19 / 33
19話 転落の開始 その4
しおりを挟む今世紀最大級の驚愕の表情を見せてくれたルデルテ公爵は、完全に沈黙していた。まさか、自分の配下であるマルクスが裏切るとは考えていなかったって感じね。そうこうしている間に、サウス王子殿下の元に部下の人が現れた。
どうやら、研究部門、調合部門の部屋から何かが出てきたようね……。
「サウス王子殿!」
「どうした、何か見つかったか?」
「はい、これを発見いたしました!」
まず、部下が渡したのは紫色のポーション数点。それから、調合部門で働いていた人が書いていたと思われる日誌だった。
「よし、ご苦労だった。引き続き、証拠になる物を探してくれ」
「畏まりました!」
部下の人はサウス王子殿下や護衛、私に礼をすると、そのまま勢いよく走って行った。
「それって……なんでしょうか?」
「どうやら、調合部門で働いていた者の手記のようだ。少し見ただけだが……はは、これは面白いな」
そう言いながら、サウス王子殿下は私にも日誌を見せてくれる。内容は、簡単に言うと愚痴や不満の連続、といったところだった。いかに労働環境が悪かったかを物語っているわね。
ルデルテ公爵たちに見つかったら大変な問題だったはずなのに……それでも我慢できずに書いたとなれば、それは相当なことなのかもしれないわ。
「レミュラ、君はこのポーションの鑑定に当たってくれないか?」
「はい、わかりました」
サウス王子殿下はそう言うと、今度は差し押さえた紫色のポーションを渡してくれた。鑑定っていう言葉は少し照れてしまうわね……確かに間違ってはいないんっだけど。早速、効果などのチェックに入った。ルデルテ公爵は今まで固まっていたけれど、私がポーション鑑定に入った途端、我に返ったみたい。
でも、これといって抵抗の意志を見せることはなかったけれど。
----------------------------------------------------
私の鑑定を数点のポーション全てで実行し、その効果はどの程度なのかを見てみた。同じ紫色のポーションでも効果・効力には差があるわね……。私が精製するポーションは基本的に効果に差はなく、回復から状態異常、病気の治療も可能にしている。
切り傷の場合、なぜか切られた服まで元に戻ったっていう噂もあるようだけど、そのあたりは深く考えないようにしよう。私のポーションの価格は1000ゴールド……他の薬屋さんへの配慮もあったんだけど、やっぱり経営的にはニャンコクラブがダントツになりかけているみたい……。
で、この紫色のポーションなんだけど……なにこれ? これらは効果・効力が半分どころか2割以下ってところかしら? 下手をすれば、傷薬や回復薬よりも効果が低いかもしれない。50ゴールドくらいで買える商品より効果が低い物が、仕入れ値で3000ゴールドもするなんて……なにかがおかしい。
「どうだ、レミュラ?」
「はい……これらのポーションの効果はさらに低いです。状態回復効果もなければ、風邪などに対しての効果も薄い。下手をすると、飲んで毒状態になるなんて可能性もあるかもしれません」
「そこまで劣悪なポーションなのかこれは……。しかし……君の鑑定能力の高さは本当にすごいな。なにより速度が」
「い、いえ、そんな……ありがとうございます」
サウス王子殿下に褒められると、なんだか顔が赤くなってくる……今の状況では不謹慎かもしれないけれど。でも、確かに鑑定能力は高いような気がする。証明自体は機械に通さないと無理だけど、たぶん全部当たっているだろうし。
今までは通常の回復薬などの鑑定は行ったことがなかったけれど、もしかしたら応用が可能かもしれないわ。これって、ポーションメーカー以外の仕事で専門職の幅が広がることに繋がるかも。
「と、いうことだルデルテ公爵……このような劣悪品を強制的に仕入れさせ、国民に売っていた……。これがどういう罪に該当するかは、聡明な公爵殿であれば嫌でも分かるな?」
断罪の時かしら? 従業員の日誌だって参考になるし、何よりもこの紫色のポーションが決め手だし。ルデルテ公爵も観念するはず。なんて私も思っていたんだけど……。
「この責任は私ではない。そもそもの問題として、マルクス管理の元で行われていたのだ。私は知らなかった!」
「な、なんと……! ルデルテ公爵? どういうことですか……! あなた様は……最初から私を切り捨てるおつもりで……?」
なんだか、とんでもないことを言いだしているような。マルクスも驚いているし……。
「安心しろ、マルクス。別にお前だけの責任ではないさ。他の部門を任せていたチームリーダーも全て同じ罪だ! ああ、あと……このような調合技術を生み出させた元凶のレミュラにも責任を取ってもらおうか」
「な、なんですって……!?」
「ルデルテ公爵……」
ルデルテ公爵の最終抵抗というやつかしら? なりふり構っている状況じゃない……だから、自分以外の配下の管理者に全ての責任を負わせ、自分は逃げ切る腹積もりね。そして、なぜか私にも責任問題が飛び火しているし……。
20
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。
佐藤 美奈
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。
そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。
しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。
不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。
「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」
リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。
幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。
平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる