24 / 42
24話 エトワール家の者達 その5
しおりを挟む
「まったく、お前はエトワール家の面汚しだ……! フリント・アラベスクみたいな軟派な男に引っかかりおって!」
「そんな……! お父様だって、フリント様との婚約は喜んでいらしてたじゃないですかっ!」
私室を出た私とライラは、廊下を足早に歩いていたのだけれど……聞き覚えのある怒号が室内から飛んでいるのが聞こえた。この部屋は、ジニーの私室ね……どうやらお父様と口論になっているみたい。
「シンディ様……」
「うん……」
私はしたくはなかったけれど、ジニーの部屋から漏れて来る口論の内容に聞き耳を立てる。
「お前がフリントなんぞと婚約しなければ……! 今まで可愛がってやったのに、本当に親不孝者だ、お前は!」
「お父様……! 酷い、酷過ぎます……! うわぁぁぁぁぁ……!」
どうやらジニーは泣き崩れてしまったようね……。
他の貴族たちにとっては良い晒しものを見たような舞踏会……ジニーは意気揚々と主催したんでしょうけど、それが本当に仇になった感じね。でも、あれでは流石にジニーが可哀想だわ……。
「シンディ様……ジニー様を助けるのですか?」
「いいえ、そんなことはしないわ。これはジニーの問題……私が口を挟む事柄ではないし」
私はジニーにされたことを思い返し、彼女の私室に入るのを踏みとどまった。そう、お父様もそうだけれど、ジニーだってとても酷いことをしていたんだから……。
「あの、シンディ様……よろしいでしょうか?」
「なにかしら?」
ライラとは違う使用人の一人が私に声を掛けて来た。少し慌てている様子だ。多分、ジニーとお父様との口論が聞こえているからでしょうね。
「あの……ディエス・マローネ様がお越しでございますが……如何いたしましょうか?」
使用人の言葉を聞いた時、私は無意識の内に心が明るくなった。お母様を振り切って、ジニーとお父様との醜い口論を聞いた後でのディエス様なのだから当然なんだけど。
------------------------------------
「シンディ殿、急に押しかけてしまって済まない」
「ディエス様、とんでもないことでございます」
私は訪ねてくれたディエス様に出来る限りの笑顔で返した。
「本日は如何なされましたか……?」
「ああ、そのことなんだがな」
「……?」
ディエス様はなんだか言いにくそうな表情をしている。まさか、婚約破棄をする、なんて言わないわよね? 私はあり得ない想像を膨らませていたけれど……。
「君を正式にマローネ家に迎え入れる。今後のことを考えれば、エトワール家とは完全に関係を断つのが賢明だろう。既に陛下にも話しは通している」
「!!」
ディエス様から出て来た言葉は、ある意味では婚約破棄よりも衝撃的な言葉だった。もちろん嬉しいことではあるけれど、ディエス様行動力あり過ぎ……。
「そんな……! お父様だって、フリント様との婚約は喜んでいらしてたじゃないですかっ!」
私室を出た私とライラは、廊下を足早に歩いていたのだけれど……聞き覚えのある怒号が室内から飛んでいるのが聞こえた。この部屋は、ジニーの私室ね……どうやらお父様と口論になっているみたい。
「シンディ様……」
「うん……」
私はしたくはなかったけれど、ジニーの部屋から漏れて来る口論の内容に聞き耳を立てる。
「お前がフリントなんぞと婚約しなければ……! 今まで可愛がってやったのに、本当に親不孝者だ、お前は!」
「お父様……! 酷い、酷過ぎます……! うわぁぁぁぁぁ……!」
どうやらジニーは泣き崩れてしまったようね……。
他の貴族たちにとっては良い晒しものを見たような舞踏会……ジニーは意気揚々と主催したんでしょうけど、それが本当に仇になった感じね。でも、あれでは流石にジニーが可哀想だわ……。
「シンディ様……ジニー様を助けるのですか?」
「いいえ、そんなことはしないわ。これはジニーの問題……私が口を挟む事柄ではないし」
私はジニーにされたことを思い返し、彼女の私室に入るのを踏みとどまった。そう、お父様もそうだけれど、ジニーだってとても酷いことをしていたんだから……。
「あの、シンディ様……よろしいでしょうか?」
「なにかしら?」
ライラとは違う使用人の一人が私に声を掛けて来た。少し慌てている様子だ。多分、ジニーとお父様との口論が聞こえているからでしょうね。
「あの……ディエス・マローネ様がお越しでございますが……如何いたしましょうか?」
使用人の言葉を聞いた時、私は無意識の内に心が明るくなった。お母様を振り切って、ジニーとお父様との醜い口論を聞いた後でのディエス様なのだから当然なんだけど。
------------------------------------
「シンディ殿、急に押しかけてしまって済まない」
「ディエス様、とんでもないことでございます」
私は訪ねてくれたディエス様に出来る限りの笑顔で返した。
「本日は如何なされましたか……?」
「ああ、そのことなんだがな」
「……?」
ディエス様はなんだか言いにくそうな表情をしている。まさか、婚約破棄をする、なんて言わないわよね? 私はあり得ない想像を膨らませていたけれど……。
「君を正式にマローネ家に迎え入れる。今後のことを考えれば、エトワール家とは完全に関係を断つのが賢明だろう。既に陛下にも話しは通している」
「!!」
ディエス様から出て来た言葉は、ある意味では婚約破棄よりも衝撃的な言葉だった。もちろん嬉しいことではあるけれど、ディエス様行動力あり過ぎ……。
3
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
白い結婚のはずでしたが、理屈で抗った結果すべて自分で詰ませました
鷹 綾
恋愛
「完璧すぎて可愛げがない」
そう言われて王太子から婚約破棄された公爵令嬢ノエリア・ヴァンローゼ。
――ですが本人は、わざとらしい嘘泣きで
「よ、よ、よ、よ……遊びでしたのね!」
と大騒ぎしつつ、内心は完全に平常運転。
むしろ彼女の目的はただ一つ。
面倒な恋愛も政治的干渉も避け、平穏に生きること。
そのために選んだのは、冷徹で有能な公爵ヴァルデリオとの
「白い結婚」という、完璧に合理的な契約でした。
――のはずが。
純潔アピール(本人は無自覚)、
排他的な“管理”(本人は合理的判断)、
堂々とした立ち振る舞い(本人は通常運転)。
すべてが「戦略」に見えてしまい、
気づけば周囲は完全包囲。
逃げ道は一つずつ消滅していきます。
本人だけが最後まで言い張ります。
「これは恋ではありませんわ。事故ですの!」
理屈で抗い、理屈で自滅し、
最終的に理屈ごと恋に敗北する――
無自覚戦略無双ヒロインの、
白い結婚(予定)ラブコメディ。
婚約破棄ざまぁ × コメディ強め × 溺愛必至。
最後に負けるのは、世界ではなく――ヒロイン自身です。
-
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる