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本編

第16話:こども冒険者たち

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「子ども冒険者たちはこれで全員か?」
「はい」

 ギルドの一室で、ユリウスたちとドレードとサリトで話し合っていた日の翌日。彼らは各々で、早速動き始めていた。近衛の副騎士団長、アルトは今日の午後到着予定である。

 ユリウスたちは街と森との間に広がる更地に、子ども冒険者たちを集めていた。その数はおよそ二十人。決して多くは無い彼らは、揃ってやせ細った体を持っており、お世辞にも立派だとは言えない必要最低限で使い古された防具を身につけていた。それらが彼らの冒険者をしている理由と、生活環境を物語っていた。

 ユリウスはスウっと息を吸い込み、吐き出す。

 そして、

「悪いな、急に集まって貰って」

 少し首を傾げながら話し出した。

「俺はCランク冒険者のユーリだ。で、こっちが同じくCランクのネルとエルハルド」
「僕たちのこと知ってる?」

 ネルは人の良さそうな笑みを浮かべ、子どもたちと目線を合わせた。

「……知ってる。家族で冒険者してるんだろ」一人の少年が言う。

「ああ、そうだ」
「何で俺たち集められたんだ? ちょっとでも依頼こなして金を稼ぎたいんだけど」

 石の上に座っていた少年は、口を尖らせながらそう言った。

「今スタンピードが起こりかけているのは知っているだろう? 高ランクの魔物が森の入り口付近にも出るようになってしまった。暫くの間、森に低ランク冒険者は立ち入り禁止だ」
「「なっ!?」」

 子ども冒険者たちは当然、驚きと反論の声を上げる。

「そんな事、急に言われてもどうするって言うんだ!」
「こんな時なら雑用依頼だってやってやるけど、そんなに数ないんだぞ! この人数が安定した稼ぎを得ることは出来ない!」

 正論ではあった。むしろ、自分一人ではなく子ども冒険者たちみんなの事を考えた上で、彼らは意見を言ってきている。しかし、こちらへとジリジリと近づいてくる彼らを、エルハルドは落ち着けと手で制した。話はまだ途中である。

「そこでだ。お前たち子ども冒険者たちにも、大規模討伐に参加して貰うことになった」
「「!!」」

 子どもたちは目を思い切り見開いた。

「俺たちも魔物の討伐に参加出来るのか⁉︎」
「良いのか⁉︎」
「危ないから駄目って言われてたのに!」

 彼らもやはり、魔物を討伐することへの憧れがあったようだ。皆、目に見えて笑顔になった。

「……でも」皆が喜ぶ中で控えめに声を上げたのは、子ども冒険者たちの中で唯一の少女。

「私たち、魔物と戦ったこと無いんです。ギルドのお兄さんやおじさんたちがダメって言うから。役に立たないし、みんな怪我しちゃうかも」

 そう言い、申し訳なさそうな顔でユリウスの事を見上げてきた。

「だからごめんなさい。お兄さんやギルド長が、私たちのために考えてくれた事は分かるんですけど、参加は出来ないと思います」

 そうハッキリと言い切った。それを聞いて、他の子どもたちも何かに気づいたような顔をする。

 ペコリと頭を下げる自分の腰程しかない少女を見て、ユリウスは彼女の目の前で膝をついた。

 本来は膝をつくことなど滅多にあっては困る立場のユリウスだが、実は彼にはお忍びの設定ではなく、本当の弟王子がいる。その為、子どもに対して膝をつくのには、全く抵抗が無かった。

「悪い、説明が足りなかったな」

 ユリウスは申し訳なさそうにしながら、少女の頭を撫でた。少女は綺麗な顔立ちのユリウスに至近距離で微笑まれ、「王子様みたい……」と可愛らしく頬を染める。

「君は聡明なんだな。……そう、確かにお前たちでは魔物と直接やり合うのは無理だ。スタンピードによる大規模討伐がほとんど初めての魔物討伐になるなど、絶対に有り得ない。難易度が高すぎる」ユリウスは立ち上がりながら言う。

「子ども冒険者のお前たちに頼みたいのは後ろからの援護だ。冒険者と騎士が戦う後ろの、安全な高い位置から

 ユリウスはニヤッと笑った。





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