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第2章 神々の運命
第44話 降雷
しおりを挟むロキは優香の目の前に降り立つと、不気味な笑みを浮かべた顔を優香に近づける。
優香はなんとかこの場を離れようとするも、疲れ果てている体では身じろぎすらできなかった。
『何しとんのやろって思っとったが、まさか転移魔法を無力化させるとはなぁ。それも俺様の転移魔法を解析し、自らの魔法を適正な形に組み替えた。簒奪者の癖になかなか面白いこと考えるやん』
ロキは自らの魔法を無力化した優香に興味があるのか優香をじっくりと観察していた。
『力に目覚めたばかりの嬢ちゃんにそんなことできるとはなぁ。転移魔法が一つ潰されたんは痛いが、まぁええわ。むしろ今の状況の方が都合がええしな』
正面の転移魔法が無くなったことにより魔獣たちの出現が激減し、残る左右の転移魔法への対応が本格的に行えるようになった。
しかし、この状況はロキにとって目的を達成する上で最高の状況と言えた。
なぜなら、今この場には優香以外の神殺しが一人もいないのだ。
「悪神ロキ……貴方は北欧神話の世界で神斗たちと戦っていたはずッ、どうしてここに!?」
『んー?俺様がここにいる理由やて?そんなもん……わかりきったことやろ?ヒッヒッヒッ!!』
「ま、まさかッ……神斗たちが!?」
『そうや、もう死んどるよ……っていうのは冗談やぁ!ヒッヒッヒッ!!びっくりしたかぁ?焦ったかぁ?ヒッヒッヒッヒッヒッ!!!』
ロキがこの場にいることで優香は神斗のことが心配になる。
これに対しロキは悪戯好きの神らしく虚言を吐いた。
自分の戯言に振り回される優香の反応が相当面白かったのか、ロキは優香のことを馬鹿にするように嘲笑った。
『今頃うちのもんと戦っている頃だろうよ。まぁ、死ぬことには変わりないわ。何せ相手は我らが北欧神話最強の神、雷神トールなんやからな!!』
「雷神……トール!?」
『いくらあの天帝が強かろうと、トール君に勝てることは絶対にあらへん。だからこそ、俺様がこっちに来たんや。嬢ちゃんに用があってなぁ?ヒッヒッヒッヒッヒッ!!!』
ロキは大きく跳躍すると、まるでそこに床があるかのように空中を走っていく。
そんなロキの履いていた靴は眩い光を放っており、その靴の力によって空中を走っているようだった。
ロキは優香の下から数十メートルあたりの空中で立ち止まり、その身に異質な力を漂わせる。
『返してもらうで?我らが王を!!そして果たすんや……神々の運命をッ!!!ヒーッヒッヒッヒッヒッヒッ!!!!』
ロキは片手を頭上に掲げた。
するとロキから強大な力が溢れ出し、掲げた手に集まっていく。やがて集まった力は再び分離していき、無数の剣の形を成していった。
その一本一本に強力な力が込められている黒い剣の切っ先は、すべて優香の方を向いていた。
『さぁ我らの王の力を簒奪せし神殺し、岡本優香よ。我らの大願を成就させるための贄となってもらうで!!』
ロキは掲げていた手を振り下ろした。
それに呼応して黒い剣も高速で優香めがけて飛来してくる。
(くっ……魔法が、発動できないっ……このままじゃ……どうしたら……)
優香はなんとか身を守るため防御魔法を展開しようとするもうまく魔法を発動させることができないでいた。このままではロキの攻撃をまともに受けることになる。
『神々の運命の始まりやぁぁぁぁあッッ!!!ヒーッヒッヒッヒッ!!ヒーッヒッヒッヒッヒッ!!!』
そして、ロキの生み出した黒い剣が優香に直撃するかと思ったその時、空から極大の雷が降り注ぎ黒い剣をすべて消し飛ばしてしまった。
雷の轟音が鳴り止み、眩い光が消えたそこには、一人の男が立っていた。
男は優香の方へ振り返ると優香の頭に手を置き、笑みを見せた。
「よくやったな優香よ」
「……へ?ど、どうして?」
「空美も感心しておったぞ?此度の戦い、最大の功労者はお主だ。だからもう休むといい。あとのことは、この老いぼれに任せておきなさい」
『一体何が起きたんやッ!?まさか……き、貴様はッ!?』
優香の前に現れた男は和風の服を身に纏い、その上から胴や籠手、脛当てといった軽装な鎧を着ていた。
さらにその腰には内反りの日本刀を携え、背には身の丈ほどの大剣を背負っていた。
「イデトレア元老院総監、マーゼラ・インベスター。ロキという名の非道で下劣な悪神を打ち滅ぼしに来た神殺しである」
マーゼラは日頃のローブ姿と打って変わり戦闘用の格好をしていたため、いつも以上に強い覇気を纏っている。
そんなマーゼラの発する覇気は、神であるロキですらたじろぐ程だった。
『いよいよ出てきよったか……イデトレア最強の神殺し。またの名を……“戦兵”』
“戦兵”
それこそ数多の神々から恐れられるマーゼラの二つ名だった。
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