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絢爛華麗

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 サーシャのロッドから、いくつもの氷の矢が放たれる。
 十、二十⋯⋯約三十本の矢がリザードマンへと向かっていった。
 以前炎矢魔法フレアアローを使っていた時は十数本だったから、あれから成長したのか、それとも氷の原理を理解することで威力が上がったのか、はたまたトラウマを克服したのかわからないが、成長していることは確かだ。

「グギャアァァッ!」

 サーシャの攻撃を食らった五匹のリザードマンは、悲鳴をあげる。
 しかし残りのリザードマンは氷の矢をかわすか、右手に持った盾で防い⋯⋯いや、盾が凍りついてさらに右腕を侵食している。

「ギャアッ!!」

 リザードマンは予想外の出来事に混乱していた。

「もう一度! 氷矢魔法フリーズアロー

 そしてサーシャからさらに追撃の一撃が放たれる。
 狙いは右腕が凍りついた四匹のリザードマンだ。
 混乱しているリザードマンは、なす術もなく氷の矢を胸部に食らい、その場に崩れ落ちていく。
 残りは十一匹。
 だがリザードマンは三回目の魔法発動は許さない。
 仲間が殺られている間に、サーシャの元へとたどり着き、周囲を包囲していた。

「お兄ちゃん! サーシャお姉ちゃんが!」
「わかってる」

 だけどサーシャは何も言っていない。
 譲れない何かがあったとしても、サーシャは冷静な判断が出来る子だ。
 もし本当に窮地だった場合、必ず助けを求めてくるはず。
 しかし心配は心配なので、すぐに魔法が使えるように魔力を集めておく。

「グギャアァァッグギャアッ!」

 リザードマン達はサーシャを取り囲んで勝った気でいるのか、笑みを浮かべているように見えた。
 だけどそれは大きな間違いであったことにすぐに気づく。

「これで終わりです。クラス5・輝細氷魔法ダイヤモンドダスト

 サーシャが魔法を唱えると空気中の水蒸気が細氷となり、辺り一面を氷の世界へと変えた。
 光輝く氷のつぶてがリザードマンに襲いかかる。
 するとリザードマンは徐々に動きが鈍くなり、やがて氷の像へと変貌するのであった。

「サーシャお姉ちゃんすごいすご~い!」

 ノノちゃんがはしゃいだ様子でサーシャに抱きつく。

「ふふ⋯⋯ありがとうございます⋯⋯⋯⋯⋯⋯ですが、まだまだです」

 サーシャがお礼を述べた後、小声で言った言葉が聞こえてしまった。
 どうやら今の結果でもサーシャは満足していないらしい。
 だけどサーシャの戦い方は見事だった。
 弱いクラスの魔法で数を減らし、接近してきた所を強い魔法で仕留める。
 おそらく囲まれることも想定していたのだろう。

「そんなことはないよ。あっという間リザードマンを倒したじゃないか」

 俺はサーシャに自信を持ってもらうために、あえて小声に対して返答をする。

「そ、そんなことありません。エミリアならそれこそ一瞬で終わらせると思いますから」
「サーシャの魔法だってすごいよ。まとめて十一匹も倒したんだから」
「ありがとうございます」

 笑顔に少し陰りがある。
 サーシャが心から喜んでいる訳じゃないということが、俺にもわかった。
 確かにエミリアならリザードマンに突撃して、瞬く間に倒してしまいそうだ。
 それとやはりサーシャは、エミリアのことをすごく意識しているようだ。
 剣士と魔法使い、そもそも役割もジャンルも違うので、そこまで気にする必要はないと思うけど。
 サーシャのエミリアに対する劣等感は、そう簡単にはなくならそうだ。

「それではダンジョンへと向かいましょう」

 そして俺達は平原を越えて森に入ると、一つの洞窟を見つけることに成功した。

「これがダンジョンなんだあ。ノノ初めて見た」

 俺とサーシャは勇者パーティーにいた頃、何度か経験をしている。
 ダンジョンで一番注意しなくてはならないのが、暗闇への対処だ。
 暗いと何も見えないし、逆に明るくしているとこちらの姿が丸見えになるため、奇襲攻撃を受ける可能性がある⋯⋯と以前は考えていた。

「ここからは俺が先頭で、ノノちゃんが真ん中、サーシャは一番後ろでいいかな? もちろん魔物が現れたらサーシャに任せる」
「うん。わかった」
「承知しました」

 ノノちゃんは初めてのダンジョンだ。一番安全な場所にいてもらうのがいいだろう。

 そして俺は異空間から出したたいまつに火を点け、ダンジョンへと足を踏み入れるのであった。
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