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戦いの後

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そしてこの後、教室ではホームルームが行われ、氷室先生の口から今日の特別試験のMVPは神奈さんだと告げられた。
 いくら俺がCクラスのシュートを何本も止めたとはいえ、フル出場して三得点取った神奈さんに敵わないのは妥当だろう。

 そして放課後になり、自宅へと帰ろうと校門を通りかかった時、俯きながら壁に寄りかかっている一人の女の子の姿が目に入った。

「瑠璃⋯⋯こんな所で何をやっているんだ」
「その⋯⋯先輩と一緒に帰りたいなって思って」

 ほう⋯⋯それは良い度胸だ。封鎖サッカーの時、俺を陥れたことは忘れていないぞ。結局試合に勝ったこともあり、クラスメートから奴隷商人のことで何か言われることはなかったが、しかし許されることではない。

「一緒に帰るか」
「はい。ありがとうございます」

 瑠璃は律儀に頭を下げて、俺の隣を歩く。
 な、なんだ? いつもと態度が全然違うぞ! まさかまた何か企んでいるのか!
 俺は雰囲気が違う瑠璃に対して、頭の中の警戒心のセンサーが大きな音で鳴り始めた。
 だが今の瑠璃⋯⋯どこかで見たことがあるような⋯⋯。
 とりあえず俺は、瑠璃が何かを仕掛けてくるのではないかと注意しながら足を進める。
 そして瑠璃と歩き始めて1分、2分と経つが、未だに俺達の間で会話はない。
 どうしたんだ瑠璃は? ここまでいつもと雰囲気の違う瑠璃を見ると、俺は逆に心配になってくると共に、過去にもこのようなことがあったことを思い出した。
 あれは⋯⋯瑠璃と初めて会った時のことだ。
 瑠璃は虐められて引きこもり、会話もなく、常に俯いていた記憶がある。
 まさかとは思うが、エクセプション試験の件を反省しているのか? だが確証はないため、このまま瑠璃と話すこともなく、自宅と瑠璃の家への分かれ道にたどり着いてしまう。

「瑠璃、今日も配信やるんだろ?」

 瑠璃が話しやすいようにするため、俺が声をかけるが返事はない。
 代わりに返ってきた答えは⋯⋯。

「ごめんなさい!」

 突然瑠璃は地面に顔がつくのではないかと思うくらい頭を下げ、謝罪してきた。

「エクセプション試験の時、何で先輩のことを下げるようなことを言ってしまったのか⋯⋯」
「正直、コト姉とユズのことでヘイトされるのは慣れているから、別に気にしてないぞ。次から気をつけてくれれば。だけど奴隷商人か⋯⋯何だか瑠璃っぽい言い方だな」
「はい。すみませんでした」

 う~ん。ここまで殊勝な態度だと返答に困る。昔の瑠璃を否定する気はないが、やっぱり瑠璃には元気な姿が良く似合う。

「あの時は先輩がエクセプション試験で活躍されて、何だか私の先輩じゃなくてみんなの先輩みたいに思っちゃって⋯⋯」

 なるほど⋯⋯瑠璃は引きこもっていた件もあり、友人はあまり多くはないから、俺を取られたと思ってしまったのか? だからあんなことを⋯⋯可愛い奴め。

「大丈夫。瑠璃の気持ちはわかってるから」
「ほ、本当ですか!」

 えっ? 何か食いつきが良くない? めっちゃどもってるし瞳もどこか潤んでいるような⋯⋯。

「ああ、瑠璃と俺は配信を行っているパートナーだから、その繋がりが消えることはないぞ」
「そ、そうですね⋯⋯⋯⋯全然わかっていないです」
「ん? 今何か言ったか?」

 この時瑠璃は小声で何かを言っていたが俺には聞こえなかった。

「そ、それより今日は配信日です! たくさんの人に視てもらえるよう頑張りましょう」

 こうして俺達は定期の配信を行うため、瑠璃の自宅へと向かうのであった。
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