覇道の神殺しーアルカディアー

東 将國

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第2章 神々の運命

第40話 ショータイム

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 敵の包囲を突破した神斗たちはこの世界の第一層へ繋がるビフレストを渡っていた。
 距離はそれなりにあったが、三人は凄まじい速度で駆け抜けていた。

「この虹の橋どんだけ長ぇんだよ!時々敵が襲ってくるし!」
「まぁ第二層から直通だからな。敵はおそらく俺たちがこれほど速くビフレストを渡るとは予想してなかったのだろう」
「普通ならもっと時間が掛かるところでしたが、光輝の力のおかげで敵が集まる前に突破できそうです」

 三人がこれほど速くビフレストを渡れている理由は天の七支柱ヘプタゴンの一人、光輝の力によるものだった。
 北欧神話側は神斗たちがビフレストを渡っているうちに準備を整えて迎え撃とうとしていたが、神斗たちが予想を遥かに超える速度で向かってきていたため準備を整える前に突破されそうになっていた。

「……ッ!神斗様、前方に敵の集団が」
「ああ、あれを突破すればビフレストを渡り切れる。光輝!」
「あいよッ!」

 神斗の指示を受けた光輝はより速度を上げて敵の集団に突っ込んでいった。
 その拳には眩しくて目を細めてしまうほどの光が集まっており、敵は光輝の振るう拳打に次々と吹き飛ばされていく。

「どけどけどけーーッ!!イデトレア王下親衛隊、天の七支柱ヘプタゴンが一人ッ!“閃光”の光輝様のお通りだぁ!!」

 一瞬の閃光とともに光輝の周辺に大きな爆発が発生した。
 神斗と竜斗がその場に着いた頃には戦闘が終わっており、爆発のあった場所には光輝だけが立っていた。

「流石だ光輝。“閃光”の名は伊達じゃないな」
「へっへっへっ、俺様にかかりゃこんな雑魚一瞬……いや、一閃だぜッ!」
「光輝、今のは自分の為にではなく神斗様がお通りする道を作るのが目的だろう?」
「んな細かいこと気にすんなよ竜斗」
「いや、細かいことなどではない。僕たちはあくまで神斗様の護衛としてここにいるのだ。敵と戦うという考えではなく神斗様をお守りするという考えをだな……」

 活発的な光輝と違い、竜斗は慎重な性格だった。
 そのため、竜斗は光輝の突発的な行動を注意することがよくあった。
 そして竜斗には一度注意すると小言まで言ってしまう癖があり、それを止めるのが天の七支柱ヘプタゴンの一人である紅葉の役割だった。

「まぁまぁ竜斗、その話はまた今度にしてくれ。ここはもう北欧神話の第一層、神の領域だ」
「し、失礼しました神斗様。ついいつもの癖で」

 神斗たちの辿り着いた第一層は第二層よりも暖かく、輝かしい陽光に包まれた世界だった。
 しかし、第二層と同様どこか重たい雰囲気もあり時折吹く風も冷たかった。

「北欧神話には二つの神族がおり、そのうちのアース神族が“アースガルズ”に、ヴァン神族が“ヴァナヘイム”に住んでいる。他に妖精の国“アールブヘイム”もこの第一層に存在する」
「この世界の中枢ともいうべき階層ですね」

 第二層には人間や巨人、黒妖精の住む階層だったが、第一層は神と妖精が住む階層でまさに神の領域だった。
 そのため、この北欧神話の世界を動かす重要な機関もこの階層に存在することになる。

「んで、これから俺たちはどうするんです?師匠」
「ああ、それなんだが……ッ!?」

 神斗が二人に今後の方針を離そうとしたその時、突然二つの影が神斗たちの前に飛来してきた。
 光輝と竜斗は咄嗟に神斗の前に出て臨戦態勢を取った。
 二つの影が地面に降り立ったことで発生した土煙が晴れるとそこには、人より少し小さい狼が二頭姿を現した。

「って、また狼かよ!……つーかこいつ、“陽狼”スコルじゃねえか!」
「そして隣にいるもう一匹の狼は、“月狼”ハティですね」
 
 イデトレアを攻撃した“神喰らい”フェンリル、先ほど現れ今海乃と戦っているであろう“幻狼”マーナガルムに次いで第三、第四の狼だった。
 北欧神話には様々な魔獣がいるが、その中でも屈指の強さを持つ魔獣こそ狼だと言われている。
 そのため魔獣を率いたり重要な場所を守る番犬のような役割をすることが多い魔獣なのだ。

「ちっ!こいつらがいるってことは……」

 神斗は嫌な予感がしたのか頭上を見上げた。
 するとそこには宙に浮かぶ人の姿があった。その身にはピエロのような派手な服を纏っており、空中を歩くようにして地面に降り立った。

『ヒッヒッヒッ!初めましてやな“天帝”。俺様は狡知の神、ロキ!よろしゅうな簒奪者ども』
「ロキッ!まさかこんなところで会えるとはな。もっと奥で引き篭もっていると思っていたぞ。それこそ“グラズヘイム”あたりにな」
『まぁそれでもよかったんやがな、お前らの姿拝んどこう思てな。どんだけ貧相な面しとるか気にのうて気にのうて出てきてもうたわ!』
「ふん、その程度の理由でこの俺の前に現れたのか?随分と暇なんだな道化の神は」

 神斗とロキは相手を貶すことで牽制し合っていた。
 目の前の敵が勢力を代表するほどの実力を持っていることはお互いわかっていたため、どんな行動を取ってきても対応できるように態勢を整えていたのだ。

『ま、俺様の目的はそれだけやないけどな。ヒッヒッヒッ!!」
「……ほう?」

 不気味な笑みを浮かべたロキは両手を広げ、その体から不気味なオーラを発生させた。
 しかしそれは攻撃的なものではなかったため、神斗はすぐに攻撃せずロキの様子を伺っていた。

『ヒッヒッヒッ、ヒーッヒッヒッヒッ!!!さぁ、ショータイムやぁッ!!』

 ロキは両手に白く輝く魔法陣を展開した。
 すると発生していた不気味なオーラが緑色に変色していき、二つの柱を形成していく。

「これはッ!転移魔法……いや、召喚魔法かッ!!」

 緑色をした二つの柱が完成すると、少しずつ柱の間の空間が歪んでいく。
 空間の歪みは大きくなるにつれて緑色の渦と化していた。

「まさか、こんな形で姿を表すとはな……」

 その時だった。
 周囲の空気が急激に重たくなり、ユグドラシルの枝葉の隙間から見える空に雷鳴が轟いた。
 空の雷が激しくなっていくと、二つの柱の間にできた緑色の渦からも雷が迸り始めた。

『ご登場願おう。我らが北欧神話において最強の神!全てを粉砕する雷槌を持って今、貧弱なハエどもを潰そうと満を持して参戦を決めた我らが王の代理人。その名はッ!』

 緑色の渦の中から一人の大男が姿を現した。

『“雷神”トールやぁぁぁああッ!!!』

姿を現した大男は 燃え盛る炎のような赤髪と瞳をしており、腰には帯を付け鉄製の籠手をはめている。その籠手を付けた手には雷を迸らせる柄の短い槌が握られていた。
 そして何より、その大男からは周囲の空気が重たく感じられるほどの強大な力が放たれていた。
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