5 / 86
初めての実戦は唐突に
しおりを挟む
鍛冶屋ダインの場所はわかる。
走れば数分以内には着くだろう。
だけど後少しという所で、突然叫び声が聞こえてきた。
「くそっ! あっちにいきやがれ!」
「おじいちゃん⋯⋯怖いよう」
「ネネ、ここは私に任せてこの少年と逃げるんだ」
声の質からして少年、少女、大人の男性といった所か。
そしておそらく少年の声はドイズだ。
俺は声が聞こえてきた方へ向かうため、建物を右に曲がる。するとそこには、五匹の魔物に襲われたドイズ達の姿があった。
おそらく少女がネネちゃんで、大人の白髪の男性はネネちゃんの祖父だろう。
ドイズとおじいさんはそれぞれ手に槍と斧を持って牽制しているが、二人は防戦一方だ。
なるほど。なぜこんなに早く魔物が街に侵入しているか疑問だったが、すぐにその理由がわかった。
五匹の魔物は空を飛んでいるからだ。
西門にいる冒険者達を飛び越してここまで来たのだろう。
三人を取り囲んでいる魔物のうち四匹は、女性の頭に鳥の翼と足を持っているハーピーだ。そしてハーピーの背後で様子を窺っているのは、ライオンの胴体に鷲の頭と翼を持っているグリフォンだ。
ハーピーはともかくグリフォンはかなりでかいな。おそらく三メートルくらいはあるんじゃなかろうか。
あの爪で引き裂かれたら、一撃で致命傷を負いかねない。
「ぐあっ!」
突然ドイズの声が辺りに鳴り響く。
どうやらハーピーの爪が左肩を切り裂いたようだ。
「ドイズくん大丈夫!」
「大丈夫だ。ネネちゃんは早くじいさんとこの場を離れるんだ」
ドイズの肩から血が地面に滴り落ちる。
痛いだろうに中々男を見せるじゃないか。そういう子は嫌いじゃない。
だが明らかに強がっているというのはわかる。このままだと三人は殺されてしまう。
俺は腰に差した剣を取り、気配を消しながらハーピー達の所に向かう。
だがこの時周囲に異変がおきた。
突然、ハーピーやグリフォンはもちろんのこと、すべての生物の動きが止まったのだ。
そして自動的に古文書が俺の前に現れる。
「これが皇帝時間か」
確かにそのようなスキルがあるわかっていたが、実際に周囲の時が止まると驚いてしまう。
女神の祝福を受けた時、俺の頭の中に入ってきたことは⋯⋯
・攻撃を受ける前、またはバトルが始まる時は必ず皇帝時間に突入する。
・皇帝時間中は使用者以外の時が止まる。
・皇帝時間に突入したら、カードを五枚引き、バトルで使用するカードをセットできる。セットした後、皇帝時間は解除される。
・カードは全部で十枚持てるが、バトル中は古文書にセットした五枚しか使用できない。しかしレベルが上がることで持てるカードの枚数は増えていく。
・バトル中カードが0枚になると死亡する。対象の敵が死亡、戦意不能、逃走した場合はカードが復活する(ただし使用した消耗品カードは戻らない)。
・対象から一定以上の距離を取った場合、バトルは中止となる。
・物をカードにすることが出来る。
・カードにはレベルがあり、Nカード(⭐1)、Rカード(⭐2)、Sレアカード(⭐3)、SSRカード(⭐4)、URカード(⭐5以上)とする。
まず目に止まったのが皇帝時間というスキルだ。
時が止まるなどチートスキルだと思ったけど、残念ながら強力すぎるスキルには欠点もあった。
皇帝時間中は半径一メートルしか動くことが出来ず、相手を攻撃することや、カードを使うことも出来ない。
要はこの時間はカードを引いてセットすることしか出来ないという訳だ。
だけど実際に皇帝時間に入ってみないとわからなかったか、このスキルはかなり使える。例えカード引くためのものであっても、俺に取ってはかなり有用なスキルだ。
そしてバトル中にはカードを五枚しか使えない。0枚になると死亡とは、かなりリスクが高い。五枚使えるが実質四枚しか使えないようなものだ。
それとこのままではカードを使用出来ないので、古文書にセットする必要がある。
俺は手持ちのカードを引こうとすると、突然古文書の中にあるカードが裏表示で重なって出てきた。
「これは引けってことなのかな?」
元々手持ちのカードは四枚しかないから引いても意味ないような気がするけど⋯⋯まさか。
俺はあることに気づいてしまった。
これはどのカードを引くか選べないということなのか。
今は手持ちが四枚しかないから、五枚引くとなると自動的にこの四枚が選ばれることになる。だけど手持ちのカードが十枚あって裏表示から引くとなると、欲しいカードが引けない可能性がある。
これは後で検証が必要だな。
ともかく今はこの四枚から引くしかない。
「ドロー!」
俺はカードを引き、四枚のカードを古文書に最初のページにセットした。
すると周囲の時が進み、世界が動き始める。
「まずはこのカードを使う!」
俺は一枚のカードを手に取り、宣言するのだった。
走れば数分以内には着くだろう。
