ある時は狙って追放された元皇族、ある時はFランクのギルドマスター、そしてある時は王都の闇から弱き者を護る異世界転生者

マーラッシュ

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暇な日常は許されない

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「どういうこと!」

 ギルド兼酒場のホールにリーゼロッテの声が響く。
 滅茶苦茶怒っているな。
 美人さんにキッと睨まれると迫力があって、何だか背中がゾクゾクするのは秘密だ。

「どういうことってどういうこと?」
「全然仕事が無いじゃない!」
「まあここはホワイトランクの底辺ギルドだからな。多少お金がかかっても信頼出来るギルドに依頼するんじゃないか?」

 ギルドのランクが低いほど、依頼料も低くなる。依頼人もわざわざ失敗しそうなギルドに頼むことはしないだろう。
 一応特例もあるが、基本依頼を達成するとランクが上がる仕組みになっている。
 依頼がないからカーディナルはホワイトランクなのだ。

「依頼がないのは理解しました。でもこの三日間、あなた達は何をしていましたか?」

 俺とルイ姉は思い当たることがあり、リーゼロッテから目をそらす。

「ユクトは毎日毎日お酒を飲み、外に出たかと思えば酔いを覚ましに行っただけ。ルイさんは掃除と編み物しかしていませんよね? それに他のメンバーはどこにいるのでしょうか? まさか二人だけのギルド、なんて言いませんよね?」

 どうやらリーゼロッテはこの三日間の俺達の行動を見て、憤慨しているようだ。
 真面目な彼女なら仕方のないことなのかもしれない。
 ガルドランドのおっさんからの手紙には、リーゼロッテは真面目過ぎる所があるから、ぐうたらなお前がリーゼロッテの頭の中を柔らかくしてくれと書いてあった。
 誰がぐうたらだとツッコミたい所はあるけど、それは今度直接会った時にしよう。仮にも相手は王国騎士団の騎士団長様だからな。
 ちなみにリーゼロッテがどれくらい頭が固いのかと言うと、集合には一秒遅れただけでも許さないし、悪とされる者に関しては容赦ないらしい。
 だからリーゼロッテにとって、このギルドの現状は許せないのだろう。
 他にも手紙には色々書いてあったけど、本当に厄介な話だ。

「メンバーは、一人はギルドとは別の仕事をしていて、もう一人は街に繰り出して遊んでいる。あと一人は部屋に引きこもっているかな」

 俺は正直にリーゼロッテに伝える。
 するとリーゼロッテはうつむき、肩がワナワナと震え始めた。
 そして顔を上げるとなぜか笑顔だった。
 怒られると思っていたから逆に怖いぞ。リーゼロッテが何を考えているのか読めない。

「私はここにいる意味があるのでしょうか?」
「さあ? それは俺にはわからないな。でも騎士団長様の命令なんだろ?」
「くっ⋯⋯確かにその通りですが⋯⋯」

 やはり俺の思った通りだ。リーゼロッテは規律にうるさいからこそ、上からの命令には逆らえないんだ。
 これはガルドランドからの命令だと言えば、リーゼロッテに言う事を利かせることは容易いかもしれない。

「まあまあリーゼロッテちゃん落ち着いて⋯⋯イライラしている時はハーブティーを飲むと良いよ」

 リーゼロッテの取り乱している姿を見たためか、ルイ姉がカップに入った飲み物を提供する。

「ありが⋯⋯きゃあっ!」

 だがリーゼロッテがカップを受け取ろうとした時に事件が起きた。ルイ姉が飲み物が入ったカップをリーゼロッテに渡そうとしたら、カップの下ソーサーが割れて中身が地面に落ちてしまったのだ。

「ご、ごめんなさい! リーゼロッテちゃんにかかってない!」
「ええ⋯⋯大丈夫です」
「良かったあ⋯⋯すぐに片付けるね」

 ルイ姉は片付けをするための道具を取りに行き、この場を離れる。

「それじゃあここのことはルイ姉に任せて、俺達は仕事に行くぞ」
「ほ、本当ですか!」

 リーゼロッテの目に輝きが戻る。どうやら仕事があることが嬉しいようだ。俺は何事もなく酒でも飲んでいる方が良いけどな。
 このギルドでは定期的にやっていることがある。良い機会だからリーゼロッテにも手伝ってもらおう。

 俺とリーゼロッテはギルドを出る。
 すると外にはいくつかの露店があり、大勢の人の姿が見えた。

「なんでこんなに人が⋯⋯普段の数倍はいるように見えます」
「え~とそれは⋯⋯」

 俺はどうして人が多くいるか説明しようとリーゼロッテに視線を向ける。
 すると傍を通った一人の少年が、果物を売っている露店の前でつまずき、転んでしまった。

「ごめんなさい」

 少年は周囲の人達に軽く頭を下げると、そのまま人混みへと消えていく。
 するとリーゼロッテが突然少年に向かって声を上げる。

「待ちなさい!」

 そしてリーゼロッテは立ち去った少年を追いかけ始めた。
 どうやらリーゼロッテ、今何が起きたか理解していたようだ。

「少し面倒なことになりそうだな」

 俺はそう呟くと、先を行くリーゼロッテを追いかけるため、人混みへと駆けるのであった。
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