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8話 ラーデュイとの散歩 その1
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「……」
私は妹のシャルカに促されて、屋敷内の庭園をラーデュイ公爵と歩いている……。その場の雰囲気で簡単に行ってしまったけれど、とても恥ずかしいわ。いえ、ラーデュイ様と歩けるのは名誉なことだし……嬉しくもあるんだけれど。
「もう、シャルカは……」
妹のシャルカは、こちらが見える窓から私達を覗いているみたい。屋敷内のメイド達と一緒に笑っている様子が見受けられた。後で覚えておきなさいよ……。
「なんだか、少し照れ臭いな」
「は、はい……!」
突然のラーデュイ様からの言葉……。私は背筋をピンと伸ばし、いつもよりも高い声をあげてしまった。その様子を見て、ラーデュイ様は笑っている。
「そんなに緊張しないでくれ。私とこうして歩くのは嫌か? 嫌だったとしたら、申し訳ないが……」
「い、いえ……嫌だなんてことは、決してありません!」
嫌だなんてことはあるわけがない。ラーデュイ様の噂は聞いているし、決して悪い人ではないだろうから。でも……アルトファ様に婚約破棄をされて、まだ3日しか経っていない。男性が怖い……という感情を持っていることも確かだった。
「嫌ではない、か。ありがとう、嬉しいよ」
「いえ……とんでもないです」
屋敷内の庭園を一緒に歩いているだけ……ラーデュイ様も特別何か、重要な話を振って来ることもなかった。ラーデュイ様はどういう気持ちで、私との散歩を承諾したんだろう? 少し気になってしまう。
「なんだか、不思議なものだな」
「不思議……ですか?」
「ああ。貴殿とこうして歩いているのは、本当に不思議だ」
「た、確かに……出会いからして、不思議でしたね」
「そうだな……まさか、あれほどダイレクトに婚約破棄の現場に立ち会うとは思ってもみなかったよ」
「左様でございますか……」
私はやはり、申し訳ないという気持ちで一杯になっていた。それを口にするとラーデュイ様としては嫌がるかと思ったので黙っているけれど。
「私は……まあ、公爵という肩書きもあってか、女性経験が豊富だと言われている」
「た、確かに……ラーデュイ様は、そのように見えますね」
「いや、こう見えても、女性経験など、あまりないさ。年齢的な物もあるにはあるが……」
そう言えば、ラーデュイ様は実年齢の割には、上に見られると聞いたことがあるかも……。
「しかし、それは大きな誤解だ。そして……一目惚れ、というのをしてしまう程の人物なんだ」
「ら、ラーデュイ様……?」
なんだか妙な雰囲気を感じ、私はどうしたらいいのかわからなかった。
「あ、あの、その……」
「もしも、セリナ嬢さえよければ……今後もこういう関係を続けて行きたいんだが……」
ラーデュイ様の顔は、ほんのり赤くなっているようにも感じられた。公爵様からの一目惚れという言葉……私はその言葉が、頭の中で何周もしているのを感じ取っていた……。
私は妹のシャルカに促されて、屋敷内の庭園をラーデュイ公爵と歩いている……。その場の雰囲気で簡単に行ってしまったけれど、とても恥ずかしいわ。いえ、ラーデュイ様と歩けるのは名誉なことだし……嬉しくもあるんだけれど。
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妹のシャルカは、こちらが見える窓から私達を覗いているみたい。屋敷内のメイド達と一緒に笑っている様子が見受けられた。後で覚えておきなさいよ……。
「なんだか、少し照れ臭いな」
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突然のラーデュイ様からの言葉……。私は背筋をピンと伸ばし、いつもよりも高い声をあげてしまった。その様子を見て、ラーデュイ様は笑っている。
「そんなに緊張しないでくれ。私とこうして歩くのは嫌か? 嫌だったとしたら、申し訳ないが……」
「い、いえ……嫌だなんてことは、決してありません!」
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「嫌ではない、か。ありがとう、嬉しいよ」
「いえ……とんでもないです」
屋敷内の庭園を一緒に歩いているだけ……ラーデュイ様も特別何か、重要な話を振って来ることもなかった。ラーデュイ様はどういう気持ちで、私との散歩を承諾したんだろう? 少し気になってしまう。
「なんだか、不思議なものだな」
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「ああ。貴殿とこうして歩いているのは、本当に不思議だ」
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「そうだな……まさか、あれほどダイレクトに婚約破棄の現場に立ち会うとは思ってもみなかったよ」
「左様でございますか……」
私はやはり、申し訳ないという気持ちで一杯になっていた。それを口にするとラーデュイ様としては嫌がるかと思ったので黙っているけれど。
「私は……まあ、公爵という肩書きもあってか、女性経験が豊富だと言われている」
「た、確かに……ラーデュイ様は、そのように見えますね」
「いや、こう見えても、女性経験など、あまりないさ。年齢的な物もあるにはあるが……」
そう言えば、ラーデュイ様は実年齢の割には、上に見られると聞いたことがあるかも……。
「しかし、それは大きな誤解だ。そして……一目惚れ、というのをしてしまう程の人物なんだ」
「ら、ラーデュイ様……?」
なんだか妙な雰囲気を感じ、私はどうしたらいいのかわからなかった。
「あ、あの、その……」
「もしも、セリナ嬢さえよければ……今後もこういう関係を続けて行きたいんだが……」
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