29 / 142
紬ちゃんの願い
しおりを挟む
「粗茶ですがどうぞ」
紬ちゃんが麦茶が入ったコップをテーブルに二つ置いてくれる。
「ありがとう。紬ちゃん難しい言葉を知っているねえ。今いくつなの?」
それは俺も気になっていた。紬ちゃんは見た目に反して礼儀正しいんだよな。
「私? 今6歳で今年7歳になるよ」
「6歳とは思えないくらい礼儀正しいね」
ちひろの言うとおりだ。おそらく親のしつけがいいんだろうな。少なくとも俺が6歳の時は、紬ちゃんみたいに言葉遣いが良いとは言えなかった。
「それで⋯⋯今日はお願いがあって⋯⋯」
そういえば紬ちゃんが俺とちひろに会いたいって言ってたんだっけ。何となく食事のことだと予想がつくが、俺は紬ちゃんの言葉を待つ。
「あの⋯⋯ハンバーグが食べたくて、出来れば一緒に作ってみたいなって」
「どうなのリウト」
またちひろは俺頼みかよ! まあいいけど。
「いいよ。一緒に作ろうか」
「本当! やったー!」
俺は可愛いお願いを聞いて上げると、紬ちゃんは跳び跳ねて、身体全体で嬉しさをアピールする。
「でもハンバーグを食べたいだけじゃなくて、作りたいんだ」
確かにちひろが言うように6歳で料理をするのは早い気がする。だけど紬ちゃんは精神年齢が高そうだから、料理がしたいっていう欲求が生まれてきたのかな?
「それは⋯⋯今は無理でも将来料理が出来るようになれば、お姉ちゃんとママの負担が減らせるかなって⋯⋯」
「「良い子だ~」」
俺とちひろは紬ちゃんの答えに思わず涙が溢れてくる。
「紬⋯⋯」
そしてよく見ると神奈さんの目にも光るものが見えた。
「ツムツム! もううちの子になっちゃいなよ!」
「ふざけるな! 紬ちゃんはうちでもらう」
「リウトはもう柚葉ちゃんっていう妹がいるでしょ!」
「可愛い妹は2人いても良いものだ」
「今柚葉ちゃんのことを可愛いって認めた。やっぱりリウトはシスコンだったのね。ツムツムも気をつけた方がいいよ」
すると神奈さんが俺から紬ちゃんを隠すように抱きしめる。
「天城くん⋯⋯やっぱりあなた⋯⋯」
「やっぱりじゃないから。謂れのないことを言わないでくれ。そ、それよりハンバーグ作りなんだけど」
神奈さんはちひろの言うことを信じているため、俺に不利な状況だ。
味方は誰もいない⋯⋯ここは一度話を他に持っていくべきだと俺は判断した。
「ハンバーグ作りた~い」
紬ちゃんが俺の話に乗ってくれたので、ここぞとばかりに話題を変えていく。
「実はちょうど家に挽き肉と玉ねぎがあって、今日はハンバーグにしようと思っていたんだ。だから今日は天城家で夕食を取らないか?」
「えっ! 天城くんの家で!」
神奈さんは突然の俺の言動に驚きを隠せない。
無理もない。いきなり同級生の男の家でご飯を食べないかって言われたんだ。驚かない方がおかしいだろう。
だがこのインパクトがある話題で、神奈さんの頭の中にあったロリコン疑惑は薄れているはずだ。
「で、でもいきなりお邪魔するなんて迷惑じゃ⋯⋯」(出来れば天城くんの家には行きたくない)
「え~! お姉ちゃん私、リウトお兄さんのお家に行きたいよ~」
紬ちゃんが年相応っぽく神奈さんの腕に抱きついて駄々をこねる。
「母さんには家で同級生に料理を教えることになるかもって言ってあるから問題ないよ」
「お兄さんもこう言ってくれてるし行こうよ」
「本当に迷惑じゃない?」(迷惑と言って)
「むしろ歓迎している感じだったから」
「それなら⋯⋯紬も行きたがってるしお邪魔させて頂きます」(紬だけを行かせる訳には行かないから我慢するしかないわね)
「やった~」
嬉しそうな紬ちゃんとは対照的に、神奈さんは複雑な表情をしているな。本音では家には行きたくないって所か。
こうして今日の料理教室は天城家で行われることになった。
「残念だけど私は今日バイトがあるからやめとくね。それに私は料理をする訳じゃないし」
「別にそんなこと気にしなくていいぞ」
「機会があったらまた今度行くね~」
どうやらちひろはバイトがあるから天城家には来れないようだ。ちなみにちひろがバイトしている所はファミレスで、制服が可愛いことから羽ヶ鷺学園の男子にも女子にも人気がある場所だ。もちろん俺も好きな場所でたまにちひろを冷やかしに行くことがある。
こうして俺達はちひろと別れ自宅へと向かった。だがこの後天城家で壮絶な出来事起きることを、今の俺は知るよしがなかった。
紬ちゃんが麦茶が入ったコップをテーブルに二つ置いてくれる。
