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プロローグ
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新学期が始まって幾日か経った頃
「おはようリウトちゃん⋯⋯ネクタイ曲がってるよ」
これはいつもと変わらない光景⋯⋯義姉であるコト姉は、学校に行くため玄関から外に出ようとしている俺を呼び止めてきた。そしてコト姉は身体の匂いがわかる距離まで近づき、俺のネクタイを締め直してくれる。
毎回思うが距離近すぎる⋯⋯。
俺はロングのサラサラの髪が目に入り、思わずさわりたくなる衝動が沸き起こるが何とか耐える。
「ふふ⋯⋯お姉ちゃんがいないとダメなんだから⋯⋯リウトちゃんも先輩何だからしっかりしないとね」
コト姉は仕方ないなあという口振りだが、何故か嬉しそうにしていた。
「これって夫婦みたいだね」
事もあろうに夫婦とは⋯⋯だが顔を赤らめたコト姉の表情を見ると、冗談で言っているわけではないことがわかる。
「ハハハ⋯⋯姉弟で何を言ってるんだか」
俺は渇いた笑いでコト姉の言葉を否定する。
つい先日までだったら演技するまでもなく、偽らざる気持ちで笑うことが出来たが、戸籍謄本で自分が養子と知った今では⋯⋯。
「姉弟じゃなかったら絶対お姉ちゃんとリウトちゃんは相性バッチリだよね」
この言葉⋯⋯まさかコト姉は俺と血が繋がっていないことを知っているのかと、どうしても深読みしてしまう。
「そ、そうかもしれないな」
俺は動揺してしまい曖昧な答えを返すのが精一杯だった。
このままコト姉の顔を見ていると心臓の鼓動がおかしくなりそうだ。とりあえず1人で学校に向かい、一度コト姉から距離を置こう。
「あっ! 兄さんちょっと待って⋯⋯」
だが俺の行動を読んでいたのかあるいは無意識なのかわからないが、俺の義妹⋯⋯コト姉の妹の柚葉が俺を呼び止める。
「また食べた感想聞かせて」
少しぶっきらぼうに柚葉ことユズは、ランチクロスに包んだお弁当を俺に手渡してくる。
「あ、ありがとう⋯⋯わざわざ悪いな」
ユズの料理は高校1年生にしては上手だと思うが、本人はコト姉や俺と同じくらいの腕前になりたいと思っているようで、学校がある日は毎日弁当を作ってくれている。
「ふ、ふん! 別に兄さんのためじゃないからね」
俺がユズにお礼を口にするとツンな答えが返ってきた。
血が繋がっていると思っていた頃はありがたく頂いていたが、最近弁当の人参や大根の形がハート型になっている時があり、今は何か裏がありそうで怖いと思っている。
ちなみに一度そのことをユズに指摘したことがあったが「バ、バカじゃない! 死ねばいいのに!」と顔を真っ赤にして言われた。
だが俺は知っている⋯⋯ユズの部屋は俺の隣なんだが、いつも俺に酷い態度を取った時は、自室でデレながら反省していることを。
周囲から見れば俺は可愛い義姉妹に好かれ羨ましい奴だと思われるかもしれないが、つい先日まで普通の家族として生活していたんだ。戸惑うのは当たり前だろ?
