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10話 婚約宣言 その1
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「で、殿下……!!?」
なにをされたのか……殿下の熱いお顔が私の前に近づいたかと思いきや、私の唇を塞いだ。感覚ではすぐに気づいたけど、頭が追い付いていかない。私とハルト殿下の前で土下座を続けているシグマとアンナも、別の意味で開いた口が塞がっていなかった。
ここは貴族街……それも、前とは違って日が昇っている状態。パーティ会場ほどではなくとも貴族の往来だってあるし、殿下の勧善懲悪の行動の影響で、野次馬だって発生していた。
そんな中、伯爵令嬢である私、シエル・アクアマイトとハルト王太子殿下はキスを交わしている。これがどういうことなのかは、すぐに理解することが出来た。
「殿下……」
「シエル……」
でも、止まらない。なぜなら私は今、最高に幸せな時間をハルト王太子殿下と共有していたから。伯爵令嬢と王太子殿下が白昼の貴族街でこんなことをしていたら、あとで問題になるかもしれないけれど、それでも私の気持ちは止まらなかった。
ずっと好きだったハルト王子……叶わぬ恋だとはわかっていた、決してそれを表に出したらダメなんだと。それからすぐに、ハルト王子とは離れ離れになってしまった。それが10年前の出来事……それがまさか、10年の時を経てこんな形で戻ってくるなんて。
─────
「ハルト様、あの……」
「ああ、わかっている。ずいぶんと人の目に触れてしまったな」
キスを終えた私たちは、ゆっくりと身体を離した。まだまだ名残惜しかったけれど、こればかりは仕方ないわよね。
「あれって、王太子殿下よね……? 向こうはシエルっていう令嬢じゃないの……?」
「なにかの催し物か?」
「きっとそうだろう。私たちを驚かせようとしているのさ」
なんだか周囲の雰囲気は真面目なムードではなくなっているような……確かにそうよね、いくらなんでも王太子と伯爵令嬢のキスが大真面目なんて思えないもの。ここは、ハルト様も雰囲気に乗って、「冗談でした~!」と言ってくれた方が、後々問題にはならない。
……でも、私の気持ちは無かったことにはしたくない……決して言葉にはできないけれど、そう強く願っていた。
「シエル、私とのキスは……嫌ではなかったかな?」
「まさか……そのようなこと、あるはずはないです」
「そうか、君のその気持ちが聞けて、私もうれしいよ。それならシエル……もう一つ、聞いてほしいことがあるんだ」
「は、はい……なんでしょうか?」
ハルト様は私の気持ちを分かっていらっしゃる……? 彼の優しい顔は、それを伝えているように感じられた。だからこそなのかな、
「シエル・アクアマイト。ぜひ、私と婚約をしてほしい」
ハルト様のそんな爆弾発言にも冷静でいられたのは。
なにをされたのか……殿下の熱いお顔が私の前に近づいたかと思いきや、私の唇を塞いだ。感覚ではすぐに気づいたけど、頭が追い付いていかない。私とハルト殿下の前で土下座を続けているシグマとアンナも、別の意味で開いた口が塞がっていなかった。
ここは貴族街……それも、前とは違って日が昇っている状態。パーティ会場ほどではなくとも貴族の往来だってあるし、殿下の勧善懲悪の行動の影響で、野次馬だって発生していた。
そんな中、伯爵令嬢である私、シエル・アクアマイトとハルト王太子殿下はキスを交わしている。これがどういうことなのかは、すぐに理解することが出来た。
「殿下……」
「シエル……」
でも、止まらない。なぜなら私は今、最高に幸せな時間をハルト王太子殿下と共有していたから。伯爵令嬢と王太子殿下が白昼の貴族街でこんなことをしていたら、あとで問題になるかもしれないけれど、それでも私の気持ちは止まらなかった。
ずっと好きだったハルト王子……叶わぬ恋だとはわかっていた、決してそれを表に出したらダメなんだと。それからすぐに、ハルト王子とは離れ離れになってしまった。それが10年前の出来事……それがまさか、10年の時を経てこんな形で戻ってくるなんて。
─────
「ハルト様、あの……」
「ああ、わかっている。ずいぶんと人の目に触れてしまったな」
キスを終えた私たちは、ゆっくりと身体を離した。まだまだ名残惜しかったけれど、こればかりは仕方ないわよね。
「あれって、王太子殿下よね……? 向こうはシエルっていう令嬢じゃないの……?」
「なにかの催し物か?」
「きっとそうだろう。私たちを驚かせようとしているのさ」
なんだか周囲の雰囲気は真面目なムードではなくなっているような……確かにそうよね、いくらなんでも王太子と伯爵令嬢のキスが大真面目なんて思えないもの。ここは、ハルト様も雰囲気に乗って、「冗談でした~!」と言ってくれた方が、後々問題にはならない。
……でも、私の気持ちは無かったことにはしたくない……決して言葉にはできないけれど、そう強く願っていた。
「シエル、私とのキスは……嫌ではなかったかな?」
「まさか……そのようなこと、あるはずはないです」
「そうか、君のその気持ちが聞けて、私もうれしいよ。それならシエル……もう一つ、聞いてほしいことがあるんだ」
「は、はい……なんでしょうか?」
ハルト様は私の気持ちを分かっていらっしゃる……? 彼の優しい顔は、それを伝えているように感じられた。だからこそなのかな、
「シエル・アクアマイト。ぜひ、私と婚約をしてほしい」
ハルト様のそんな爆弾発言にも冷静でいられたのは。
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