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19話 ブリーテン家へ その1
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後日、私はハルト王太子殿下に連れられてシグマ・ブリーテンの屋敷へと向かうことになった。相手は私の元婚約者にして憎き男……じゃなくて、侯爵令息。ハルト王太子殿下が直々にブリーテン家の不平不満について弾劾をしようって感じね。
シグマ自体は王太子殿下の怒りを忘れられないのか、屋敷から出ないようにはしているみたいだけれど、問題はその親……らしい。親と子の性格が似るっていうのは本当なのかもしれないわね。
「うう、緊張する……」
「お嬢さま、緊張しすぎるとお身体によろしくはありませんよ? 自然体でいることが一番です」
「わかっているけど……」
ブリーテン家へ向かうことも、もちろん緊張の原因ではあるんだけど、それ以上にハルト様の護衛の方々と向かう方が緊張するというか……。私が乗っている馬車にはハルト様とメルレーンしかいないんだけど。正面に座っているハルト様を見ると、どうしても赤面してしまう。ハルト様は優しく微笑んでくれているんだけど……。
メルレーンは不気味なオーラを発していた。いや、オーラとか感じ取れる不思議体質でもないけど……。
「こういう場所でも愛のときめきが。ふふ、お二人の恋物語を邪魔する輩は、今後も現れませんわね」
「ちょっとメルレーンさん……変なこと言わないでよ。ハルト様にも失礼だし」
「はははは、非常に光栄なことだけどね。本当にメルレーンさんには敵わないよ」
「いけませんわ、ハルト様……あの時の夜みたいに、私を誘惑しているのですね? あの許される禁断の一夜……」
「えっ?」
なんだかメルレーンから聞いてはいけない言葉が聴こえてきたような……。
「ハルト様……? どういうことでしょうか……?」
「待て待て、シエル。落ち着くんだ……メルレーンさんもいい加減にしてほしい」
「もちろん冗談です。お嬢様、緊張の糸は解れましたか?」
「な……まあ、解れたけど……人が悪いわよ」
「申し訳ありませんでした」
メルレーンはびっくりするくらい無表情になっている。その顔だけでも冗談だとすぐにわかる程だ。悪い冗談だったけど、私の緊張を解いてくれたってことなら、まあ良しとしようかな?
-------------------------------
そして、私たちを乗せた馬車はブリーテン家の正門に到着した。用意周到なのか、向こうも既に役者を揃えて待ち構えている。
アグマ・ブリーテン侯爵、メリアーナ・ブリーテン侯爵夫人、そして……カニエル公爵まで正門で待機していたのだから。
「お待ち申し上げておりました、王子殿下。本日の話し合いにはワシも参加させていただきますが、よろしいですな?」
「ああ、構わない」
アランドロ・カニエル公爵……大貴族の一人であり、60歳を迎えているけど、一歩も王子殿下に対して怯む気配を見せていない。それほどの自信があるのかな……ちょっと私も怖くなったんだけど。
別の馬車から現れる人々……例のハルト様の護衛の方々を見たカニエル公爵の顔色は青ざめたものになっていた。
シグマ自体は王太子殿下の怒りを忘れられないのか、屋敷から出ないようにはしているみたいだけれど、問題はその親……らしい。親と子の性格が似るっていうのは本当なのかもしれないわね。
「うう、緊張する……」
「お嬢さま、緊張しすぎるとお身体によろしくはありませんよ? 自然体でいることが一番です」
「わかっているけど……」
ブリーテン家へ向かうことも、もちろん緊張の原因ではあるんだけど、それ以上にハルト様の護衛の方々と向かう方が緊張するというか……。私が乗っている馬車にはハルト様とメルレーンしかいないんだけど。正面に座っているハルト様を見ると、どうしても赤面してしまう。ハルト様は優しく微笑んでくれているんだけど……。
メルレーンは不気味なオーラを発していた。いや、オーラとか感じ取れる不思議体質でもないけど……。
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「ちょっとメルレーンさん……変なこと言わないでよ。ハルト様にも失礼だし」
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「いけませんわ、ハルト様……あの時の夜みたいに、私を誘惑しているのですね? あの許される禁断の一夜……」
「えっ?」
なんだかメルレーンから聞いてはいけない言葉が聴こえてきたような……。
「ハルト様……? どういうことでしょうか……?」
「待て待て、シエル。落ち着くんだ……メルレーンさんもいい加減にしてほしい」
「もちろん冗談です。お嬢様、緊張の糸は解れましたか?」
「な……まあ、解れたけど……人が悪いわよ」
「申し訳ありませんでした」
メルレーンはびっくりするくらい無表情になっている。その顔だけでも冗談だとすぐにわかる程だ。悪い冗談だったけど、私の緊張を解いてくれたってことなら、まあ良しとしようかな?
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そして、私たちを乗せた馬車はブリーテン家の正門に到着した。用意周到なのか、向こうも既に役者を揃えて待ち構えている。
アグマ・ブリーテン侯爵、メリアーナ・ブリーテン侯爵夫人、そして……カニエル公爵まで正門で待機していたのだから。
「お待ち申し上げておりました、王子殿下。本日の話し合いにはワシも参加させていただきますが、よろしいですな?」
「ああ、構わない」
アランドロ・カニエル公爵……大貴族の一人であり、60歳を迎えているけど、一歩も王子殿下に対して怯む気配を見せていない。それほどの自信があるのかな……ちょっと私も怖くなったんだけど。
別の馬車から現れる人々……例のハルト様の護衛の方々を見たカニエル公爵の顔色は青ざめたものになっていた。
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