だけど後少しという所で、突然叫び声が聞こえてきた。
「くそっ! あっちにいきやがれ!」
「おじいちゃん⋯⋯怖いよう」
「ネネ、ここは私に任せてこの少年と逃げるんだ」
声の質からして少年、少女、大人の男性といった所か。
そしておそらく少年の声はドイズだ。
俺は声が聞こえてきた方へ向かうため、建物を右に曲がる。するとそこには、五匹の魔物に襲われたドイズ達の姿があった。
おそらく少女がネネちゃんで、大人の白髪の男性はネネちゃんの祖父だろう。
ドイズとおじいさんはそれぞれ手に槍と斧を持って牽制しているが、二人は防戦一方だ。
なるほど。なぜこんなに早く魔物が街に侵入しているか疑問だったが、すぐにその理由がわかった。
五匹の魔物は空を飛んでいるからだ。
西門にいる冒険者達を飛び越してここまで来たのだろう。
三人を取り囲んでいる魔物のうち四匹は、女性の頭に鳥の翼と足を持っているハーピーだ。そしてハーピーの背後で様子を窺っているのは、ライオンの胴体に鷲の頭と翼を持っているグリフォンだ。
ハーピーはともかくグリフォンはかなりでかいな。おそらく三メートルくらいはあるんじゃなかろうか。
あの爪で引き裂かれたら、一撃で致命傷を負いかねない。
「ぐあっ!」
突然ドイズの声が辺りに鳴り響く。
どうやらハーピーの爪が左肩を切り裂いたようだ。
「ドイズくん大丈夫!」
「大丈夫だ。ネネちゃんは早くじいさんとこの場を離れるんだ」
ドイズの肩から血が地面に滴り落ちる。
痛いだろうに中々男を見せるじゃないか。そういう子は嫌いじゃない。
だが明らかに強がっているというのはわかる。このままだと三人は殺されてしまう。
俺は腰に差した剣を取り、気配を消しながらハーピー達の所に向かう。
だがこの時周囲に異変がおきた。
突然、ハーピーやグリフォンはもちろんのこと、すべての生物の動きが止まったのだ。
そして自動的に古文書が俺の前に現れる。
「これが皇帝時間か」
確かにそのようなスキルがあるわかっていたが、実際に周囲の時が止まると驚いてしまう。
女神の祝福を受けた時、俺の頭の中に入ってきたことは⋯⋯
・攻撃を受ける前、またはバトルが始まる時は必ず皇帝時間に突入する。
・皇帝時間中は使用者以外の時が止まる。
・皇帝時間に突入したら、カードを五枚引き、バトルで使用するカードをセットできる。セットした後、皇帝時間は解除される。
・カードは全部で十枚持てるが、バトル中は古文書にセットした五枚しか使用できない。しかしレベルが上がることで持てるカードの枚数は増えていく。
・バトル中カードが0枚になると死亡する。対象の敵が死亡、戦意不能、逃走した場合はカードが復活する(ただし使用した消耗品カードは戻らない)。
・対象から一定以上の距離を取った場合、バトルは中止となる。
・物をカードにすることが出来る。
・カードにはレベルがあり、Nカード(⭐1)、Rカード(⭐2)、Sレアカード(⭐3)、SSRカード(⭐4)、URカード(⭐5以上)とする。
まず目に止まったのが皇帝時間というスキルだ。
時が止まるなどチートスキルだと思ったけど、残念ながら強力すぎるスキルには欠点もあった。
皇帝時間中は半径一メートルしか動くことが出来ず、相手を攻撃することや、カードを使うことも出来ない。
要はこの時間はカードを引いてセットすることしか出来ないという訳だ。
だけど実際に皇帝時間に入ってみないとわからなかったか、このスキルはかなり使える。例えカード引くためのものであっても、俺に取ってはかなり有用なスキルだ。
そしてバトル中にはカードを五枚しか使えない。0枚になると死亡とは、かなりリスクが高い。五枚使えるが実質四枚しか使えないようなものだ。
それとこのままではカードを使用出来ないので、古文書にセットする必要がある。
俺は手持ちのカードを引こうとすると、突然古文書の中にあるカードが裏表示で重なって出てきた。
「これは引けってことなのかな?」
元々手持ちのカードは四枚しかないから引いても意味ないような気がするけど⋯⋯まさか。
俺はあることに気づいてしまった。
これはどのカードを引くか選べないということなのか。
今は手持ちが四枚しかないから、五枚引くとなると自動的にこの四枚が選ばれることになる。だけど手持ちのカードが十枚あって裏表示から引くとなると、欲しいカードが引けない可能性がある。
これは後で検証が必要だな。
ともかく今はこの四枚から引くしかない。
「ドロー!」
俺はカードを引き、四枚のカードを古文書に最初のページにセットした。
すると周囲の時が進み、世界が動き始める。
「まずはこのカードを使う!」
俺は一枚のカードを手に取り、宣言するのだった。
31
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる