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タクシーが夏の日差しを浴びて、白く輝いていた。外は光に満ちていて、暑さを想像させた。俺はエントランスに立ち、タクシーがいなくなった後も立ち続けた。身体がじんじんと痺れている。
「……行ったね」
聡太郎が隣でつぶやいた。そして、俺たちはロビーに戻った。真夏の陽射しが、ホテルの大きなガラスに反射して、ロビーの床に光の模様を描いている。蝉の声が、アスファルトの照り返しに混ざって響いていた。
黒崎がついているから大丈夫。そう頭では分かっているのに、心はどうしても落ち着かない。倉口さんのことは、話に聞くだけでも複雑な人だと思っていた。今日は朝陽に何を言うのか、それが傷になるのか、救いになるのか、誰にも分からない。
「夏樹、行こうか」
伊吹の声で我に返った。そうだ。俺たちは俺たちの予定がある。田中先生が待っている。先生に会うのは久しぶりだ。いつもコンサートの控え室まで会いに来てくれていたから、たまにはこっちから会いに行かないといけないと思っていた。伊吹と聡太郎にとっても、きっと懐かしい再会になるはずだ。
もう一度ロビーを出ると、熱気が一気に肌にまとわりついた。まるで温い水の中を歩いているような空気だ。額にうっすら汗が滲み、Tシャツの背中がすぐに湿りそうになった。すると、伊吹が腕時計を見ながら言った。
「この時間だと、先生が言ってたカフェは混み始めているかもな」
「そうだね。でも、予約してくれてるって言ってたよ」
「さすが先生。気が利くねーー。伊吹とは違うわけだよ」
聡太郎が笑った。その笑顔が少し和ませてくれた。そして、俺たちもエントランスの車寄せに停まっているタクシーに乗り込んだ。窓の外では、強い陽射しに照らされた街路樹が揺れている。その光景を見つめている間に、伊吹が運転手に行き先を告げた。そして、車が発進した。
「夏樹。田中先生に渡すものはこれでいいのか?」
「うん。この間の心霊番組のナレーションの舞台裏動画集。これだけでいいってさ」
俺は伊吹に先生へのお土産を見せた。伊吹は何か買ってくれば良かったと言っている。しかし、先生の方はお菓子よりも顔が見たいと言ってくれたから、伊吹達を連れていくのがお土産になると思った。そして、信号待ちの間に、バッグの中のスマホを見た。黒崎からのメッセージはまだ来ていない。
(朝陽、落ち着いているかな……)
そう思いながら、窓の外を眺めた。ガラス越しに流れる夏の景色はどこか遠く見えて、現実感が薄い。しかし、その遠さの中に朝陽がいると思うと、どうしても胸がざわつく。そんなことを考えていると、伊吹が俺の方を見た。
「お前、心ここにあらずって顔しているぞ」
「そんなことないよ」
「嘘つけ。分かりやすいからなーー。お前は。昔から」
「そう?」
俺が小さく笑うと、聡太郎も笑った。
「でも、そういうところが夏樹君のいいところでもあるんだよね。人のことを放っておけない子だよね」
「……それ、褒められてるのか分からないけど」
「褒めているよ」
聡太郎が柔らかく笑った。すると、タクシーは市街地を抜け、静かな通りへと入っていった。ビルの合間に広がる青空が眩しい。蝉の声が一瞬遠のいたかと思うと、次の瞬間、また別の木から激しく鳴き声が響いてくる。夏はまだ終わる気配を見せない。そこで、窓の外を見つめながら、俺はふと口を開いた。
「……朝陽、ちゃんと話せるかな」
「黒崎さんがいるなら大丈夫だろう。それに、あの子は思ってるより強いぞ。お前が思ってる以上にな」
すると、タクシーがカフェの前で止まった。木の看板と緑のテントが目印の、そこそこ大きな店だ。ガラスの向こうには、涼しげな観葉植物と、奥の席に座る年配の男性の姿が見えた。田中先生だ。
「行こう」
伊吹が先に降り、聡太郎が続いた。俺も深呼吸をして外に出た。すると、焼けるような陽射しが一瞬、肌を刺した。その光の強さの中で、黒崎達が乗って行ったタクシーの影が頭によぎった。
「夏樹?」
「あ、うん。行こう」
