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新たな目標
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トアはこちらに視線を向ける。
どうなんだ? 少なくとも竜の血を飲むことで、悪い影響は受けていないように見えるが。
そしてトアはゆっくりと身体の向きを変え、そして地面に降り立つ。
「身体に⋯⋯身体に力が入るよお兄ちゃん」
「トア!」
俺は嬉しさのあまり、大声を上げてしまう。
本当はトアを抱きしめてやりたいが、何とか堪える。
「良かった⋯⋯良かったよトアちゃん」
「ユート様、トア様おめでとうございます」
「ユートくん良かったね」
「さすが我の血だな」
トアが立つ姿を見て、みんなも歓喜の言葉を口にする。
「あれ? お兄ちゃん。そちらの方達は?」
そういえば、まだ二人を紹介してなかった。
「こちらはルリシアさん。帝国のお姫様だ。そして竜のルビーさん。二人ともトアの身体を治すために協力してくれたんだ」
「えっ? ちょっと待って。お兄ちゃん今なんて言ったの?」
「こちらはルリシアさんでこっちはルビーさん」
「そうじゃなくて」
「帝国のお姫様と竜?」
「帝国のお姫様と竜って、お兄ちゃんはすごい人達とお友達になったんだね」
おお⋯⋯セリカさんとソルトさんに二人を紹介した時はすごく驚いていたのに、トアは冷静だな。動じない妹に感心してしまう。
「ルリシア様、ルビー様、私の身体を治してくれてありがとう」
「様をつけなくていいよ⋯⋯お姉ちゃんって呼んでくれると嬉しいな」
「わ、我もお姉ちゃんと呼んでくれてかまわんぞ。なんせ三百年は生きておるからな」
「うん。ルリシア⋯⋯お姉ちゃん。ルビー⋯⋯お姉ちゃん」
トアはお姉ちゃんと呼ぶのが恥ずかしいのか、少し顔を赤くして照れていた。
「か、可愛い⋯⋯私、弟も欲しかったけど妹も欲しかったの」
「し、仕方ないのう。我がそなたのお姉ちゃんになってやるぞ」
さ、さすがトアだ。その可愛らしさでルリシアさんとルビーさんを一瞬にして虜にしてしまったようだ。
「トア、その⋯⋯目は見えているのか? 耳は聞こえているのか?」
俺は気になっていることを聞いてみる。竜の血を飲んだことでもしかしてその二つの症状もなくなったんじゃないか? 筋力低下が改善されたことで、淡い期待を持ってしまう。
そしてトアの答えは⋯⋯
ここにいる者達の目がトアへと注がれる。
だが俺の思いは叶わず、トアはゆっくりと横に首を振る。
「目はほとんど見えないし、みなさんの声も小声でしか聞こえないです」
そう簡単にはいかないか。
俺は心の中でガッカリしてしまう。
だけど三つの内、一つの症状が治ったんだ。それなら残り二つの症状を治すため、また治療方法を探せばいいだけだ。
「そっか。だけどお兄ちゃんがトアの目と耳も治してやるからな」
「うん。でも無理はしないでね」
可愛い妹のためだ。無理はするさ。
だけどそれを口にすると心配をかけてしまうので言わない。
俺はどんなに難問でも、必ずトアの病を治すことを心の中で誓うのだった。
そしてセリカさんを部屋に残して、俺達は外に出る。
ちなみにキュアキャットに関してはトアの体調が心配なので、そのまま側にいてもらうことにした。それにトアは回復の効果がなくてもキュアキャットのことを気に入っているので、離すようなことはしたくなかったという理由もある。
さて、これからどうするか。
さっきはトアの前だから必ず治すと言ってしまったけど、その方法が全くわからない。
「それじゃあ私はお城に帰るね」
ここでルリシアさんとお別れか。少し寂しいな。
でもルビーさんの所に行く許可はもらったけど、長い期間連れ出したら皇帝陛下は怒りそうだ。そしてその怒りは必ず俺の方に向くだろう。
「禁書庫でトアちゃんの病を治す方法を見つけて連絡するから、待っててね」
「あ、ありがとうございます」
「我もトアの治療方法を探してみる。一番上のお姉ちゃんとしてルリシアより先に見つけてみせるぞ」
「私も負けないわよ」
二人はこれからもトアの治療方法を探すと言ってくれた。こんなに心強いことはない。
「では少しでも早く調べられるように、我の翼で帝都まで送ってやろう」
「えっ? それは⋯⋯」
「僕もルリシアさんのことが心配だから、ルビーさんに送ってもらった方がいいと思うよ」
さすがにお姫様が護衛もなく、一人で帰るのはどうかと思う。
空から帝都に戻れば、悪い奴らがルリシアさんを襲うことは不可能だからな。
「そう⋯⋯ユートくんがそう言うなら」
「では行くぞ」
突然ルビーさんがルリシアを背中に乗せる。
「ちょ、ちょっと待って! まだ心の準備が!」
「そのようなもの必要ない。目を閉じておれば一瞬じゃ」
ルビーさんの身体が光り、眩しくて目を閉じる。
次に目を開けた時、そこには赤い大きな竜がいた。
「それではさらばじゃ!」
「ヒィィィィッ!」
