没落貴族のやりすぎ異世界転生者は妹の病を治すため奔走する~しかし僕は知らなかった。どうやらこの世界はショタ好きが多いようです~

マーラッシュ

文字の大きさ
55 / 86

親しき中にも礼儀あり

しおりを挟む
「何だか騒がしい方達でしたね」

 俺とセリカさん、ソルトさんは飛び立つ竜を見送る。

「でも二人共良い人だから、セリカさんとソルトさんも仲良くしてくれると嬉しいな」
「そ、そうですね」
「トア様の命の恩人でもありますからね。承知しました」

 ソルトさんは冷静に答えていたけどセリカさんは目が泳いでいた。
 やっぱり帝都のお姫様だから気後れしちゃってるのかな?

「セリカさんはルリシアさんのことが苦手なの?」
「そそそ、そんなことないですよ」
「すごくそんなことあるように見えるけど。ルリシアさんは本当に良い人だよ。いきなり無礼者って剣で斬りつけるようなことはしないから」
「いくら皇族でもそれはヤバい人なのでは?」

 実は父親の皇帝陛下が、そのヤバい奴だってことは言わないでおこう。セリカさんが益々萎縮してしまうからな。

「ユート様⋯⋯体調が良くなられたからといって、トア様を一人にするのは心配です」
「そうだね。セリカさんトアのことお願い出来ますか?」
「も、もちろんです! では行って参りま~す」

 セリカさんは少し慌てた様子で、屋敷の中へと走っていく。
 何だかソルトさんが上手く助け船を出したようにも見えたけど、今の俺はただの十歳の子供だから、そのことを指摘しない。

「ユート様が今回護衛をされたのはルリシア様だったんですね」
「うん」
「突然侯爵家の使いの者から、ユート様が帰って来られないと聞いて心配しました」
「ごめんなさい。冒険者ギルドの依頼を受けたらボルゲーノ侯爵に気に入られちゃってそれで」
「今皇族は後継者争いで危険な場所となっています。出来ればユート様には近づいてほしくないのですが」
「それならもう大丈夫だよ」
「どういうことでしょうか?」
「もうその人達は死んじゃったから」
「ど、どういうことでしょうか?」

 ソルトさんが驚きの表情を浮かべている。
 狼狽えている姿を初めて見た。
 ソルトさんはどんな時でも冷静沈着だからな。それだけ皇族の争いが終わったことが、信じられないことだったのだろうか。

「え~と皇帝陛下の弟さんが――」

 俺は帝都で起こったことをソルトさんに話す。
 もしかしたらさすがです、ユート様って褒めてもらえるのかな?
 俺はそんな光景を頭に思い浮かべていたが、実際には違った。

「ユート様」

 ソルトさんは突然しゃがみ込み、俺と目線を合わす。

「無事で良かった⋯⋯本当に良かったです」

 そしてゆっくりと抱きしめてきた。

「ソルト⋯⋯さん⋯⋯」

 ここまで感情的なソルトさんなんて初めてみた。
 幼き頃、俺とトアが魔物に襲われた時もここまで動揺していなかったのに。
 それだけ皇族に関わることは危険だということなのだろうか。

「私やセリカ、それに何よりトア様を心配させないで下さい」
「う、うん」

 俺はソルトさんの予想していなかった行動に、思わず頷いてしまう。

「さて、それでは私も屋敷に戻ります。ユート様はどうされますか?」
「えっ? あ、うん⋯⋯街に行こうかと」
「左様ですが。お気をつけていってらっしゃいませ」

 そして俺はソルトさんと別れた後、セレノアの街へと足を向けた。
 その時に考えていたことは、もちろんセリカさんとソルトさんのことだ。
 何かあの二人は隠している。
 どう見ても、二人の態度がいつも違った。
 聞いてみたい気持ちもあるけど、隠しているということは知られたくないということだ。
 それにもし俺に必要なことだったら、いつか話してくれるだろう。
 俺はこれ以上詮索しないことを決めた。
 それより今日はやらなくてはならないことがある。
 以前冒険者ギルドから報酬をもらった時、日頃お世話になっているセリカさんとソルトさんに、何かプレゼントをしようと考えていたのだ。
 だけど帝都に行ったり、皇家の墓に行ったりと忙しくて買う暇がなかった。
 だから今日こそはセレノアの街でプレゼントを買う予定だ。

 そして街の東門が見えてきた時、何やらこちらを指差して騒いでいる子供がいた。

「ユート! やっと会えたな!」
「あれは⋯⋯ドイズか」

 しかも俺の名前を呼んでいる。
 何だかあまり良い予感がしないのだが、気のせいだろうか。
 しかし今から引き返す訳にもいかない。
 俺は嫌な予感を覚えつつも街へと足を踏み入れるのであった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...