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妹のためならどんなことでもやるつもりだ
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「そうだ! 2ーDの人はいるか?」
俺は周囲の人垣から2ーDのクラスの子がいないか探す。
Dクラスはメイド喫茶だから1ーAと材料が被っている物があるかもしれない。午後に材料が来たら返すので何とか少し分けてもらえないだろうか。
「な、何でしょうか?」
2ーDの春日 汐里がおずおずと手を上げる。
「もし良かったらケーキの材料を1ーAクラスに貸すことできないだろうか?」
「「お願いします」」
ユズと瑠璃も俺の意図に気づいたのか、一緒になって春日さんに頭を下げる。
「ご、ごめんなさい」
淡い希望を抱いて頭を下げたが、残念ながら春日さんの答えはNOだった。
「そっか⋯⋯そうだよな。自分達だっていつ材料がなくなるかわからないもんな。悪い、無理言った」
「ち、違います。私も出来れば助けて上げたいけどDクラスで使うクッキーやケーキは既製品で発注したから、材料自体がないの」
「確かにそれは無理だな。わかった、ありがとう」
残念だがDクラスから材料を借りることが出来なかったことで、いよいよ1ーAがケーキを作るのが不可能になった。
「こうなったら10時にスーパーとかのお店が開くからそこで買うしかないよ」
「そ、そうですね」
瑠璃の言うとおり、通常の方法ならその手しかないかもしれないが、1ーAはケーキの作り手も足りない。材料があっても上手に作れるか、客が望む数が作れるか疑問だ。
ユズが俺に理由を話さなかったのは、話せば無理して俺が何かをすると思ったからだろう。だが家族にそのような気遣いは不要だ。俺はユズやコト姉が困っているならどんな手を使っても手助けしたいと思っているのだから。
「ユズ⋯⋯俺には10時からケーキ店をオープンさせる方法がある。ユズはどうしたい?」
周囲は俺の言葉を聞くと驚きの表情を浮かべる。
「材料がないのにどうやって」
「コンビニでも使うのか? だけど高くつくし、全部の材料を集めるのは無理だろ」
「それよりケーキを作る人がいないと始まらなくない?」
辺りは不可能という意見に埋められていく。だが俺が聞きたいのはユズの言葉だ。
「ユズユズ、先輩にお願いしようよ。先輩だったらきっと何とかしてくれるよ」
「わかっています⋯⋯兄さんだったら何とかしてくれるって。でもそのために兄さんが何か代償を払うんですよね?」
「まあ⋯⋯俺とクラスメート達が少々⋯⋯な」
「それがわかっていて簡単にお願いはできないです」
ユズも頑固だな。「ここは兄さんお願いします。助けて下さい」っていう所だろうが。それに⋯⋯。
「今日は新入生歓迎会だろ? 先輩が後輩を助けないでどうする」
「そ、それは⋯⋯」
そう。今日は新入生歓迎会だ。後輩が先輩に迷惑をかけても良い日でもある。
「それにユズは俺の大切な妹だから助けたいと思うのは当然だ。それと瑠璃も」
「ちょ、ちょっと! 良いお話しだったのにそこで私をついでみたいに落ちで使うのやめて下さい!」
「すまん、つい」
「ふふ⋯⋯」
だがわざと瑠璃を落ちに使ったかいがあった。泣き顔だったユズから笑顔が見られる。
そしてユズは片手で涙を拭い、真っ直ぐとこちらを見据えてきた。
「兄さん⋯⋯私を⋯⋯瑠璃さんを⋯⋯1ーAを助けて下さい」
ユズは今まで見たことがない程真剣な表情で、絞り出すように言葉を発する。
「わかった。兄さんに任せろ」
そして俺はユズの兄として妹の願いを叶えるため、制服の内ポケットに手を入れるのであった。
俺は周囲の人垣から2ーDのクラスの子がいないか探す。
Dクラスはメイド喫茶だから1ーAと材料が被っている物があるかもしれない。午後に材料が来たら返すので何とか少し分けてもらえないだろうか。
「な、何でしょうか?」
2ーDの春日 汐里がおずおずと手を上げる。
「もし良かったらケーキの材料を1ーAクラスに貸すことできないだろうか?」
「「お願いします」」
ユズと瑠璃も俺の意図に気づいたのか、一緒になって春日さんに頭を下げる。
「ご、ごめんなさい」
淡い希望を抱いて頭を下げたが、残念ながら春日さんの答えはNOだった。
「そっか⋯⋯そうだよな。自分達だっていつ材料がなくなるかわからないもんな。悪い、無理言った」
「ち、違います。私も出来れば助けて上げたいけどDクラスで使うクッキーやケーキは既製品で発注したから、材料自体がないの」
「確かにそれは無理だな。わかった、ありがとう」
残念だがDクラスから材料を借りることが出来なかったことで、いよいよ1ーAがケーキを作るのが不可能になった。
「こうなったら10時にスーパーとかのお店が開くからそこで買うしかないよ」
「そ、そうですね」
瑠璃の言うとおり、通常の方法ならその手しかないかもしれないが、1ーAはケーキの作り手も足りない。材料があっても上手に作れるか、客が望む数が作れるか疑問だ。
ユズが俺に理由を話さなかったのは、話せば無理して俺が何かをすると思ったからだろう。だが家族にそのような気遣いは不要だ。俺はユズやコト姉が困っているならどんな手を使っても手助けしたいと思っているのだから。
「ユズ⋯⋯俺には10時からケーキ店をオープンさせる方法がある。ユズはどうしたい?」
周囲は俺の言葉を聞くと驚きの表情を浮かべる。
「材料がないのにどうやって」
「コンビニでも使うのか? だけど高くつくし、全部の材料を集めるのは無理だろ」
「それよりケーキを作る人がいないと始まらなくない?」
辺りは不可能という意見に埋められていく。だが俺が聞きたいのはユズの言葉だ。
「ユズユズ、先輩にお願いしようよ。先輩だったらきっと何とかしてくれるよ」
「わかっています⋯⋯兄さんだったら何とかしてくれるって。でもそのために兄さんが何か代償を払うんですよね?」
「まあ⋯⋯俺とクラスメート達が少々⋯⋯な」
「それがわかっていて簡単にお願いはできないです」
ユズも頑固だな。「ここは兄さんお願いします。助けて下さい」っていう所だろうが。それに⋯⋯。
「今日は新入生歓迎会だろ? 先輩が後輩を助けないでどうする」
「そ、それは⋯⋯」
そう。今日は新入生歓迎会だ。後輩が先輩に迷惑をかけても良い日でもある。
「それにユズは俺の大切な妹だから助けたいと思うのは当然だ。それと瑠璃も」
「ちょ、ちょっと! 良いお話しだったのにそこで私をついでみたいに落ちで使うのやめて下さい!」
「すまん、つい」
「ふふ⋯⋯」
だがわざと瑠璃を落ちに使ったかいがあった。泣き顔だったユズから笑顔が見られる。
そしてユズは片手で涙を拭い、真っ直ぐとこちらを見据えてきた。
「兄さん⋯⋯私を⋯⋯瑠璃さんを⋯⋯1ーAを助けて下さい」
ユズは今まで見たことがない程真剣な表情で、絞り出すように言葉を発する。
「わかった。兄さんに任せろ」
そして俺はユズの兄として妹の願いを叶えるため、制服の内ポケットに手を入れるのであった。
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