覇道の神殺しーアルカディアー

東 将國

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第2章 神々の運命

第45話 抑止力

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「儂はもう最強などではないさ。多くの若い者たちが育ってきておるからな。ま、純粋な戦闘力ではまだまだ若いもんには負けんがなぁ?ガッハッハッハッハ!!!」
『よう言うわ。神話最強クラスの神ですらお前さんだけは危険視しとる。存在自体が抑止力となり、一度動けば戦局がひっくり返ると言われるぐらいや。この俺様も、“戦兵”とだけは殺り合いたくなかったんやがなぁ』

 マーゼラはそのあまりにも高い戦闘力故に恐れられていた。それこそ神界で名を馳せるような神からも。
 それはロキも例外ではなかった。魔術の天才であり、他の神を恐れず利用するようなロキですらマーゼラとだけは戦いたくないと思っていた。

『んー、でもおかしいなぁ?貴様程の強大な力を持つ奴が近づいてきたらすぐわかるんやが、どうやってここまで来たんや?』
「ふ、簡単なことじゃないか。貴様のよく使う手段だよ」
『……転移魔法か。しかし一体誰や?この俺様でも感知できんほどの速度で転移させるなんて、まさか“戦兵”お前やあらへんやろな?』

 マーゼラは突如、上空から雷とともに現れた。
 力を使って高速で近づいたとしてもその気配に気がつくことができる。転移魔法だとしてもその道に詳しいロキならばすぐさま感知できるはずだった。
 しかし、マーゼラはロキに気がつかれることなく姿を現した。

「いいや、儂じゃないさ。うちにはお前のような優秀な魔術師がいるもんでな?ほれ、そこに」

 マーゼラは誰もいるはずのない方向を指差した。
 しかしそこには、美しい女性が立っていた。誰にも気づかれることなく、まるで最初からそこにいたかのように。
 これには流石のロキも驚いてしまった。出現を察知するどころか、いつからそこにいたのかも分からなかった。

「こりゃどうも、田舎の道化師さん。イデトレア元老院議員のキーキ・インベスターだ。よろしくねぇ」
「え!?キーキさんまで!?」
『キーキ……ヒッヒッヒッ、なるほど貴様だったか。それなら納得や。イデトレアの大魔術師、“至高の魔女”さんまで現れるとはなぁ』
「私ならあんたの目をかいくぐって転移魔法を使えるからね」

 マーゼラが突然ロキの前に姿を表せた理由は、キーキの転移魔法によるものだった。
 キーキは魔術の天才であるロキですら感知できないほどの魔法技術を持っていた。そのことからキーキは、“至高の魔女”という二つ名で呼ばれている。

『ヒッヒッヒッ、こいつはかなり分が悪いな。とんでもない戦闘力を持つ男に、俺様並みの魔法を使う女か。できれば離脱したいとこやけど、お前さんらから逃げるのは骨が折れそうや』
「安心しろロキよ。貴様の相手は儂一人だ。キーキには優香の護衛に専念してもらうからな」
『ほっほう……そいつはありがたい話やけど、ええんか?俺様の相手に集中せんくて』
「ああ、貴様なら儂との戦いの最中に優香の事を狙いそうだからな。キーキに護衛を任せておけば安心だ。それに……」

 ロキの目的はあくまで優香の持つ“魔導王”の力だ。たとえ相手がマーゼラとキーキだったとしても隙をついて優香を狙うだろう。
 そう考えたマーゼラは単身ロキの相手をし、優香の身を守ることはキーキに任せようと思ったのだ。そうすることでロキの思惑を阻止し、反対に自分たちの目的を達成することができるから。
 マーゼラは腰に携えた内反りの刀を抜き、闘気を漲らせる。

「これで気兼ねなく、貴様を屠ることに専念できる」
『ぐっ!こいつ……』

 その一言とともに放たれた覇気は凄まじく、気を抜いていなかったロキですら怯むほどだった。
 ロキはなんとか目的を果たす方法はないかと思考を巡らすも、圧倒的な力を持つ二人の神殺しを前に何も考えが浮かばなかった。
 故にロキの取れる行動は限られていた。真正面からマーゼラたちの相手をするか、この場を離脱し次の機会を伺うかだ。しかし、

「ああ、逃げようとしても無駄だぞ。キーキは貴様の転移魔法に対する策を持っている。このイデトレアから転移することは絶対に不可能だ」
『……みたいやのう。どうせそこの嬢ちゃんがやったのと同じように転移魔法を無力化させるんやろ?それも高速で。なるほど、嬢ちゃんに魔法を教えとんのはお前さんか?“至高の魔女”』
「ああ、そうだよ。神斗君に頼まれてね。この娘に魔法の手ほどきをしてんのさ」

 キーキはただ優香を守るためにこの場にいるわけではなかった。
 ロキは狡猾な神であるため、真正面の戦闘は避けようとする。ましてや相手がイデトレア最強と言われるほどの神殺しであればなおさらだ。転移魔法を使ってこの場を離脱することを選ぶだろう。
 しかし、キーキほどの実力であれば優香と同じように転移魔法の無力化をすることができる。それもロキが転移魔法を発動した瞬間に。
 つまりキーキは、ロキの転移魔法への抑止力としてこの場に残っているのだ。

「さて、話はここまでだ。そろそろ始めようか、悪神ロキ」

 マーゼラは一層闘気を漲らせた。するとマーゼラの体から稲妻が発生し、地面にはヒビが入り砕けてしまう。

『ヒッヒッヒッ……せやな、“戦兵”。せっかくや、楽しもうか!?ヒッヒッヒッヒッヒッ!!!』

 ロキもまた今まで以上に魔力を漲らせ、紫色の邪悪なオーラを漂わせた。
 まさに一触即発な状況にもかかわらず、両者ともに楽しげな表情をしていた。

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