そして俺は養子と知った時、親父が口癖のようにいつも言っていた言葉を理解した。
コト姉とユズに手を出したら殺すと⋯⋯。
そもそも親父はコト姉とユズだけ溺愛しているから、もし俺が毒牙にかけた何て知ったら⋯⋯本当に命を奪われ兼ねない。
それなら俺が取るべき道は一つ⋯⋯どんな誘惑があろうと姉妹とはこれからも血の繋がった家族として過ごすだけだ。
「ほら、早く学校に行こ」
「兄さんが悪さしないか見張るために私も一緒に行って上げます」
俺は前を歩く姉妹を見て、この平和な生活を守るため養子であることを隠すと再度決意するのであった。
「おはようリウトちゃん⋯⋯ネクタイ曲がってるよ」
これはいつもと変わらない光景⋯⋯義姉であるコト姉は、学校に行くため玄関から外に出ようとしている俺を呼び止めてきた。そしてコト姉は身体の匂いがわかる距離まで近づき、俺のネクタイを締め直してくれる。
毎回思うが距離近すぎる⋯⋯。
俺はロングのサラサラの髪が目に入り、思わずさわりたくなる衝動が沸き起こるが何とか耐える。
「ふふ⋯⋯お姉ちゃんがいないとダメなんだから⋯⋯リウトちゃんも先輩何だからしっかりしないとね」
コト姉は仕方ないなあという口振りだが、何故か嬉しそうにしていた。
「これって夫婦みたいだね」
事もあろうに夫婦とは⋯⋯だが顔を赤らめたコト姉の表情を見ると、冗談で言っているわけではないことがわかる。
「ハハハ⋯⋯姉弟で何を言ってるんだか」
俺は渇いた笑いでコト姉の言葉を否定する。
つい先日までだったら演技するまでもなく、偽らざる気持ちで笑うことが出来たが、戸籍謄本で自分が養子と知った今では⋯⋯。
「姉弟じゃなかったら絶対お姉ちゃんとリウトちゃんは相性バッチリだよね」
この言葉⋯⋯まさかコト姉は俺と血が繋がっていないことを知っているのかと、どうしても深読みしてしまう。
「そ、そうかもしれないな」
俺は動揺してしまい曖昧な答えを返すのが精一杯だった。
このままコト姉の顔を見ていると心臓の鼓動がおかしくなりそうだ。とりあえず1人で学校に向かい、一度コト姉から距離を置こう。
「あっ! 兄さんちょっと待って⋯⋯」
だが俺の行動を読んでいたのかあるいは無意識なのかわからないが、俺の義妹⋯⋯コト姉の妹の柚葉が俺を呼び止める。
「また食べた感想聞かせて」
少しぶっきらぼうに柚葉ことユズは、ランチクロスに包んだお弁当を俺に手渡してくる。
「あ、ありがとう⋯⋯わざわざ悪いな」
ユズの料理は高校1年生にしては上手だと思うが、本人はコト姉や俺と同じくらいの腕前になりたいと思っているようで、学校がある日は毎日弁当を作ってくれている。
「ふ、ふん! 別に兄さんのためじゃないからね」
俺がユズにお礼を口にするとツンな答えが返ってきた。
血が繋がっていると思っていた頃はありがたく頂いていたが、最近弁当の人参や大根の形がハート型になっている時があり、今は何か裏がありそうで怖いと思っている。
ちなみに一度そのことをユズに指摘したことがあったが「バ、バカじゃない! 死ねばいいのに!」と顔を真っ赤にして言われた。
だが俺は知っている⋯⋯ユズの部屋は俺の隣なんだが、いつも俺に酷い態度を取った時は、自室でデレながら反省していることを。
周囲から見れば俺は可愛い義姉妹に好かれ羨ましい奴だと思われるかもしれないが、つい先日まで普通の家族として生活していたんだ。戸惑うのは当たり前だろ?
そして俺は養子と知った時、親父が口癖のようにいつも言っていた言葉を理解した。
コト姉とユズに手を出したら殺すと⋯⋯。
そもそも親父はコト姉とユズだけ溺愛しているから、もし俺が毒牙にかけた何て知ったら⋯⋯本当に命を奪われ兼ねない。
それなら俺が取るべき道は一つ⋯⋯どんな誘惑があろうと姉妹とはこれからも血の繋がった家族として過ごすだけだ。
「ほら、早く学校に行こ」
「兄さんが悪さしないか見張るために私も一緒に行って上げます」
俺は前を歩く姉妹を見て、この平和な生活を守るため養子であることを隠すと再度決意するのであった。
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