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25話 新しい仕事 その2

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 翌日、私はルデルテ公爵やその配下が管理していた調合部門に入った。昨日はミオナにサウス王子殿下のことを根掘り葉掘り聞かれて大変だったけど……。


 現在、私の隣には王子殿下の姿もある。彼との関係……昔は宮殿などで出会っていたけれど、今はどういう関係かと問われると……難しいわね。


「サウス王子殿下、ここが調合部門なんですよね?」

「そうだな、ここがポーション製造の拠点だったようだ」


 私がルデルテ公爵の婚約者だった時には、この場所はまだ存在していなかったはず。いえ、あったのかもしれないけど、目の前にある大きな釜などは、その後に運び込まれたんでしょうね。薬調合にはかかせない材料が残されているようで、独特なツンと鼻を刺激する臭いが私たちの周囲を覆っていた。


「君の新しい仕事場はここになるが……他の仕事仲間は信頼に足る人物にしているので、安心してくれ」

「本当ですか? ありがとうございます」


 元々はルデルテ公爵の部下が使っていた場所。公爵に心酔している者に逆恨みされないか、少しだけ心配していたから……。


「公爵の部下たちも調合に携わるようにはなるが、心配する必要はない。元々、劣悪な待遇に不満を抱えていた者達が大半だったからな。それに、私の護衛も常に置いておくので、安心して臨んでほしい」

「サウス王子殿下……本当にありがとうございます」

「ははは、気にする必要はないよ。それから、金庫に入っていた君の以前の給料もちゃんと渡すから、安心していいよ。もちろん、迷惑を掛けた分、多めにしている」


 何から何までサウス王子殿下は、私に優しくしてくれている。私が提案したこととはいえ、ポーション製造の現場で働かせてもらい、護衛を付けてもらい、以前の給料も色を付けて返してくれる。

 さすがは第三王子様なだけはあるわね。この人が次代の国王陛下になれば、国民は安心できそうだけど。



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 その後は私の基本的な職務に対する最終確認が行われた。私は調合部門の部屋でポーションを製造しつつ、他の人が作っているポーションの出来栄えをチェックしたりする。後は、私のスキルで作ったポーションとの成分比較等をして、より効率の良いポーション量産に向けて検討を重ねたり……。

 あれ? 私の立ち位置がかなり重要ポストになっているような……まあ、やりがいはありそうだけどさ。


「そうだ、レミュラ。君の新たな就職を祝って、食事でもどうかな? これは……個人的なものだが」


「あ、ありがとうございます! もちろん、ご一緒させていただきます!」


 私はやや緊張しながら、そう答えた。


「そうか、なら貴族街のレストランにでも向かおうか」

「は、はい……!」


 一般人でしかない私が、サウス王子殿下と個人的に食事に行けるなんて……サウス王子殿下って、まだ婚約者等は居なかったはず。これってもしかすると、もしかするのかしら?


 私は緊張感の中に、そんな邪な感情を芽生えさせていた。以前は絶対に届かないだと思っていた、サウス王子殿下への想い……ルデルテ公爵の一件で、不可能ではないところまで来ている予感がしていたから。
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