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3話 二人の相手 その2
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「セルベート大公、お久しぶりです」
「久しぶりだね、イスルギ殿。しかし、イスルギ殿にそのように呼ばれるとむず痒いな……セルベート大公などと言った他人行儀な言い方ではなく、ラクロアと呼んでくれたまへ」
「では、お言葉に甘えまして……ラクロア殿、お久しぶりでございます」
イスルギ公爵は呼び方を変えて、ラクロア大公に頭を下げていた。私もイスルギ公爵に合わせて深々と頭を下げる。
「ら、ラクロア・セルベート大公様……! 本日はその……あの……!」
あまりの緊張振りで上手く言葉が出て来なかった。本当なら怒られても文句は言えないはずなんだけれど……ラクロア様は一切、そんな素振りを見せなかった。
「そんなに緊張しなくても、大丈夫だよ、ミュリア」
あれ……想像以上に優しい。いえ、ラクロア様が厳しいお方だとは聞いてはいなかったけれども。でも、王家の血筋を引いているお方だし……それを考えると、びっくりするくらいに優しかったわ。
「ミュ、ミュリア……ラクロア殿、いくらなんでも、初めて会う令嬢に対して呼び捨てというのは……」
真面目な武人、という印象の強いイスルギ様はすかさずラクロア様に突っ込みを入れていた。ラクロア様は線が細い外見をしているけれど、意外と図太い神経の持ち主なのかもしれないわ。そうじゃないと大公なんて務まらないだろうし。
「ああ、済まないイスルギ殿。しかし、ミュリアとは昔からの仲……いや、こういうと誤解が生まれそうだな。僕とミュリアは幼馴染だからね」
「幼馴染……?」
「えっ……? ええっ!?」
ラクロア様と私が幼馴染……!? 確かにラクロア様は20歳くらいだし、年齢的にはわからないけれど。いえ、でもそんな記憶はないような……。
「も、申し訳ありません、ラクロア様……その、幼馴染というのは事実、なのでしょうか?」
私は非常に申し訳ないと思ったけれど、思い切ってラクロア様に聞いてみることにした。すると、ラクロア様は優しく頷く。あ、本当なんだ……。
「まあ、貴殿が5歳くらいの時だからな。僕が当時は8歳だったか……覚えていなくても、無理はないさ」
「も、申し訳ありませんでした……」
「それよりも……なにかあったのかな?」
ラクロア様も私の様子に気付かれている? 今、会ったばかりなのに……凄い……話は半強制的に婚約破棄の方に向かってしまった。
「ええ、私もそれが気になっておりまして……ミュリア嬢、話してみる気はないか? こうして知り合ったのも何かの縁だろう」
「イスルギ様……」
「そうだね、僕もミュリアの力にはなりたいと考えているよ」
「ラクロア様……」
身分のはるかに高いお二人から感じる、無償の優しさ……私は自然と口を開いていた。
「じ、実は……婚約者から、婚約破棄を言い渡されてしまいまして……」
「なんだと? ……婚約破棄?」
イスルギ様とラクロア様……公爵様と大公様の表情が変化した瞬間だった……。
「久しぶりだね、イスルギ殿。しかし、イスルギ殿にそのように呼ばれるとむず痒いな……セルベート大公などと言った他人行儀な言い方ではなく、ラクロアと呼んでくれたまへ」
「では、お言葉に甘えまして……ラクロア殿、お久しぶりでございます」
イスルギ公爵は呼び方を変えて、ラクロア大公に頭を下げていた。私もイスルギ公爵に合わせて深々と頭を下げる。
「ら、ラクロア・セルベート大公様……! 本日はその……あの……!」
あまりの緊張振りで上手く言葉が出て来なかった。本当なら怒られても文句は言えないはずなんだけれど……ラクロア様は一切、そんな素振りを見せなかった。
「そんなに緊張しなくても、大丈夫だよ、ミュリア」
あれ……想像以上に優しい。いえ、ラクロア様が厳しいお方だとは聞いてはいなかったけれども。でも、王家の血筋を引いているお方だし……それを考えると、びっくりするくらいに優しかったわ。
「ミュ、ミュリア……ラクロア殿、いくらなんでも、初めて会う令嬢に対して呼び捨てというのは……」
真面目な武人、という印象の強いイスルギ様はすかさずラクロア様に突っ込みを入れていた。ラクロア様は線が細い外見をしているけれど、意外と図太い神経の持ち主なのかもしれないわ。そうじゃないと大公なんて務まらないだろうし。
「ああ、済まないイスルギ殿。しかし、ミュリアとは昔からの仲……いや、こういうと誤解が生まれそうだな。僕とミュリアは幼馴染だからね」
「幼馴染……?」
「えっ……? ええっ!?」
ラクロア様と私が幼馴染……!? 確かにラクロア様は20歳くらいだし、年齢的にはわからないけれど。いえ、でもそんな記憶はないような……。
「も、申し訳ありません、ラクロア様……その、幼馴染というのは事実、なのでしょうか?」
私は非常に申し訳ないと思ったけれど、思い切ってラクロア様に聞いてみることにした。すると、ラクロア様は優しく頷く。あ、本当なんだ……。
「まあ、貴殿が5歳くらいの時だからな。僕が当時は8歳だったか……覚えていなくても、無理はないさ」
「も、申し訳ありませんでした……」
「それよりも……なにかあったのかな?」
ラクロア様も私の様子に気付かれている? 今、会ったばかりなのに……凄い……話は半強制的に婚約破棄の方に向かってしまった。
「ええ、私もそれが気になっておりまして……ミュリア嬢、話してみる気はないか? こうして知り合ったのも何かの縁だろう」
「イスルギ様……」
「そうだね、僕もミュリアの力にはなりたいと考えているよ」
「ラクロア様……」
身分のはるかに高いお二人から感じる、無償の優しさ……私は自然と口を開いていた。
「じ、実は……婚約者から、婚約破棄を言い渡されてしまいまして……」
「なんだと? ……婚約破棄?」
イスルギ様とラクロア様……公爵様と大公様の表情が変化した瞬間だった……。
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