俺は微笑んで、カフェのドアを押した。すると、涼しい空気とコーヒーの香りが迎えてくれた。店の奥では田中先生が手を振ってくれていた。
「……行ったね」
聡太郎が隣でつぶやいた。そして、俺たちはロビーに戻った。真夏の陽射しが、ホテルの大きなガラスに反射して、ロビーの床に光の模様を描いている。蝉の声が、アスファルトの照り返しに混ざって響いていた。
黒崎がついているから大丈夫。そう頭では分かっているのに、心はどうしても落ち着かない。倉口さんのことは、話に聞くだけでも複雑な人だと思っていた。今日は朝陽に何を言うのか、それが傷になるのか、救いになるのか、誰にも分からない。
「夏樹、行こうか」
伊吹の声で我に返った。そうだ。俺たちは俺たちの予定がある。田中先生が待っている。先生に会うのは久しぶりだ。いつもコンサートの控え室まで会いに来てくれていたから、たまにはこっちから会いに行かないといけないと思っていた。伊吹と聡太郎にとっても、きっと懐かしい再会になるはずだ。
もう一度ロビーを出ると、熱気が一気に肌にまとわりついた。まるで温い水の中を歩いているような空気だ。額にうっすら汗が滲み、Tシャツの背中がすぐに湿りそうになった。すると、伊吹が腕時計を見ながら言った。
「この時間だと、先生が言ってたカフェは混み始めているかもな」
「そうだね。でも、予約してくれてるって言ってたよ」
「さすが先生。気が利くねーー。伊吹とは違うわけだよ」
聡太郎が笑った。その笑顔が少し和ませてくれた。そして、俺たちもエントランスの車寄せに停まっているタクシーに乗り込んだ。窓の外では、強い陽射しに照らされた街路樹が揺れている。その光景を見つめている間に、伊吹が運転手に行き先を告げた。そして、車が発進した。
「夏樹。田中先生に渡すものはこれでいいのか?」
「うん。この間の心霊番組のナレーションの舞台裏動画集。これだけでいいってさ」
俺は伊吹に先生へのお土産を見せた。伊吹は何か買ってくれば良かったと言っている。しかし、先生の方はお菓子よりも顔が見たいと言ってくれたから、伊吹達を連れていくのがお土産になると思った。そして、信号待ちの間に、バッグの中のスマホを見た。黒崎からのメッセージはまだ来ていない。
(朝陽、落ち着いているかな……)
そう思いながら、窓の外を眺めた。ガラス越しに流れる夏の景色はどこか遠く見えて、現実感が薄い。しかし、その遠さの中に朝陽がいると思うと、どうしても胸がざわつく。そんなことを考えていると、伊吹が俺の方を見た。
「お前、心ここにあらずって顔しているぞ」
「そんなことないよ」
「嘘つけ。分かりやすいからなーー。お前は。昔から」
「そう?」
俺が小さく笑うと、聡太郎も笑った。
「でも、そういうところが夏樹君のいいところでもあるんだよね。人のことを放っておけない子だよね」
「……それ、褒められてるのか分からないけど」
「褒めているよ」
聡太郎が柔らかく笑った。すると、タクシーは市街地を抜け、静かな通りへと入っていった。ビルの合間に広がる青空が眩しい。蝉の声が一瞬遠のいたかと思うと、次の瞬間、また別の木から激しく鳴き声が響いてくる。夏はまだ終わる気配を見せない。そこで、窓の外を見つめながら、俺はふと口を開いた。
「……朝陽、ちゃんと話せるかな」
「黒崎さんがいるなら大丈夫だろう。それに、あの子は思ってるより強いぞ。お前が思ってる以上にな」
すると、タクシーがカフェの前で止まった。木の看板と緑のテントが目印の、そこそこ大きな店だ。ガラスの向こうには、涼しげな観葉植物と、奥の席に座る年配の男性の姿が見えた。田中先生だ。
「行こう」
伊吹が先に降り、聡太郎が続いた。俺も深呼吸をして外に出た。すると、焼けるような陽射しが一瞬、肌を刺した。その光の強さの中で、黒崎達が乗って行ったタクシーの影が頭によぎった。
「夏樹?」
「あ、うん。行こう」
俺は微笑んで、カフェのドアを押した。すると、涼しい空気とコーヒーの香りが迎えてくれた。店の奥では田中先生が手を振ってくれていた。
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