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23話 エトワール家の者達 その4
しおりを挟む「お母様……昨日の舞踏会開催前とは、随分と態度が違うように感じられるのですが……どういうことでしょうか?」
「えっ? 急にどうしたの、シンディ……?」
いきなりの追及の言葉……お母様は思考が追い付いていないのか、途方に暮れる表情になっていた。私はそんなお母様に、もう一度同じ言葉を掛けた。
「態度が違うって……そ、そんなことないわよ?」
「妹のジニーを明らかに贔屓していたと思いますけど?」
「そ、それは……」
私はここでお母様の気持ちも多少は分かる気がしてしまった。姉よりも妹を可愛がるというのは、おそらく親心としては普通なのだろうから……。ライラもお母様に無言の圧力を掛けている。
「恐れながら申し上げます。私の目から見ましても、シンディ様は不遇な扱いを受けていたと思います……」
「ライラ……」
当主の妻に対する暴言と取られかねないライラの言葉……しかし、この状況では有力な証人の言葉に変わっていた。お母様の態度が明らかに動揺しているからだ。なんだか、お母様の裁判をしているみたいね……。
「妹であるジニーが可愛いというのは分かります。ですが、それならば最後まで貫き通してください。私がディエス様と婚約して、ジニーはフリント様との縁談が破断になる……こういう時こそ、ジニーの傍に居てあげてくださいよ!」
「し、シンディ……あなた……」
私は強い口調で発言し、部屋中に声を響き渡らせた。フリント様と浮気をしたジニーだけれど、それも潰れてしまい落ち込んでいるはず……。こんな時に助けない親は、最早他人以下の存在だと思う。私は両親の態度で何よりもそれが許せなかった。
もちろん、ディエス様との婚約が決まった段階で、あからさまに態度を変えるのも許すことはできないけれど……。
「ご、ごめんなさい、シンディ……! 確かに、私は母親として最低だったかもしれないわね……」
「今は謝罪とかはいいです。ジニーのことを大切にしてやってください」
そう、今までのエトワール家に戻ってくれればいい。歪だったけれど、それで何年も過ごしていたのだから。
「で、でもシンディ……あなたは……?」
「私は家を出ます。ディエス様との婚約が成立すればすぐにでも……」
早急な絶縁をディエス様もおっしゃっていた。私はそのことをお母様に伝える。
「お母様たちとは、少しの間、距離を置いた方が良いと思いますので……」
「ま、待ちなさいシンディ……それは駄目よ……!」
お母様は必死の表情で私を止めていた。その理由は分かっている。私が家を出る形になると、ディエス様との関係性が薄まるからだ。でもそんなことは知ったことではない。私は心を鬼にしてお母様の手を振り払った。
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