21 / 42
21話 エトワール家の者達 その2
しおりを挟む
騒ぎが収束しない会場……舞踏会は、予定を早めて終了することになった。まあ、この状況で楽しむなんてできないから、そっちの方が良かったんだけど……なんだか、すっきりしないわね。
「しかし誰だね……姉よりも妹の方が優れているとか言っていたのは……」
「まったくですね……シンディ殿の方が余程、しっかりされていらっしゃいます」
「エトワール伯爵も、もう少し言葉を慎んだ方が良い気はしますがね……」
会場から出て行く貴族の方々の言葉には色々な感情が込められているようだった。……私の評価が上がっている印象があったんだけれど、気のせいではないわよね?
私とディエス様はお父様たちとは一旦別れ、会場の外に向かっていた。
「……想定外のこともあったが、概ね予定通りだったな」
「ええ……そうですわね……」
「フリント殿への制裁は上手く行ったと言えるか……どうかな? シンディ殿?」
フリント様への制裁か……うん、彼の家系には相当なダメージが行ったんじゃないかと思うし、その点については成功かしらね。やっぱり身勝手な婚約破棄をしておいて、賠償金だけ払いました、なんて逃げは許されないんだし。
お金だけで全てが解決するんなら、貴族社会は浮気とか婚約破棄とかのオンパレードになってしまうわ……。
「はい、上手く行ったのだと思います。ディエス様……何から何まで、本当にありがとうございました」
私は深々と頭を下げてお礼を言った。ディエス様にとってみれば取るに足らないことだったのかもしれないけれど、私にとっては非常に大きなことだ。
「頭を上げてくれ、シンディ殿。あなたは、私の大切な婚約者なんだから……」
「ディエス様……。こ、婚約者……」
深々と頭を下げていた私だけれど、ディエス様の婚約者になっていたことを忘れていた。再び、恥ずかしさが込み上げてしまう。
「幸いなことに、父上からの承諾は得ているのだ。良ければ、この関係を続けていかないか?」
「ディエス様がよろしいのであれば……」
私は顔を真っ赤にしながら、頷くしかなかった。まさに、白馬の王子様の出現なのだから。フリント様には身勝手に振られ、妹のジニーにも裏切られ、お父様には単なる商品として扱われている私だけれど、ディエス様との婚約だけで、お釣りが来ているかもしれない。
私はそんな想いを持っていた。ディエス様は優しく私に微笑んでくれている。
「ありがとう、シンディ殿。しかし、このエトワール家との関係は早急に絶った方が良いかもしれないな……。ここに長く滞在することは、シンディ殿にとっても良い影響があるとは思えない……」
やっぱり、ディエス様には先を見通す能力があるみたい。いえ、あのような家族の状況を見ていたら、誰だって思うかもしれないけれど……これが、エトワール家の現状ね……。お父様たちとの関係性を失くすことが最善……それは私にも理解出来ていた。
「しかし誰だね……姉よりも妹の方が優れているとか言っていたのは……」
「まったくですね……シンディ殿の方が余程、しっかりされていらっしゃいます」
「エトワール伯爵も、もう少し言葉を慎んだ方が良い気はしますがね……」
会場から出て行く貴族の方々の言葉には色々な感情が込められているようだった。……私の評価が上がっている印象があったんだけれど、気のせいではないわよね?
私とディエス様はお父様たちとは一旦別れ、会場の外に向かっていた。
「……想定外のこともあったが、概ね予定通りだったな」
「ええ……そうですわね……」
「フリント殿への制裁は上手く行ったと言えるか……どうかな? シンディ殿?」
フリント様への制裁か……うん、彼の家系には相当なダメージが行ったんじゃないかと思うし、その点については成功かしらね。やっぱり身勝手な婚約破棄をしておいて、賠償金だけ払いました、なんて逃げは許されないんだし。
お金だけで全てが解決するんなら、貴族社会は浮気とか婚約破棄とかのオンパレードになってしまうわ……。
「はい、上手く行ったのだと思います。ディエス様……何から何まで、本当にありがとうございました」
私は深々と頭を下げてお礼を言った。ディエス様にとってみれば取るに足らないことだったのかもしれないけれど、私にとっては非常に大きなことだ。
「頭を上げてくれ、シンディ殿。あなたは、私の大切な婚約者なんだから……」
「ディエス様……。こ、婚約者……」
深々と頭を下げていた私だけれど、ディエス様の婚約者になっていたことを忘れていた。再び、恥ずかしさが込み上げてしまう。
「幸いなことに、父上からの承諾は得ているのだ。良ければ、この関係を続けていかないか?」
「ディエス様がよろしいのであれば……」
私は顔を真っ赤にしながら、頷くしかなかった。まさに、白馬の王子様の出現なのだから。フリント様には身勝手に振られ、妹のジニーにも裏切られ、お父様には単なる商品として扱われている私だけれど、ディエス様との婚約だけで、お釣りが来ているかもしれない。
私はそんな想いを持っていた。ディエス様は優しく私に微笑んでくれている。
「ありがとう、シンディ殿。しかし、このエトワール家との関係は早急に絶った方が良いかもしれないな……。ここに長く滞在することは、シンディ殿にとっても良い影響があるとは思えない……」
やっぱり、ディエス様には先を見通す能力があるみたい。いえ、あのような家族の状況を見ていたら、誰だって思うかもしれないけれど……これが、エトワール家の現状ね……。お父様たちとの関係性を失くすことが最善……それは私にも理解出来ていた。
3
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
白い結婚のはずでしたが、理屈で抗った結果すべて自分で詰ませました
鷹 綾
恋愛
「完璧すぎて可愛げがない」
そう言われて王太子から婚約破棄された公爵令嬢ノエリア・ヴァンローゼ。
――ですが本人は、わざとらしい嘘泣きで
「よ、よ、よ、よ……遊びでしたのね!」
と大騒ぎしつつ、内心は完全に平常運転。
むしろ彼女の目的はただ一つ。
面倒な恋愛も政治的干渉も避け、平穏に生きること。
そのために選んだのは、冷徹で有能な公爵ヴァルデリオとの
「白い結婚」という、完璧に合理的な契約でした。
――のはずが。
純潔アピール(本人は無自覚)、
排他的な“管理”(本人は合理的判断)、
堂々とした立ち振る舞い(本人は通常運転)。
すべてが「戦略」に見えてしまい、
気づけば周囲は完全包囲。
逃げ道は一つずつ消滅していきます。
本人だけが最後まで言い張ります。
「これは恋ではありませんわ。事故ですの!」
理屈で抗い、理屈で自滅し、
最終的に理屈ごと恋に敗北する――
無自覚戦略無双ヒロインの、
白い結婚(予定)ラブコメディ。
婚約破棄ざまぁ × コメディ強め × 溺愛必至。
最後に負けるのは、世界ではなく――ヒロイン自身です。
-
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる