。伊吹は任せて下さいと言いながら、微笑んだ。
「じゃあ、行ってくるね」
朝陽が俺の方を向いた。その笑顔は、どこか少し無理をしているようにも見えた。そこで、昨日の夜、廊下の自販機前で見せたあの揺れる瞳が頭をよぎった。
「うん。気をつけて。倉口さん、ちゃんと話してくれるといいね」
「うん……。お兄ちゃんが一緒だから大丈夫だよ」
そう言いながらも、握りしめた手がほんの少しだけ震えていた。俺はそれに気づいたが、何も言わなかった。
「……夏樹」
「ん?」
「昨日、話してくれてありがとう。ああいうの、なんか久しぶりだった」
「俺も。……行ってらっしゃい」
「うん」
朝陽が小さく頷いて、黒崎と一緒にエントランスに向かった。すると、スタッフ達が2人のことをタクシーに案内し、タクシーに乗り込んだ。そして、発進した。その時、朝陽が俺達に向かって軽く手を振っていた。それに対して俺も手を振り、見えなくなるまで見送った。
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