「ありがとう。紬ちゃん難しい言葉を知っているねえ。今いくつなの?」
それは俺も気になっていた。紬ちゃんは見た目に反して礼儀正しいんだよな。
「私? 今6歳で今年7歳になるよ」
「6歳とは思えないくらい礼儀正しいね」
ちひろの言うとおりだ。おそらく親のしつけがいいんだろうな。少なくとも俺が6歳の時は、紬ちゃんみたいに言葉遣いが良いとは言えなかった。
「それで⋯⋯今日はお願いがあって⋯⋯」
そういえば紬ちゃんが俺とちひろに会いたいって言ってたんだっけ。何となく食事のことだと予想がつくが、俺は紬ちゃんの言葉を待つ。
「あの⋯⋯ハンバーグが食べたくて、出来れば一緒に作ってみたいなって」
「どうなのリウト」
またちひろは俺頼みかよ! まあいいけど。
「いいよ。一緒に作ろうか」
「本当! やったー!」
俺は可愛いお願いを聞いて上げると、紬ちゃんは跳び跳ねて、身体全体で嬉しさをアピールする。
「でもハンバーグを食べたいだけじゃなくて、作りたいんだ」
確かにちひろが言うように6歳で料理をするのは早い気がする。だけど紬ちゃんは精神年齢が高そうだから、料理がしたいっていう欲求が生まれてきたのかな?
「それは⋯⋯今は無理でも将来料理が出来るようになれば、お姉ちゃんとママの負担が減らせるかなって⋯⋯」
「「良い子だ~」」
俺とちひろは紬ちゃんの答えに思わず涙が溢れてくる。
「紬⋯⋯」
そしてよく見ると神奈さんの目にも光るものが見えた。
「ツムツム! もううちの子になっちゃいなよ!」
「ふざけるな! 紬ちゃんはうちでもらう」
「リウトはもう柚葉ちゃんっていう妹がいるでしょ!」
「可愛い妹は2人いても良いものだ」
「今柚葉ちゃんのことを可愛いって認めた。やっぱりリウトはシスコンだったのね。ツムツムも気をつけた方がいいよ」
すると神奈さんが俺から紬ちゃんを隠すように抱きしめる。
「天城くん⋯⋯やっぱりあなた⋯⋯」
「やっぱりじゃないから。謂れのないことを言わないでくれ。そ、それよりハンバーグ作りなんだけど」
神奈さんはちひろの言うことを信じているため、俺に不利な状況だ。
味方は誰もいない⋯⋯ここは一度話を他に持っていくべきだと俺は判断した。
「ハンバーグ作りた~い」
紬ちゃんが俺の話に乗ってくれたので、ここぞとばかりに話題を変えていく。
「実はちょうど家に挽き肉と玉ねぎがあって、今日はハンバーグにしようと思っていたんだ。だから今日は天城家で夕食を取らないか?」
「えっ! 天城くんの家で!」
神奈さんは突然の俺の言動に驚きを隠せない。
無理もない。いきなり同級生の男の家でご飯を食べないかって言われたんだ。驚かない方がおかしいだろう。
だがこのインパクトがある話題で、神奈さんの頭の中にあったロリコン疑惑は薄れているはずだ。
「で、でもいきなりお邪魔するなんて迷惑じゃ⋯⋯」(出来れば天城くんの家には行きたくない)
「え~! お姉ちゃん私、リウトお兄さんのお家に行きたいよ~」
紬ちゃんが年相応っぽく神奈さんの腕に抱きついて駄々をこねる。
「母さんには家で同級生に料理を教えることになるかもって言ってあるから問題ないよ」
「お兄さんもこう言ってくれてるし行こうよ」
「本当に迷惑じゃない?」(迷惑と言って)
「むしろ歓迎している感じだったから」
「それなら⋯⋯紬も行きたがってるしお邪魔させて頂きます」(紬だけを行かせる訳には行かないから我慢するしかないわね)
「やった~」
嬉しそうな紬ちゃんとは対照的に、神奈さんは複雑な表情をしているな。本音では家には行きたくないって所か。
こうして今日の料理教室は天城家で行われることになった。
「残念だけど私は今日バイトがあるからやめとくね。それに私は料理をする訳じゃないし」
「別にそんなこと気にしなくていいぞ」
「機会があったらまた今度行くね~」
どうやらちひろはバイトがあるから天城家には来れないようだ。ちなみにちひろがバイトしている所はファミレスで、制服が可愛いことから羽ヶ鷺学園の男子にも女子にも人気がある場所だ。もちろん俺も好きな場所でたまにちひろを冷やかしに行くことがある。
こうして俺達はちひろと別れ自宅へと向かった。だがこの後天城家で壮絶な出来事起きることを、今の俺は知るよしがなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
111
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる