ある時は狙って追放された元皇族、ある時はFランクのギルドマスター、そしてある時は王都の闇から弱き者を護る異世界転生者

マーラッシュ

文字の大きさ
33 / 37

別れは誰でも辛いものだ

しおりを挟む
「ここにいるミーアさん、ザジくん、ドクくん、ラグくんに里親が決まりました」
「本当ですか? それは良かったです」

 子供達を引き取りたいと申し出る大人がいたようだ。
 シアは喜んでいるが、それとは対称的にミーアの表情は暗い。
 その理由をローガンの口から語られる。

「一つだけ残念なことは、ミーアさんと三人は別々の方に引き取られるということです」

 なるほど。今まで一緒にいたザジ達と別れることになるのだ。それはミーアの表情が暗くなるのも理解出来るな。
 だけどこの世界では、里親になってくれる大人達の数は少ない。
 このチャンスを逃すと、もう一生里親になってくれる人はいないかもしれない。

「お兄ちゃん⋯⋯私、離れ離れになるの嫌だよぉ」

 ミーアが涙を目に浮かべながら、抱きついて来た。
 その行動に俺とシアは目を合わせ、何て答えればいいのか言葉が詰まってしまった。

「それにせっかくリーゼロッテお姉ちゃんとも仲良くなれたのに⋯⋯」

 ミーアは傍目から見てもリーゼロッテを慕っているように見えた。別れは辛いだろうな。

「今生の別れって訳じゃない。生きていればいつでも会いにいけるさ」
「⋯⋯うん」

 ミーアは納得していないように見える。大人でも親しい者達の別れは受け入れがたい。子供なら尚更だろう。

「何か困ったことがあったらギルドを訪ねてくれればいいし⋯⋯もし俺達に相談し難いことだったら、ギルドの隣にある教会で女神象に話すのもいいんじゃないか?」
「えっ? それってどういうこと?」
「望みを口にすると、願いを叶えてくれるって噂があるんだ」
「へえ~」

 ミーアはあまり信じていなそうな気がした。まあ女神の象に話すだけで願いが叶うなんて、今時の子供は信じないだろう。

「でも私は⋯⋯」
「院長先生、ダーマス商会のエドガー様がお見えになっています」

 ミーアが何かを言いかけた時、背後から若い男性が現れた。
 ダーマス商会? 商会の者が教会に何の用だ。
 この後のローガンの言葉でその理由がわかる。

「ありがとう。すぐに行く。ミーアさんも一緒に来なさい。あなたの里親になってくれる方だ」
「⋯⋯わかったよ」

 ミーアは納得していない表情だが、一応頷いて見せた。
 そしてローガンは俺達に向かって頭を下げる。

「聖女様、ユクト様申し訳ありません。少々こちらでお待ち頂いてもよろしいでしょうか」
「大丈夫ですよ。むしろ時間が掛かった方が⋯⋯いえ、何でもありません」

 もしかしてここの用事が長引けば、それだけ俺といられるとか考えている訳じゃないよな?

「ありがとうございます。すぐに戻りますので」

 ローガンは若い男性とミーアを連れてこの場から離れて行く。
 俺は三人が部屋から出ていくのを見届けた後、側にあったソファーに座る。

「やれやれだぜ」

 長引かないといいけど。早く護衛を終わらせて、仕事の後の一杯を飲みたいものだ。
 俺は何の酒を飲むか考えていると、シアが隣に座ってきた。温もりを感じる距離に心が乱れる。

「近い近い。ちょっと密着し過ぎじゃないか?」
「そうですか?」
「こんな所を誰かに見られたら⋯⋯」

 聖女様に不埒なことをする不届き者め! と言われ、成敗されることは間違いないな。
 それに男として色々我慢出来なくなってくるから離れてほしい。

「そんなことより⋯⋯」

 俺の心の苦悩をそんなことで片付けられた⋯⋯だと⋯⋯

「ユクト様優しいですね」
「何のことだ?」

 ニヤニヤ笑みを浮かべて、さらに身体を密着して来た。何か見透かされているみたいで嫌だなあ。

「ミーアさんが困った時に頼れるように、教会のことも教えて」
「里親が良い人とも限らないだろ。それに深い意味はない。保険をかけただけだ」
「保険⋯⋯ですか⋯⋯前々から思っていましたが、ユクト様って子供には優しいですよね」
「そんなことはないぞ」
「いいえ、そんなことありますぅ。ザジくんが盗みをした時も衛兵さんに突き出さなかったって聞いてますし」
「子供は大人と違って生き方を選ぶことが出来ないからな。やりたくもない人生を進むなんて可哀想じゃないか」
「⋯⋯そうですね」

 シアは俺の問いに対して、返答が遅れる。
 生まれによって選択を決められたことに関しては、シアが一番よくわかっているからな。

「でもその優しさをもう少し私に向けてくれればいいのに」
「優しいだろ?」
「優しいですけどもっと優しくして。昔は今より優しかったのに⋯⋯はっ! もしかしてユクト様って幼い少女が大好きなのでは! だから昔の私に優しかったのね。今の育ちきった私の身体では——」

 この聖女は人をロリコンみたいに言うんじゃないよ!
 しかもブツブツと妄想を口にし、自分の世界に入ってしまった。
 どうしてくれようか。それにもし今ローガンが戻ってきたら、聖女様の変貌振りに驚愕してしまうぞ。
 俺はシアを我に返すため、中指と親指で輪っかを作る。そしてシアのおでこを中指で弾いた。

「いった~い。何をするんですか」
「バカなことをている聖女を正気に戻しただけだ」
「おバカなんてひどいです」
「とにかくローガンが戻ってくるかもしれないから、ちゃんとしろ」
「は~い⋯⋯」

 シアは返事はしたが、納得していない顔でこっちを見ている。

「何か言いたいことでもあるのか?」
「ありますよぉ。え~と⋯⋯次回もまたユクト様が護衛を引き受けてくれたら、私がんばれますよ」
「はいはいわかったわかった」
「本当ですか? 約束ですよ」

 願いを聞いた途端、シアはキリッと真面目な表情を浮かべ、聖女モードに入る。
 この後すぐにローガンが部屋に戻ってきた。そして先程の約束のせいなのかわからないが、シアは孤児院の慰問業務を終わらせ、聖女として完璧に役割を果たすのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...