ある時は狙って追放された元皇族、ある時はFランクのギルドマスター、そしてある時は王都の闇から弱き者を護る異世界転生者

マーラッシュ

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悪いことをしたらやることは決まっている

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「ごめんなさい!」

 少年は露店の店主に向かって深々と頭を下げる。

「まあ本来なら衛兵に突き出す所だけど、盗まれた物はこの兄ちゃんが買ってくれたしな。今回だけは許してやるよ」
「ありがとうございます!」

 店主のおっさんの言葉に再度頭を下げる。
 これで店主のおっさん側の問題は解決だな。

「あの~」

 女の子がもじもじした様子で俺に話しかけてきた。

「これって食べていいの?」

 手に持ったオレンジをこちらに見せてくる。
 その様子を見て俺はうなずいた。

「これはもう買ったものだからな。食べていいぞ」
「本当!」

 俺の言葉を聞くと、子供達はむしゃむしゃとオレンジを食べ始めた。
 お腹が減っているのか、それとも甘い物に飢えていたのかすごい勢いだな。そしてそんな子供達の様子を食い入るように見つめている視線があった。

「ジ~ッ⋯⋯」

 盗みを働いた少年は、オレンジをむさぼる子供達を羨ましそうに見ている。
 だけど少年は子供達にオレンジがほしいとは一言も言わない。
 その様子に気がついたのか、子供達が少年のもとへと向かう。

「お兄ちゃんも食べる?」
「お、俺は別に腹が減ってる訳じゃないからいらない」
「そうなの?」
「そうだ。だからそのオレンジはお前が食べろ」
「うん⋯⋯わかった」

 やれやれ⋯⋯少年がオレンジを食べたいのを我慢しているのがバレバレだな。
 こんなのを見せられたら、放っておくことなんて出来ないじゃないか。

「あ~⋯⋯もう一つオレンジを貰ってもいいかな?」
「毎度あり」

 店主のおっさんに銅貨を二枚渡し、オレンジを一つ受け取った。そしてこのオレンジを少年へと投げる。

「えっ?」

 少年は驚いた表情をしながら、オレンジを見事キャッチした。

「これって⋯⋯食べていいのか」
「どうぞ」
「あ、ありがとう」

 少年は俺からの許可を得ると、子供達と同じように勢いよくオレンジを貪り始めた。
 その様子から、やはりオレンジを食べたいのを我慢していたことがわかる。
 俺は少年や子供達が美味しそうに食べている姿に満足していたが、その行動に否定的な言葉が聞こえてきた。

「ユクトは甘過ぎます」

 リーゼロッテは不満そう表情でこちらに視線を向けていた。

「まあ少し甘いかなとは俺も思うけどね」
「盗みを働いたのですよ? 悪いことをしたら罰を受ける。それが道理です」
「リーゼロッテは少年がオレンジを食べたいのを我慢している姿を見て、何も思わないのか?」
「それとこれとは話が別です」

 リーゼロッテとしては納得出来ない裁定だったようだ。だけど⋯⋯

「罰を与えないとは、俺は言ってないぞ」
「「「「「えっ?」」」」」

 リーゼロッテと少年達は俺の言葉が予想外だったのか、驚いた表情を浮かべる。

「まさかこのまま許されると思っているのか?」
「あんちゃんは俺を助けてくれたんじゃないのか?」
「まさか。オレンジもタダで上げたわけじゃないぞ」
「ど、どういうことだ!」

 少年は先程まで安心しきった表情を浮かべていたが、俺の言葉を聞いて敵意を露わにしてきた。

「助けた恩とオレンジを食べた分は労働で返してもらおうか」

 俺はニヤリと笑みを見せて、少年達の手を取る。そしてリーゼロッテと元々行くつもりだった場所へ、少年達も連れて行くのであった。

「ここは⋯⋯」

 ここは西区画にある広場で、今日はあるイベントがあるため、多くの人がこの場所に訪れていた。
 少年もといザジは大勢の人を見て、少し怖気づいているように見える。
 ここに来るまでに俺達は自己紹介を行い、オレンジを盗んだ少年の名前はザジ、子供達はミーア、ドク、ラグだとわかった。

「今日は炊き出しを行う日で、俺のギルドは手伝うことになっているんだ」
「それってもしかして俺達も食えるのか?」

 ザジは目を輝かせて問いかけてくる。
 思わぬ食料に喜びを隠せないといった所か。
 オレンジを食べたが、まだお腹がいっぱいになっていないのだろう。

「仕事が終わったらな。お前達にはオレンジの対価として炊き出しを手伝ってもらう。リーゼロッテもだ」
「私もですか?」
「そうだ」
「わかりました」

 こちらも目を輝かせている。
 三日間やることがなく、ようやく仕事が出来て嬉しいといった所だな。
 そしてリーゼロッテと子供達が炊き出しを行っているテントへと歩き始める。
 すると周囲の様子が一斉に慌ただしくなってきた。

「なんの騒ぎですか?」

 リーゼロッテがこの状況を疑問に思い、特に騒がしい方へと視線を向けたので、俺も同じ方向を見る。
 するとそこには、多くの護衛に囲まれた美しい少女の姿が目に入るのであった。
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