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カードマスターの力
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「パワーブースター!」
俺がカードを手に取り宣言すると、自分の身体能力が劇的に上がったのがわかった。
「これは予想以上だな」
俺は今まで感じたことのない風圧を受けながら、疾風のように駆け走る。
「ちくしょう⋯⋯もうダメか」
だけどカードの能力に浮かれている暇はない。ドイズはハーピーの攻撃で剣を失い、地面に膝をついている。
このままだとどうなるか想像に容易い。
だが魔物の思い通りにはさせないぞ。
俺は背後から二匹のハーピーを剣で切り裂く。
するとハーピーは頭から真っ二つに身体が分かれ、地面に落ちる。
「なっ!」
ドイズが驚きの声をあげた。
だがその気持ちはわかる。自分が苦戦していた魔物が一瞬で消えてなくなったのだ。
「お、お前は⋯⋯没落貴族!」
この後に及んでこいつは⋯⋯
一瞬俺の中で見捨てるという選択肢が浮かんできた。
「い、今のはお前が倒したのか?」
俺は頷く。
「ありがとう。まじで助かった」
なんだ。ちゃんと礼を言うことは出来るのか。それなら助けてやってもいい。
「後は僕がやるから君達は東側に逃げて」
「お前一人で? それは無茶だ! あのデカイ化物が見えないのか?」
ドイズがいうデカイ化物はグリフォンのことだろう。
グリフォンはハーピーが殺られたというのに、変わらずこちらの様子を窺っていた。
だがそれはこちらにとっては好都合だ。今のうちにハーピーを倒す。
だからここでドイズと問答している暇はない。
「不遇職のお前に何が出来る。俺も戦う」
「その怪我で? 僕は君が苦戦したハーピーを二匹倒している。それに君にとって一番大切なことはなに?」
「そ、それは⋯⋯」
俺の言葉にドイズはネネちゃんに視線を向ける。
誰も頼る人がいない状況ならわかるが、今は生き残る方法を取るのが最善だ。
命を失ったら何もならないからな。
「くっ! 屈辱だがここは任せていいのか」
「もちろん。君はネネちゃんとおじいさんを連れて東側に逃げて下さい」
「わかった。じいさんもいいか!」
「わ、わかった」
幸いなことにハーピーは仲間が殺られて戸惑っているのか、こちらに攻撃をして来なかった。
俺は剣をハーピーに向けて、三人が退避出来るよう牽制する。
「ユートくん⋯⋯ありがとう」
ネネちゃんの声が聞こえた後、程なくして背後から三人の気配が消えた。
さて、後はこの魔物達を倒すだけだ。
それにしてもハーピーは何故攻撃をして来なかったのだろう。
その答えはすぐにわかった。
手元をよく見るとハーピーは震えていた。
おそらく仲間が瞬時に殺され、俺に恐れをなしているのだろう。
俺は一歩前に出ると、二匹のハーピーは飛び上がり西側へと逃げていく。
「命拾いしたな」
あのまま向かってきたら、叩き斬る自信はあった。
本能で悟ったのかわからないけど、逃げたのは正解だと思う。
しかし未だに逃げない魔物もいる。
それは先程からこちらの様子を窺っているグリフォンだ。
これだけ大きな魔物は今まで見たことがない。
確か冒険者ギルドでは、Bランクのパーティーでやっと倒せるレベルの魔物だと聞いたことがある。
だがパワーブースターで強化された俺なら、倒せない相手ではないはず。
俺はグリフォンに向かって殺気を放つ。
するとグリフォンは翼を使って、ゆっくりと上空へ飛び上がり始めた。
「逃げるのか?」
しかし俺の予想とは違い、グリフォンは上空五メートル付近でホバリングをしていた。
何だ? 何をするつもりだ?
