森林の星空少年~あの日のメエメエ

夏目奈緖

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 すると、俺がいたスタジオから月島さんと山本さんが出てきた。板東さんと話をしているのを見かけたところだった。明日も撮影に同席する。明日はフリーズドライ商品の撮影であるから、今度は冷え冷えのカボチャの味噌汁を飲まないといけないかも知れない。

「月島さん!山本さん!お疲れ様です」
「お疲れ様。お揃いでどうしたんだ?こんにちは。藤沢君。まだきちんと挨拶が出来ていなかったね」
「ほお……」

 月島さんがにこやかな微笑みを浮かべて、藤沢の前に立った。藤沢の方も微笑みを浮かべている。数時間前に軽く話をしただけだったから、お互いの名前しか分からない状態だ。一方でカズさんは幽体離脱ボディーで月島さんと接した経験があるから、お互いによく知っているような間柄になっている。そういうわけで、メインは藤沢との会話になった。

「プラセルコーポレーションのジュエリーブランドの撮影なんて、素敵だね」
「はい。とても夢があります。月島さんはキシヤマ味噌の社長さんなんですね。僕、味噌汁といえばキシヤマの味噌を使っています」
「ありがとう。ぜひ、フリーズドライ商品のカボチャの味噌汁も飲んでくれ。良かったら商品を持ってくるけど、明日は撮影は無いのか?」
「明日も今日と同じスタジオで撮影があります。明日も遊びに来させて下さい」
「もちろん来てくれ。じゃあ、商品を持ってくることにする。それにしてもかっこいい子だなあって思って見ていたんだ。さすがはモデルさんだね」
「ありがとうございます」
「ほお……」

 どうしよう?藤沢がやや頰を赤くして月島さんのことを見つめている。カズさんもそれに気がついて、ハンカチを歯で噛んで悲鳴を上げるのを防ぎ始めた。ここで月島さんの会話の妨害をするわけにはいかないからだ。しかし、悲鳴が漏れ聞こえてきた。

「キーーーーーー……」
「ふむふむ。カズさん。月島さんと藤沢は社交をしているんだ。邪魔はいけないよ」
「キーーーーー……。修輔君が笑った。かっこいいとか言われると嫌がるのに、月島君に褒められるのはいいのか!キーーーー……」
「ふむふむ。2人の気が合ったみたいだなーーー」

 どうしよう?そういうことである。紳士的な月島さんと繊細で柔らかな藤沢という組み合わせはピッタリ合うのだろう。そこで、俺は山本さんの反応が気になって視線を向けた。俯いている。恋の芽生えともいえる場面にショックを受けているのだろう。

「ふむふむ。山本さん。顔を上げて下さい。2人は社交をしているだけですよ」
「でも……。いつもそうなんです。社長に会った人はああなる。素敵な人だから……」
「憧れる気持は分かります。背が高くて顔もかっこよくて、仕事が出来て優しいなんて、何拍子も揃っていますからね」
「憧れだけじゃ無くて、僕、社長のことが好きなんです。でも、社長は僕なんかじゃ無くて、藤沢さんみたいなモデルさんが良いんだと思います。僕みたいな地味なタイプなんて、眼中に無いと思います」
「ふむふむ。そんなことはないですよ。あなただって素敵だと思います。月島さんには好きな人が居ましてね……。再会を心待ちにしているんです。その人をずっと思っているんですよ。だから、藤沢とどうにかなるなんてないです」
「ああ……。そうなんですね。社長の片想いだなんて、どんな人だろう。社長には恋の誘いがたくさん寄せられていて、大忙しなんです。そういえば、最近は静かだなって思っていました……」
「ふむふむ。恋の誘いですか。どんなものですか?」

 どうしよう?月島さんの恋愛事情に興味を持ってしまった。カズさんも興味深そうにしている。まさか、カズさんのようなことは無いだろう。きっと、会食で会う度に相手からプライベートな連絡先が書かれた名刺をもらうだとか、メッセージカードをもらうのだろう。黒崎さんのように。
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