そしてルビーさんは飛び去ると、ルリシアさんの悲鳴が辺りに木霊するのであった。
どうなんだ? 少なくとも竜の血を飲むことで、悪い影響は受けていないように見えるが。
そしてトアはゆっくりと身体の向きを変え、そして地面に降り立つ。
「身体に⋯⋯身体に力が入るよお兄ちゃん」
「トア!」
俺は嬉しさのあまり、大声を上げてしまう。
本当はトアを抱きしめてやりたいが、何とか堪える。
「良かった⋯⋯良かったよトアちゃん」
「ユート様、トア様おめでとうございます」
「ユートくん良かったね」
「さすが我の血だな」
トアが立つ姿を見て、みんなも歓喜の言葉を口にする。
「あれ? お兄ちゃん。そちらの方達は?」
そういえば、まだ二人を紹介してなかった。
「こちらはルリシアさん。帝国のお姫様だ。そして竜のルビーさん。二人ともトアの身体を治すために協力してくれたんだ」
「えっ? ちょっと待って。お兄ちゃん今なんて言ったの?」
「こちらはルリシアさんでこっちはルビーさん」
「そうじゃなくて」
「帝国のお姫様と竜?」
「帝国のお姫様と竜って、お兄ちゃんはすごい人達とお友達になったんだね」
おお⋯⋯セリカさんとソルトさんに二人を紹介した時はすごく驚いていたのに、トアは冷静だな。動じない妹に感心してしまう。
「ルリシア様、ルビー様、私の身体を治してくれてありがとう」
「様をつけなくていいよ⋯⋯お姉ちゃんって呼んでくれると嬉しいな」
「わ、我もお姉ちゃんと呼んでくれてかまわんぞ。なんせ三百年は生きておるからな」
「うん。ルリシア⋯⋯お姉ちゃん。ルビー⋯⋯お姉ちゃん」
トアはお姉ちゃんと呼ぶのが恥ずかしいのか、少し顔を赤くして照れていた。
「か、可愛い⋯⋯私、弟も欲しかったけど妹も欲しかったの」
「し、仕方ないのう。我がそなたのお姉ちゃんになってやるぞ」
さ、さすがトアだ。その可愛らしさでルリシアさんとルビーさんを一瞬にして虜にしてしまったようだ。
「トア、その⋯⋯目は見えているのか? 耳は聞こえているのか?」
俺は気になっていることを聞いてみる。竜の血を飲んだことでもしかしてその二つの症状もなくなったんじゃないか? 筋力低下が改善されたことで、淡い期待を持ってしまう。
そしてトアの答えは⋯⋯
ここにいる者達の目がトアへと注がれる。
だが俺の思いは叶わず、トアはゆっくりと横に首を振る。
「目はほとんど見えないし、みなさんの声も小声でしか聞こえないです」
そう簡単にはいかないか。
俺は心の中でガッカリしてしまう。
だけど三つの内、一つの症状が治ったんだ。それなら残り二つの症状を治すため、また治療方法を探せばいいだけだ。
「そっか。だけどお兄ちゃんがトアの目と耳も治してやるからな」
「うん。でも無理はしないでね」
可愛い妹のためだ。無理はするさ。
だけどそれを口にすると心配をかけてしまうので言わない。
俺はどんなに難問でも、必ずトアの病を治すことを心の中で誓うのだった。
そしてセリカさんを部屋に残して、俺達は外に出る。
ちなみにキュアキャットに関してはトアの体調が心配なので、そのまま側にいてもらうことにした。それにトアは回復の効果がなくてもキュアキャットのことを気に入っているので、離すようなことはしたくなかったという理由もある。
さて、これからどうするか。
さっきはトアの前だから必ず治すと言ってしまったけど、その方法が全くわからない。
「それじゃあ私はお城に帰るね」
ここでルリシアさんとお別れか。少し寂しいな。
でもルビーさんの所に行く許可はもらったけど、長い期間連れ出したら皇帝陛下は怒りそうだ。そしてその怒りは必ず俺の方に向くだろう。
「禁書庫でトアちゃんの病を治す方法を見つけて連絡するから、待っててね」
「あ、ありがとうございます」
「我もトアの治療方法を探してみる。一番上のお姉ちゃんとしてルリシアより先に見つけてみせるぞ」
「私も負けないわよ」
二人はこれからもトアの治療方法を探すと言ってくれた。こんなに心強いことはない。
「では少しでも早く調べられるように、我の翼で帝都まで送ってやろう」
「えっ? それは⋯⋯」
「僕もルリシアさんのことが心配だから、ルビーさんに送ってもらった方がいいと思うよ」
さすがにお姫様が護衛もなく、一人で帰るのはどうかと思う。
空から帝都に戻れば、悪い奴らがルリシアさんを襲うことは不可能だからな。
「そう⋯⋯ユートくんがそう言うなら」
「では行くぞ」
突然ルビーさんがルリシアを背中に乗せる。
「ちょ、ちょっと待って! まだ心の準備が!」
「そのようなもの必要ない。目を閉じておれば一瞬じゃ」
ルビーさんの身体が光り、眩しくて目を閉じる。
次に目を開けた時、そこには赤い大きな竜がいた。
「それではさらばじゃ!」
「ヒィィィィッ!」
そしてルビーさんは飛び去ると、ルリシアさんの悲鳴が辺りに木霊するのであった。
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