俺はグリフォンの動きを警戒し、身構える。
するとグリフォンは口を大きく開けてきた。
「まさか俺を食うつもりなのか? だが近づいた時がお前の最後。先程のハーピーのように、真っ二つに切り裂いてやる」
パワーブースターの恩恵が大きいため、どんな攻撃が来ようと、降りてくれば倒せる自信があった。
しかしグリフォンは、俺の予想に反した行動を取ってくる。
大きく開けた口から炎を放ってきたのだ。
「くっ!」
俺は向かってきた炎をひらりとかわす。
だがグリフォンは次々と炎を放ってきたため、防戦一方になってしまう。
「厄介なことを」
パワーブースターで力や素早さが増しているから、ジャンプして届かない距離ではない。だけど宙に浮いている最中は無防備なため、軽々しく行動に移ることは出来ない。
そしてそれがわかっているから、グリフォンは宙に浮いたまま俺に攻撃を仕掛けて来ているのだ。
グリフォンの炎は家屋を焼き払い、ドイズが持っていた鉄の槍を容易に溶かしている。
「これは一撃でも食らえば、俺もただじゃ済まないな」
「キェェッ!」
グリフォンは、一方的に攻撃することが出来て気分がいいのか、けたたましい声で雄叫びを上げる。
俺が魔法の一つでも使えれば、グリフォンを宙から叩き落としてやるのに。だけど残念ながら俺は魔法は使えない。
だけど俺にはカードマスターのジョブがある。
調子に乗っているグリフォンに、目に物を見せてやる。
俺は古文書から一枚のカードを引く。
そしてそのカードをグリフォンの上空へと、投げるのであった。
俺がカードを手に取り宣言すると、自分の身体能力が劇的に上がったのがわかった。
「これは予想以上だな」
俺は今まで感じたことのない風圧を受けながら、疾風のように駆け走る。
「ちくしょう⋯⋯もうダメか」
だけどカードの能力に浮かれている暇はない。ドイズはハーピーの攻撃で剣を失い、地面に膝をついている。
このままだとどうなるか想像に容易い。
だが魔物の思い通りにはさせないぞ。
俺は背後から二匹のハーピーを剣で切り裂く。
するとハーピーは頭から真っ二つに身体が分かれ、地面に落ちる。
「なっ!」
ドイズが驚きの声をあげた。
だがその気持ちはわかる。自分が苦戦していた魔物が一瞬で消えてなくなったのだ。
「お、お前は⋯⋯没落貴族!」
この後に及んでこいつは⋯⋯
一瞬俺の中で見捨てるという選択肢が浮かんできた。
「い、今のはお前が倒したのか?」
俺は頷く。
「ありがとう。まじで助かった」
なんだ。ちゃんと礼を言うことは出来るのか。それなら助けてやってもいい。
「後は僕がやるから君達は東側に逃げて」
「お前一人で? それは無茶だ! あのデカイ化物が見えないのか?」
ドイズがいうデカイ化物はグリフォンのことだろう。
グリフォンはハーピーが殺られたというのに、変わらずこちらの様子を窺っていた。
だがそれはこちらにとっては好都合だ。今のうちにハーピーを倒す。
だからここでドイズと問答している暇はない。
「不遇職のお前に何が出来る。俺も戦う」
「その怪我で? 僕は君が苦戦したハーピーを二匹倒している。それに君にとって一番大切なことはなに?」
「そ、それは⋯⋯」
俺の言葉にドイズはネネちゃんに視線を向ける。
誰も頼る人がいない状況ならわかるが、今は生き残る方法を取るのが最善だ。
命を失ったら何もならないからな。
「くっ! 屈辱だがここは任せていいのか」
「もちろん。君はネネちゃんとおじいさんを連れて東側に逃げて下さい」
「わかった。じいさんもいいか!」
「わ、わかった」
幸いなことにハーピーは仲間が殺られて戸惑っているのか、こちらに攻撃をして来なかった。
俺は剣をハーピーに向けて、三人が退避出来るよう牽制する。
「ユートくん⋯⋯ありがとう」
ネネちゃんの声が聞こえた後、程なくして背後から三人の気配が消えた。
さて、後はこの魔物達を倒すだけだ。
それにしてもハーピーは何故攻撃をして来なかったのだろう。
その答えはすぐにわかった。
手元をよく見るとハーピーは震えていた。
おそらく仲間が瞬時に殺され、俺に恐れをなしているのだろう。
俺は一歩前に出ると、二匹のハーピーは飛び上がり西側へと逃げていく。
「命拾いしたな」
あのまま向かってきたら、叩き斬る自信はあった。
本能で悟ったのかわからないけど、逃げたのは正解だと思う。
しかし未だに逃げない魔物もいる。
それは先程からこちらの様子を窺っているグリフォンだ。
これだけ大きな魔物は今まで見たことがない。
確か冒険者ギルドでは、Bランクのパーティーでやっと倒せるレベルの魔物だと聞いたことがある。
だがパワーブースターで強化された俺なら、倒せない相手ではないはず。
俺はグリフォンに向かって殺気を放つ。
するとグリフォンは翼を使って、ゆっくりと上空へ飛び上がり始めた。
「逃げるのか?」
しかし俺の予想とは違い、グリフォンは上空五メートル付近でホバリングをしていた。
何だ? 何をするつもりだ?
俺はグリフォンの動きを警戒し、身構える。
するとグリフォンは口を大きく開けてきた。
「まさか俺を食うつもりなのか? だが近づいた時がお前の最後。先程のハーピーのように、真っ二つに切り裂いてやる」
パワーブースターの恩恵が大きいため、どんな攻撃が来ようと、降りてくれば倒せる自信があった。
しかしグリフォンは、俺の予想に反した行動を取ってくる。
大きく開けた口から炎を放ってきたのだ。
「くっ!」
俺は向かってきた炎をひらりとかわす。
だがグリフォンは次々と炎を放ってきたため、防戦一方になってしまう。
「厄介なことを」
パワーブースターで力や素早さが増しているから、ジャンプして届かない距離ではない。だけど宙に浮いている最中は無防備なため、軽々しく行動に移ることは出来ない。
そしてそれがわかっているから、グリフォンは宙に浮いたまま俺に攻撃を仕掛けて来ているのだ。
グリフォンの炎は家屋を焼き払い、ドイズが持っていた鉄の槍を容易に溶かしている。
「これは一撃でも食らえば、俺もただじゃ済まないな」
「キェェッ!」
グリフォンは、一方的に攻撃することが出来て気分がいいのか、けたたましい声で雄叫びを上げる。
俺が魔法の一つでも使えれば、グリフォンを宙から叩き落としてやるのに。だけど残念ながら俺は魔法は使えない。
だけど俺にはカードマスターのジョブがある。
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