ある時は狙って追放された元皇族、ある時はFランクのギルドマスター、そしてある時は王都の闇から弱き者を護る異世界転生者

マーラッシュ

文字の大きさ
4 / 18

固有スキル

しおりを挟む
「はあぁぁぁっ!」

 俺は集中して右手に力を込める。すると手のひらが光り始めた。

「えっ? な、なんですかそれは⋯⋯まさか想像以上に凄いことが⋯⋯」

 リーゼロッテの期待が膨らんでいるのがわかる。

「ふっふっふ⋯⋯とくと見るがいい! これが俺の固有スキルだ!」

 手のひらが一層強く光り始め、目も開けられなくなる。そして光が収まると、俺の手のひらにはある物が乗っていた。

 目を閉じて光を手で遮っていたリーゼロッテが、ゆっくりと目を開ける。そして俺の手のひらにある物を見ると驚きの表情を浮かべていた。

「え~と⋯⋯それは⋯⋯」

 リーゼロッテは俺の手のひらにある物を指差し、疑問の声を上げる。

「これか? これは宝玉だ。綺麗だろ」

 俺の手のひらには直径17ミリ程の透明な宝玉が乗っていた。

「確かに綺麗ですが⋯⋯」
「リーゼロッテにも宝玉の美しさがわかってもらえて何よりだ」
「これを売ってギルドの運営資金に回すということでしょうか? ギルドを存続させるためには重要だと思いますが⋯⋯」

 傍目にも、リーゼロッテが落胆しているのがわかった。想像していた固有スキルと違っていたのだろう。

「いや、この宝玉は一日経つと消えるから売れないぞ」
「何の役にも立たないじゃないですか!」

 リーゼロッテは取り乱し、大きな声で叫び始める。
 冷静沈着な子に見えたが、なかなか感情表現豊かじゃないか。
 俺の人を見る目はまだまだだな。

「団長も何故私をこのような場所に出向させたのか理解出来ません」
「俺もだよ」

 王国騎士団の団長であるガルドランドのおっさんと俺は昔馴染みだ。見た目は豪快という言葉が似合うが、意外と頭も切れるから厄介だ。
 なぜおっさんはリーゼロッテを俺の所に寄越したのか。
 こちらとしては面倒この上ないからこの話は断るとしよう。

「残念だけど今忙しいんだ。出向はなかったことで」
「えっ? 昼間からお酒を飲んでいますよね?」

 確かにリーゼロッテの言う通りだ。今の俺の姿を見て、忙しそうと答えるものはいないだろう。

「 ですがその意見には同意です。なぜホワイトランクのギルドに私が⋯⋯」

 どうやらリーゼロッテは出向に反対のようだ。それにその出向先がホワイトランクということが気に入らないらしい。
 おっさんが何を考えているかわからないが、関係者である俺とリーゼロッテが反対なんだ。この件は破談ということでいいだろう。
 俺は改めて断ろうとするが、リーゼロッテの次の言葉がそれを許さなかった。

「そういえば団長からもし断られたら、優先してやると伝えろと言われましたけど何のことですか?」

 優先してやるか⋯⋯それを言われたら断りにくいじゃないか。

「わかった。リーゼロッテのことを受け入れるよ」
「えっ?」

 リーゼロッテはまさかオッケーが出ると思わなかったのか、驚いた表情をしている。
 そして訝しげな目をして問い詰めてきた。

「どういうことですか? さっきまで反対していたのに⋯⋯そもそも団長とどういう関係ですか? 優先するって何のことですか?」

 リーゼロッテが疑いの目差しを向けてくる。
 何だか怒気も混じっているように感じるのは気の所為か?
 何も答えなかったら、腰に差した二振りの剣を抜いてきそうなくらい迫力があるな。

「優先するって言うのは酒のことだ。ガルドランドのおっさんは酒が好きだろ? 良い酒が入ったら優先して俺にくれるってことだ」
「そうなの? 確かに昼間からお酒を飲んでるくらいだから⋯⋯ね」

 テーブルの上にある酒を見て、俺の言う事を信じてくれたようだ。
 何だか少し釈然としないけどまあいい。これで余計なことを聞かれることはなさそうだ。

「あなたが断ってくれればと思いましたが⋯⋯団長の命令なら仕方ないですね」

 どうやらリーゼロッテは出向について納得はしていないが、認めることにしたようだ。国王に仕える王国騎士団だけあって、命令には忠実なのかもしれないな。

「それと⋯⋯これはガルドランド騎士団長からあなた宛の手紙です」
「ああ⋯⋯ありがとう」

 俺は手紙を受け取り、内容を確認する。
 なるほどね。そういうことか。
 俺は何故リーゼロッテがこのギルドに出向することになったのか理解した。

「それで? 私は何をすればいいの? ギルドに所属したからにはどんな仕事でもやらせてもらうわよ」
「とりあえず今は依頼待ちかな。それまで待機で」
「わかったわ」

 こうして王国騎士団第二部隊副隊長のリーゼロッテが新たにギルドに加わった。
 しかしこの三日後、ギルド兼酒場にリーゼロッテの怒りの声が響くのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。 しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。 やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。 一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。 これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!

処理中です...