ある時は狙って追放された元皇族、ある時はFランクのギルドマスター、そしてある時は王都の闇から弱き者を護る異世界転生者

マーラッシュ

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ユクトの策

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 アイスクリームを出店で買った帰り道。
 子供達は皆笑顔を浮かべていた。
 初めは子供達同士で打ち解けていなかったけど、今はそのような様子は微塵も感じさせない。
 これで依頼は達成出来たかな。
 元々今回のボランティアはシアから依頼されたもので、ザジ達が孤児院に馴染めてないのを見かねて俺に頼んできたのだ。
 少し面倒くさかったけど、元々俺が首を突っ込んだ案件だったので、シアの頼みを受けることにした。
 それに依頼を受けることで、嬉しい出来事もあったからな。
 俺はチラリとリーゼロッテへと視線を送る。
 するとミーアとネネに挟まれて、手を繋いで笑顔を見せているリーゼロッテの姿があった。
 かなり懐かれているな。鬼ごっこで一緒に遊んだことと、アイスクリームを買って貰えたことが大きいのだろう。
 どちらかと言うと笑顔を見せないリーゼロッテが楽しそうで何よりだ。
 俺は孤児院への帰路につきながら、今回のボランティアを受けて良かったと心から思うのであった。

 ミーア達を孤児院に送った後。俺とリーゼロッテは帰るためにギルドへ向かっていた。

「どうだった? ボランティアは」

 俺はリーゼロッテが今日の出来事をどう考えているのか気になったため、子供達と別れた後に聞いてみた。

「まあ⋯⋯悪くはありませんでしたね」
「それは何よりだ」

 言葉は素っ気ない感じだな。だけど最後の方はリーゼロッテから笑顔が見れたように感じたけど気のせいだったのか?
 だが笑顔のことを指摘すると否定の言葉が返ってくる気がしたので、そのことは言わないことにした。

「子供達同士も仲良くなってよかったです」
「まあな。人間の心理として、同じ目的を持っていると仲良くなりやすいからな」
「えっ? もしかして鬼ごっこをやり始めたのは⋯⋯」
「リーゼロッテが考えている通りだ。俺という共通の敵を作ることで、仲間意識を高めただけだ。それにアイスクリームっていう分かりやすい賞品もあったしな」
「適当に鬼ごっこをやろうって言った訳じゃなかったんですね」
「まあな。少しは見直したか?」
「少しは⋯⋯ですがアイスクリームのお金はちゃんと返して下さいよ」
「わかったわかった。ギルドに戻ったらすぐに返すから」

 やれやれ。金の恨みは大きいって言うしな。これは早めに返した方が良さそうだ。
 そして暫く歩くと夕陽に照らされたギルドが見えてきた。
 今日は木に登ったり逃げ回ったりしたから疲れた。こんな日は酒を飲むに限るな。
 俺は酒が飲みたくて少し足早に歩いていると、後方から馬車現れ、ギルドの前に止まった。
 そして馬車の中から中年の男性が姿を見せる。

「おお! ユクトの旦那ちょうど良かった。頼まれていた果物を持ってきたぞ」
「トーマスさん、いつも新鮮な果物をありがとうございます」

 馬車から現れたのは商人のトーマスさんだ。酒場で使う果物や野菜などを持って来てくれるので、いつも助かっている。

「ユクトの旦那はうちのお得意様だからな。検品してもらってもいいか?」
「わかりました」

 俺は頼んでいた果物やコーヒー豆に問題がないか確認する。
 果物は色が濃く鮮やかでハリとツヤがあり、新鮮であることが見てわかった。
 うん。今日も美味しそうな果物だ。それにこのコーヒー豆なら⋯⋯これでまた美味しいカクテルが作れるぞ。
 俺はこの時、後で飲む酒のことばかり考えていて、あることを失念していた。

「大丈夫です」
「そうか。なら銀貨六枚⋯⋯と言いたい所だが銀貨五枚にまけてやろう」
「ありがとうございます」

 

「えっ?」

 リーゼロッテが突然驚きの声を上げる。
 その声を聞いて、俺は財布を持っていないという設定を忘れていたことに気づいた。

「毎度あり。またよろしく!」

 こちらの状況のことなど知らず、トーマスさんは笑顔でこの場を去っていく。
 するとリーゼロッテが鬼の形相で話しかけてきた。

「お財布、持ってるじゃないですか」
「あ、え~とこれは⋯⋯」

 やばい。財布を持っていない設定だったが、果物に目を奪われて忘れていた。

「初めからお金を出す気がなかったのですか」
「それは⋯⋯」

 違うと言いたいけど真実を口にするのは少し恥ずかしい。それならもうそういう理由でいいか。

「実はそう⋯⋯」

 俺はリーゼロッテの言葉を肯定しようと口を開きかける。だがその前にリーゼロッテは俺の狙いを言葉にした。

「もしかして⋯⋯私のため⋯⋯私がアイスクリームのお金を出せば子供達と仲良くなれると」
「そんなことはないぞ」
「そういえば鬼ごっこも私が入れるような状況を作っていた気が⋯⋯」
「いやいや、気のせいだろ」
「絶対にそうだ」

 俺が否定しても、リーゼロッテは確信めいた表情をしていた。あれ? おかしいな。俺の信用ってほとんどないはずなのに。

「いつものユクトならむしろ⋯⋯俺の計算通りだって言う気がします。なるほど⋯⋯私、わかってきました」
「と、とりあえずアイスクリームのお金は返すぞ。それじゃ」
「あっ!ちょっとまって下さい」

 何がわかったのか知らないけど、余計なことを問われたくないので、俺は銀貨一枚をリーゼロッテに渡して、急ぎギルドの中へと向かうのであった。
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